名古屋芸術大学

 午前11:00から東キャンパス2号館 中アンサンブル室で、説明会が始まりました。開場には、60名ほどの高校生とその保護者の方々にお越しいただきほぼ満席となり、新設コースへの関心の高さが覗えました。始めに、片岡祐司副学長からのあいさつがあり、続いて山田敏裕音楽学部長、森泉博行教授から、具体的なコースの内容についての説明が行われました。説明の間、参加者の多くにメモをとる姿が見受けられ、熱心に聞き入っている様子でした。昼食の間も、待機していた先生方に質問している高校生があちこちに見られ、実りのある説明会になりました。
 午後からは、大アンサンブル室に場所を移し、ミニミュージカル「君の手で、ステージをつくろう」が上演されました。こちらも、ステージはもちろんのこと舞台の袖や背後で準備をするスタッフにも、観劇者たちからの熱い視線が送られていることが印象的でした。

森泉博行 教授

ミュージカルコース

劇作家・演出家
シェイクスピア作品のミュージカル化、東宝や松竹のミュージカルなど、数多くのステージの台本・演出を担当。また、ジャニーズ・ミュージカルでも台本・演出などを担当している。

  • 東京グローブ座 ミュージカル「ローマを見た!」演出
  • 本多劇場 ミュージカル「賢者の贈り物」 演出
  • 帝国劇場 「SHOCK」 潤色
  • 大阪松竹座 「関ジャニ∞ Another''s ANOTHER」台本・演出
  • 新橋演舞場 「滝沢歌舞伎」 台本・演出
【所属学会】日本演劇協会/日本劇作家協会/日本演出者協会

エンターテインメントディレクションコースについて

 音楽の世界は、この15年、20年で、ものすごいスピードで変わってきています。その変化に合わせて、新しい能力、人材が求められています。そこで、この音楽の世界の現状に合わせて、今の音楽の世界で活躍できる方たちを育成ために、この新しいエンターテインメントディレクションコースを設立することになりました。現在から20年ほど前であれば、例えば30人の出演者のステージを作る場合、スタッフの数というのは、やはり30人ほどでした。ところが最近では、30人の出演者であれば、80〜90人のスタッフが必要なように変わってきています。それだけ仕事の種類が増えたということと、仕事が分業化していったということが理由です。

「エンターテインメント」と「ショービジネス」

 なぜ、仕事の種類が増え細分化されていったか、その秘密を解くキーワードが「エンターテインメント」と「ショービジネス」と2つの言葉です。エンターテインメントというと、日本では少しばかり軽い意味にとられがちですが、エンターテインメント本来の意味は、質の高い娯楽という意味です。質が高く、多くの人が楽しめるステージを目指すこと、これが新しい音楽の世界をつくっていく精神です。そして、ショービジネスというのは、エンターテインメントを作り上げていくための方法論、システムであると言えます。この二つのキーワードをもとにして音楽の世界は変わっていっています。音楽は「聞く」ものですね。しかし、エンターテイメント、あるいはショービジネスの世界では、ここにさらに音楽を「見せる」というアイデアを持ち込みました。以前なら「演奏会を聴きに行ってきた」と言いましたが、最近では「コンサートを見に行ってきた」と言うように変わってきています。コンサートというものが聞くものから、見る、あるいは見せるというふうに変化しました。そこで、これまで音楽の世界にはなかった新しい職業、ステージをデザインする人、衣装をデザインする人、照明、映像、特殊効果など、以前にはなかった仕事が誕生してきました。

音楽との関係

 例えば、ももいろクローバーZのコンサートを皆さんが担当するとしましょう。まずステージデザイナーがどういう背景、どういう風景の中でももクロの5人を立たせればいいだろうかと考えます。次に、その背景の中でどんな衣装を着させればいいかを衣装デザイナーが、どんな光の世界をつくればいいかを照明デザイナーが……、というようにそれぞれ考えるわけです。さてここで、なぜ美術ではなく音楽かということが問題になろうかと思います。
 舞台のデザイナーと画家の違いを考えてみましょう。画家というのは、自分が手を動かし作成した作品がそのまま観客の目に触れます。ところがステージデザイナーというのは発想することが仕事であって、ステージデザイナーが自分でステージを作るということはありません。ステージデザイナーは、音楽を聴いて、こういう世界をつくりたいと考える。そこへ、絵を描く担当の方やあるいは道具を作る方たちが、その発想を現実化していくということになります。衣装デザイナーも同じです。音楽と背景に合わせて、ひらめきと発想で様々なプランを出すことが仕事です。実際に衣装をつくるのは、別の衣装を製作の方たちが行います。従来ならデザインした人が衣装を製作するのが当たり前でしたが、現在では分業化が進み、発想する人と実際につくる方に仕事が分かれてきました。アイデアを出す方は、この音楽に合わせてどんな色、どんな形の衣装がいいかを考える。作る方は、どういう作り方をすれば歌いやすく踊りやすくなるだろうかというようなことを考えます。
 照明の場合も同じです。照明デザイナーは、コンサートのコンセプトや構成を理解し、より効果的に見せる照明プランを立案します。これをもとに、実際に照明を操作するのがオペレーターです。オペレーターも以前であれば5人程度だったのですが、皆さんもコンサートなどで動く照明をご覧になったことあるかと思いますが、コンピューター制御で動く照明が登場し、大幅にスタッフの数も増えてきました。ムービングライトと言いますが、これ使う場合、通常の照明のプランをする人、照明を操作するオペレーター、またはそれとは別に、ムービングライトのプランをする人、それの操作をする人、というように照明に係る人の人数も増えてきています。このように、様々な分野で様々な専門家たちがアイデアを出し合って一つのコンサートができていると言えます。そして、そのプランを立案する場合にも、操作をする場合にも、音楽の知識が求められています。

取得できる資格

 照明でも音響でも、デザイナー、プランナー、オペレーター、などいくつもの仕事があるのですが、このオペレーターという実際に操作する仕事、音響や照明の卓(コンソール)、そのほか劇場の管理をするこの方たちには、資格というものが必要になります。そこでエンターテインメントディレクションコースでは4年間で音響、照明、劇場管理の資格がとれるような設定になっています。今のところ、2年間で初級の資格をとっていただき、4年までに中級の資格をとっていただけるようカリキュラムを組んでいます。この資格は劇場あるいはコンサートホール、市民会館などに就職するにあたっては、重視される場合がありますので、一応、このコースを選択する学生には、この三つの資格を取得していただくことになっています。

「見せる音楽」から「参加させる音楽」へ

 さて、エンターテインメントとショービジネスは音楽の世界を変えてきましたが、改革はまだ終わりません。音楽を聴かせる、音楽を見せる、それに加えて、音楽に参加させる、というアイデアを持ち込みました。最近では当たり前になりましたが、コンサートへ行って立つ、あるいは団扇を振る、手拍子を打つ、ペンライトを振る、これらの行為は、音楽に参加しているということを意味します。音楽に参加して頂くということは、観客と一緒にステージを作っていくことにつながります。これもエンターテインメントの特徴の一つです。改革を重ねれば重ねるほど、だんだんとエンターテインメントの輪郭がはっきりしてきて、輪郭がはっきりしてきたのと同時に、次に何を学べばいいのかということもはっきりしてきています。音楽に参加させるということになった時、また新しい職業ができました。音楽の世界に、作家というもの出現させました。構成作家と言いますが、構成作家は、まずコンサートのテーマを決める、曲を選ぶ、曲順を決める、曲順によって一つのドラマを生み出す、こうしたことを考え、構成台本というものを書きます。音楽のコンサートでは演者が曲と曲の間におしゃべりをし、あたかもフリートークのように聞えますが、実はあれも構成作家の方が基本的な内容を書いています。
資格取得
国家資格「舞台機構調整(音響機構調整作業)2級・3級」
社団法人日本照明家協会「照明技術者検定2級」

第一線で活躍している人材を特別講師に

 皆さんは、「スーパー歌舞伎」をご存じでしょうか? スーパー歌舞伎は、歌舞伎界を大きく変革をいたしました。スーパー歌舞伎を作った人たちは、エンターテインメントとショービジネスの考えを、歌舞伎の世界で更に前進させました。当初は、伝統的な歌舞伎の方たちから認められていませんでしたが、今では、歌舞伎全体がスーパー歌舞伎化してきていると言っても過言ではありません。スーパー歌舞伎は、もともと歌舞伎をつくっていなかったスタッフが集まり始められました。衣装は、毛利臣男さんとパリオペラ座でバレーの衣装を制作していた、桜井久美さんという方を招き歌舞伎の衣装を制作しました。この桜井久美さんを、特別講師としてお招きする予定になっています。歌舞伎の「宙乗り」というのをご存じでしょうか? これは歌舞伎の伝統的な技法なのですが、ワイヤで演者を吊って空中を移動することですが、スーパー歌舞伎では、歌舞伎をやっていたらスタッフではなく舞台をつくっていた特殊効果のスタッフに頼みました。この方が、宙乗りだけではなく、歌舞伎の舞台に、雨を降らせる、滝を作り出す、洪水を起こすという、これまでになかった効果を持ち込みました。この方も、新しいコースで特別講師として教えていただく予定です。
 これから皆さんが学んで、もしもこの世界にはいるとすれば、今行われていることよりももっと新しいことが必要になります。今よりももっと新しいことを実現するためには、今現在の最新のことを学んでおく必要があります。そのため、今一番新しい仕事をしている方たちを、特別講師としてお招きすることを考えています。
 エンターテインメントディレクションコースでは、今現在、実際にステージなどで活躍されている方をお招きして、実際にその人たちから習うということに重点を置いています。現在の舞台がどうやってできているか、最新の現場がどうなっているか、ということを理解していただくことが、自分たちが将来つくるステージはどんなふうであればいいのかを考える、そのヒントになるのではないかと思います。

眠っている才能を開花させるトレーニング

 先ほどから私が、ひらめきですとかアイデアですとか、感覚が大事だというお話しをさせていただいていますが、これらをどうやって養っていけばいいのかをお話します。まず、人間である以上を全く才能がないということはありえません。誰でもが、それぞれの個性と能力を持っています。ただし、私たちのようなエンターテインメントに関係する仕事に就かない限り、こういうことで生かされる能力は必要ありません。これまでの人生では、こうした力は活用されていません。自分の中に眠っている状態だと言うこともできるでしょう。それをエンターテイメントディレクションコースの中で刺激し、いままで使っていなかったものを目覚めさせることで、ひらめきや想像力、そしてそれらの瞬発力を、鍛えていきます。一人ひとり個性が違うことも重要なことです。一人ひとりの異なる個性的な発想を大事にしながら、新しい人材を育てられればと考えております。

【 就職関係一覧 】

企画・プロデューサー・演出家・構成作家・美術デザイナー・美術製作者・衣装デザイナー・衣装製作者・スタイリスト・照明デザイナー・照明オペレーター・ムービングライトデザイナー・ムービングライトオペレーター・音響デザイナー・音響オペレーター・音響効果・電飾・イルミネーション設計・特殊小道具・特殊効果・フライングコーディネーター・フライングオペレーター・ステージ進行・劇場管理・劇場運営・幕内スタッフ・プロモーションビデオ制作・音楽番組制作・コンサートビデオ映像制作・アニメーション作品映像音楽制作・ゲーム音楽制作・CM制作・CMソング制作・ショッピングモールBGM制作・音楽プロデューサー・コンサート企画・制作・構成・コンサートディレクター

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