名古屋芸術大学

NUA-OG

伊藤里佳(いとう りか)

版画家

愛知県在住

1981年
神奈川県うまれ北海道、愛知県育ち
2006年
Falmouth University 交換留学
2007年
名古屋芸術大学大学院 修了
2008年〜
アートクリエイターコース実技補助員として本学に勤務

最近の主な活動

【2012年】
「View—明日への扉」
→ART LAB AICHI、名古屋、愛知
「scenery 360°」(個展)
→GALLERY APA F1、名古屋、愛知
「woodland gallery2012」
→みのかも文化の森、美濃加茂市、岐阜
【2011年】
「point of view」(個展)
→GALLERY APA F2、名古屋、愛知
「International Art Workshop」
→gludsted, Denmark
「第56回CWAJ現代版画展」
→東京アメリカンクラブ、東京
【2010年】
「伊藤里佳展」
→See Saw gallery + cafe、名古屋、愛知
「contact」(個展)
→GALLERY SUZUKI、京都
など他多数

Close up! NUA-ism

進化する「名古屋芸大」のDNA

ムダな経験ってないですよね

 鮮やかな色使いと独特の形と情景が魅力的な作品たち。自然の雄大さを思わせるものや、日常のささやかな喜びを感じさせるような作品は、目にも胸にもなんとも心地良い。清々しい作風は、当然ながら一朝一夕で産まれてきたわけではない。「大学院1年生の時、混乱していた時期がありました。周りの人の作品のよさとか、その人らしさがとても良く見えるのに、それと比べて自分の作品がどうなのかよくわからない。迷ってしまっていろんな技法を試しては失敗するということを繰り返していました。ある時、基本の銅版画で制作をしたら、その方が良くて。今思えば素材や技法にばかり気がいっていて描きたいものと素材がかみ合っていなかったんです」 こんな時期を経て出会ったのが「モノプリント」だった。「すごくシンプルですよ。アルミ版のツルツルしたところに、銅版のインクを使って描いて、紙に写し取るんです」 大学でもモノプリントは授業にはなく、自分で調べ、試行錯誤を重ね、作品を作っていった。「交換留学生のファルマス大学でも、モノプリントのやり方を聞いて……、そう、絵の具が使い放題だったんですよ! 紙さえ買えば、どれだけインクを使ってもよかったので、色のインクをずらっと出して制作していました。それで今のような絵になってきたんです」

 モノプリントの魅力について尋ねると、「紙にインクの付く感じ、直接、描くとインクが全部しみ込んでしまうけど、紙に写し取ることで、独特の立体感だとか、筆の跡だとか、その感じが、ンーッ、イイ!(笑)」 刷って、その都度、決められるモノプリントの“1度きり”という感覚とスピード感が、自分には合っていると話す。

 留学での経験も自分の核になっているという。「向こうの大学院ではテーマとかコンセプトを考えるような授業が多かったんです。日本語で考えたことを話しても、内容があいまいで、再度質問されたりして、あらためてしっかりと考えさせられましたね。でも、その経験が、私の核になってると思います。ムダな経験ってないですよね」

 学生時代には芸大祭の実行委員を務めた。「大変だったけど、みんなで一つのことをやるのが本当に楽しくて、先輩や後輩のたての繋がりも強く、当時の仲間とは今でも仲良しです。デザイン科の子にパソコンの使い方を教えてもらったり、毎晩のようにミーティングをして話し合ったり、毎日一生懸命でした。一見、制作とは関係ないですが、パソコンを使えるようになったことで自分でDMを作成できるようになったり、大好きな友達がたくさんできたり、一生懸命やった事に対してムダなことってないですよね。興味のあることはどんどん挑戦してやった方がいいな。って思います」 大きな瞳で快活に笑う表情は、作品の世界そのままだった。

『untitled』 (2010)454×606mm

『ピンクのクモ』(2010)606×454mm モノプリント

『flower』 (2010)606×454mm モノプリント