名古屋芸術大学

マスターtoアーティスト

瀬田哲司(せた てつじ)

デザイン学部 クラフトブロック
メタル&ジュエリーデザインコース
准教授
http://www.setatetsuji.jp/

1960年
名古屋市生まれ
1988年
東京藝術大学大学院美術研究科鋳金専攻修了
1993年
名古屋芸術大学美術学部デザイン科専任助手
1996年〜
名古屋芸術大学美術学部デザイン科専任講師
FIDEM(Fédération Internationale de la Médaille d'Art)日本副代表
BAMS(British Art Medal Society)英国美術メダル協会会員
JAMA(Japan Art Medal Association)日本藝術メダル協会理事(国際担当)
2010年
第31回創作メダル彫刻展(日本藝術メダル協会)秀作賞
2011年
第6回佐野ルネッサンス鋳金展 奨励賞(佐野市)
2011年
Van der Veen / Teylers Prizeノミネート
2012年
第32回FIDEM(Fédération Internationale de la Médaille d'Art)国際美術メダル連盟 Grand Prix

2006年
BAMS student Medal project (英国美術メダル協会学生メダルプロジェクト)に参加。教員枠で出品したメダル「They repeat one’s act forever」がBAMSよりエディション発行される。同作品、大英博物館収蔵。BAMS student Medal projectはその後2007年と2009年に参加。
2010年
FIDEM 第31回展 TAMPEREに参加。“NEW IDEAS in MEDALLIC SCULPTURES”のオーガナイザーであるMrs.Mashikoと出会い、“NEW IDEAS in MEDALLIC SCULPTURES”に参加することになる。大英博物館、ヌーシャテル美術歴史博物館(スイス)作品収蔵。
2011年
オンラインメダルプロジェクト”Signs of the time”, ”THE END”に参加。
Van der Veen / Teylers Prizeにノミネートされる。同賞は世界で5名のコンテンポラリーメダルアーチストが ノミネートされた。
2012年
“THE MEDAL COMPLEX” 名古屋芸術大学Art & Designセンターで開催。FIDEM 第31回展 GLASGOWに参加。グランプリ受賞。University of Bergen(ノルウェー)、Museum Beelden aan Zee(オランダ)作品収蔵

マスターtoアーティスト

小さくて 大きなもの

 その昔、英国の作家、ラドヤード・キップリングは記した。“Oh,East is East,and West is West, And never the twain shall meet, Till earth and sky stand presently At God's great judgment seat.”「東は東、西は西、両者がまみえることは決してない。神の偉大な審判の席に天地が並んで立つまでは」 (“The Ballad of East and West”『英語の名句・名言』より 別宮貞徳:訳)  現代に生きる私たちは、作家が考えるほど世界が大きいものではないことを知ってしまった。テレビの衛星中継ですら今や昔の話、IT、ネット、スマホ……、現代人は、地球の裏側で起きたことを瞬時に知る世界に生きている。技術や文化は相互に行き来し、洋、邦の区別はその意味を小さくし、地球上の人々は同じ物を手にすることができ、遠くの人を身近に感じて生活できるようになった。世界はたしかに小さくなった。西と東は混ざり合った、と思っていた。

「よかったら、触ってみてください」 “生き写し”という言葉では足りないほどに生々しい小枝が、丁寧に整形されたフレームに、今度は文字通り、つなぎ目なくつながる。自然と人工物がバランスよく手の中に収まる。ひやりとした金属の冷たさと期待どおりの重量が掌に心地いい。

 「アートとしてのメダル」、そのことにあまりピンと来ていなかった。メダルといえばオリンピックのメダルのように褒章としての意味が強く、アートとして強く認識していなかった。たしかに欧州の博物館ではどこでもメダルの展示があり、レリーフ彫刻などと同じように芸術品として取り扱われている。見せられたコンテンポラリーアートメダルは、これがメダル! と思わせるような、それぞれが多様さと独自性を持っていた。紛う事なき“アート”の世界。 「FIDEM(国際美術メダル協会)の場合、展覧会としては20cm以内という規定があるんですけど、メダルそのものの規定は決めていないですね。実際、巨大なものを出品した人もいます。メダルというといろんなイメージがあって、例えば、片手で持てるというのもひとつのイメージ。丸かったり、素材が金属だったりとか、いろんなイメージがあります。それらの既成概念としてのイメージをすべて満たすか、あえて一部だけ使って、例えば大きさを外すのもひとつだし、形を円盤じゃなく立体的なものにする、といった表現があります。いろんな人が持っている既成概念をうまく利用して表現できる面白さがあります。全部外しちゃうとメダルじゃなくなる、全部クリアしちゃうと枠から外れきれない……」

 美しい色合いは、煮込み着色という日本の伝統的な手法によって作られたものだそう。「海外には無い技法で、アピール力は強いです。欧米で作品を発表するとなるとサイズが大きくなきゃダメと若いときから言われてきたんだけど、FIDEMやBAMS(英国美術メダル協会)の会議に行くと、みんな“ちっちゃい”ものが好き! こういう人達もいるじゃないかと発見しました。こういうサイズの造形っていうのは日本の工芸の中にいっぱいあります。根付だとか印籠とかもそうですね」 日本には鋳金の文化がある。欧州にはメダルの文化がある。その二つは今までクロスしていなかった。FIDEMでのグランプリ受賞は、その初めての接点にな るかもしれない。

 「コンテンポラリーなメダルの文化を日本にももっと広めたいですね。日本の鋳金の技術と文化を知ってもらいたいし、ヨーロッパのことを日本にも広めたい」 西と東は、思うほど混ざり合っていない。アートには、やれることがまだまだたくさんある。そう強く感じさせられた。

「They repeat one’s act forever」 2006年 大英博物館収蔵

「November 2009 acorn caps KOUZOUJI NEWTOWN」2010年大英博物館収蔵

「Mon jardin La feuille du camellia Janvier 2010」2010年ヌーシャテル美術歴史博物館(スイス)収蔵

「Gardenia jasminoides クチナシ 8 JULY 2010」“2011-2012 NEW IDEAS in MEDALLIC SCULPTURES”参加作品

「May - ”How much” How much longer we had waiting for THE END」2011年”THE END”参加作品

「REVERSIBLE DESTINY:WE HAVE DECIDED NOT TO DIE November 23,2011ーCloudy」2011年”Signs of the time”参加作品

「Japan standard time 21:40:21,May 30, 2011 I received e-mail from Teylers Museum」Van der Veen / Teylers Prizeプレゼンテーション作品、FIDEM XXXII GLASGOW出品作品

「The medal workshop in NUA October 8 -December 3. 2011」FIDEM XXXII GLASGOW出品作品

「Cayrata japonica It had spread on the wall September 29-2011」FIDEM XXXII GLASGOW出品作品

「Gardenia jasminoides July 19, 2011 Typhoon No.6 NUA」FIDEM XXXII GLASGOW出品作品

「Greeting medals」2012年University of Bergen(ノルウェー)収蔵

「The noon of April 29thWilliam and Kate road in a carriage  procession from Westminster Abbey to Buckingham Palace」2012年Museum Beelden aan Zee(オランダ)収蔵

「Icon medal for ”THE MEDAL COMPLEX 2012”」

「一見、不可能に見えることでも真摯に仕事をしていれば、取り組んでいれば、必ず、理解者とか、協力者が次々に現れてきて、あっという間に実現するんだなと。自分の感覚に忠実にいることが実を結ぶんだなと」