名古屋芸術大学

NUA OG

水上茉沙美

みずかみ まさみ

小学校教諭

1991年
愛知県生まれ
2014年
人間発達学部 子ども発達学科卒業
2014年
名古屋市立福田小学校勤務

学生時代よりも濃厚な時間

 真夏の午後のうだるような日差しの中、勤務する名古屋市港区の福田小学校にお邪魔した。夏休みだが午前中にクラブ活動があり、子どもたちは帰っていった。人気のない学校の廊下は、夏の空気とは裏腹にひややかだ。建物、机、黒板、久しぶりに小学校を訪ねると、得てして子どもの頃感じていたよりも小さく感じるものだが、この学校の校舎は大きく感じる。聞けば、児童数は全校で650名ほど、1学年100名を超えるという。名古屋市が公表している統計によれば、市内小学校の平均児童数は425名というから、校舎の大きさも納得できる。都心部の小学校では、子ども数の減少で教室に空きが出てきているそうだが、ここではまだそんなこともないとのこと。日頃、子どもたちが元気にはしゃぎ回っている気配が、あたりから立ちのぼる。

 「お久しぶりです!」にじむ汗をタオルでぬぐいながらも、快活に現れた笑顔は学生時代と変わりない。じつは、水上さんは学生時代、ちょうど隣のページ、『NUA-student』で取材させていただいたことがあるのだ。「先生になりたい」と話すひたむきさが印象的だった。学生時代の夢を叶えた今、どんな心持ちなのか? 図らずも追跡調査のような取材になった。

 「正直、大変です。もう、生きていくのに必死! 毎日がこんなに大変なんだと思いながらいます。でも、本当に楽しいです!」 学生時代に考えていたことと実際に教壇に立つことは、大きく異なっていた。「子どもたちは、きっとこういうところでつまずくだろうなと考えて授業の準備をしておくのですが、子どもたちは想像以上で、見当が外れてそれに応えるための準備がなかったり、授業がずれていってしまったときの修正だったり、本当に難しいです」 他の先生が行う研究授業では、学生時代とはまた違った視点で見るようになったという。子どもたちに解るように板書することや、発問(子どもの思考や活動を促すような問いかけ、答えが1つではない、思考が広がるような問い)など、実際に授業をするようになり難しさと奥の深さを実感しているという。「段階を踏んでの教科のつながりがあるんです。1年生で習ったことが2年生になってこうなるみたいなものです。そういったつながりを、今ひとつ分からないまま授業をやってしまっていたこともあります。そんなとき、子どもたちには申し訳ないなと思いつつ、もっと勉強しなくちゃと反省しています」

 短期間の実習とは違い、1年間子どもたちと生活することについて聞いてみると、子どもとの関係の難しさと同時に学生時代には得られなかった大きな喜びを感じていると話す。「私は、最初の年が2年生の担任、そのあと4年生を受けもち、今年、持ち上がりで5年生を受けもっています。低学年の子と関わるときは、言葉をより分かりやすくしないといけない。言葉が上手く出てこない子どもの思いも理解してあげたいと思いながら関わっていましたが大変でした。5年生にもなると大人と会話するように話すことができますけど、その分また難しくて。何かあったときにはその子の気持ちを聞いてあげられるよう言葉がけをしたいのですが、その言葉が上手く出てこなかったり、話はできたけど大丈夫かなと不安になったり……難しいですね。でも子どもががんばって成長していく瞬間があるんです。できなかったことができるようになる瞬間や、友だちとの絆が強まっていく瞬間など、すごく嬉しそうにするんですよ(笑)」

 学生時代は、3免(保育士資格、幼稚園教諭1種免許状、小学校教諭1種免許状の3つの免許を取得すること)を取るために一生懸命だった。実際に職務に就いてみて、学生時代にもっといろいろなことをやっておけばよかったと振り返った。「人間発達学部って、専門が人間発達じゃないですか。もう一つ、別の専門というか、得意分野があれば強みになるのかなと思います。今、不安に思っていることは、自分の得意分野をこれから作っていけるかなということです」 努力してさまざまな分野に積極的に関わっていきたいと思っているという。「自分が経験したこと、旅行に行ったこととかでもいいし、すごい経験をしたという話は、興味があるようで子どもたちは一心に聞いてくれるんです。ですから今しかできないことをたくさんやっておこうと思っています」 今年3月に同僚に誘われ『名古屋ウィメンズマラソン』に参加、見事に完走。今年は、残り少ない夏休みの間に富士登山へ挑戦するという。これらの経験を子どもたちに話していきたいと微笑む。

 就職して3年、学生時代の4年間よりも濃厚な日々を走り続けているようだ。はつらつとした笑顔からは確かな充実を感じた。

先輩教師の山本愛可さん(写真右:本学OG、人間発達学部2期生)と

今年3月13日『名古屋ウィメンズマラソン』に参加、5時間28分完走

今年8月27日富士登山。「日本一高い富士山に学級旗をもっていく約束を子どもたちとしていたので、写真を撮りました」

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