「愛知県×名古屋芸術大学連携事業 あいちアール・ブリュット作品展」 ギャラリートークを開催

 2024年6月14日(金)~25日(火)、西キャンパス Art & Design Center Westにて、愛知県との連携事業「愛知県×名古屋芸術大学連携事業 あいちアール・ブリュット作品展」を開催しました。最終日の25日には展覧会にご協力いただいた特定非営利活動法人愛知アート・コレクティブ、社会福祉法人あいち清光会障害者支援施設サンフレンドから関係者をお招きし、ギャラリートーク「アール・ブリュットの時代」を開催、学生をはじめ多くの観覧者で賑わいました。

 この展覧会は、先に締結された「愛知県と県内3大学との障害者芸術文化活動の推進に関する協定」に基づくもので、障害者アートに直接触れて理解を深め、自身の作品作りに生かすことや芸術の知識を生かした障害者芸術文化活動の支援者となることを目的として開催されました。会場のA&D Center Westには、山本良比古氏(1948-2020 絵画)、小寺良和氏(1957- 陶芸)をはじめとした、あいちアール・ブリュットを代表する作者15名の作品50点以上を展示、大規模な展覧会となりました。

 ギャラリートークでは、はじめに愛知アート・コレクティブ代表理事 鈴木敏春氏からアール・ブリュットの歴史についてお話しいただきました。1928年(昭和3)千葉県に知的障害者施設「八幡学園」が創設され、そこに図工の時間が設けられたことが障害者芸術文化活動の始まりといいます。初代園長である久保寺保久氏が「裸の大将」として知られている山下清氏を見いだすなど大きな功績をあげ、障害者アートの世界が開かれます。久保寺氏の、それぞれが持つ良い点を伸ばそうと「踏むな、育てよ、水をそそげ」という言葉が非常に印象的です。愛知県では1952年(昭和27)に県内初めての特殊学級が名古屋市立菊井中学校に開設され、後に山本良比古氏の指導を行う川崎昂氏が赴任します。1980年代から徐々に社会的にも障害者アートは認知されるようになり、1999年(平成11)に「生(いのち)の芸術フロール展」、2007年(平成19)「第1回 ふれあいアート展」、そして、2014年(平成26)に「あいちアール・ブリュット展」が開催されます。鈴木氏は、第1回から企画・作品展示に携わり、障害のある人の表現は美術の世界を変えていくようなエネルギーを持っていると、アートの可能性に語り、これまでの取り組みについて紹介しました。
 続いて、社会福祉法人あいち清光会障害者支援施設サンフレンド 末松グニエ モルヴァン氏、竹田印刷株式会社 アートディレクター 安井和男氏に、作品について解説していただきました。参加者とともに会場を巡り作者の経験やこだわりなどを説明し、作者を尊重しつつ作品として成立するようサポートする支援者としての立場も説明していただきました。参加者からの質問を受けながら、盛況な作品解説となりました。

 展覧会に訪れたコミュニケーションアートコース 4年 石川清菜さん、浅井優菜さん、城所ななみさんには、次のような感想をいただきました。
「今回の展示を見て、どの作品も非常に個性的であると感じました。特に印象に残ったのは、小早川さんの作品です。彼女の作品は、自然や植物の爽やかさが感じられるものでした。色の使い方や重ね方が作品ごとに異なり、とても魅力的でした。私も小早川さんの技法を参考にし、色の重ね方を工夫してみたいと思います。」(石川清菜さん)
「整えられた線や形というより、スケッチのように、その時の感覚や景色がそのまま作品に落とし込まれている印象があり、その活き活きとした雰囲気に惹かれました。私は現在アニメーションを主に制作していますが、下書きやスケッチの線を活かしたような作風で今後制作してみたいと思いました。」(浅井優菜さん)
「展示会全体を鑑賞し、不自然な硬さも不自由さもない作品だと感じました。子供特有の柔らかな描写と、経験を積み重ねた技術力が両立した面白い作品ばかりで大変楽しかったです。その人その人のこだわりが分かりやすく、追求していく大切さを感じました。今回の展示会を通して、今一度作品作りの楽しさを胸に制作をしていきたいと思いました。」(城所ななみさん)
 作者の気持ちや考えを素直に表しているような作品たちに、大きく刺激を受けたように感じられました。

展示作品