2023年からスタートした西尾市と美術領域の連携「佐久島SDGsプロジェクト」を、今年度も継続します。佐久島の漂着ごみの問題や、佐久島が直面しているさまざまな課題を起点にアート作品を制作、SDGsイベントなどに展示して佐久島の現状について広くアピールしようというプロジェクトです。
2025年6月7日(土)、8日(日)の2日間、プロジェクトに参加する17名の学生、院生が佐久島を訪れ、リサーチとフィールドワークを行いました。海岸でごみ拾いを行い、ごみの中から素材となるものを収集、また、佐久島に点在する作品群を鑑賞、さらに西尾市佐久島振興課 三矢由紀子さんから佐久島の問題や取り組みについてお話しいただく座学の時間もありと、島の問題とアートの役割や関係性を実際に見て体験する盛りだくさんの内容です。
初日の7日、松岡教授がデザインした定期船「第二はまかぜ」に参加者一同乗船し、午前10時前に佐久島西港に到着。さっそく島の西端、白浜へ向かいます。西尾市の職員として島に居住し地域への協力活動を行っている「地域おこし協力隊」の矢部さん、安田さん、工藤さんの3名にご協力いただき、ごみ拾いを行いました。
佐久島には、生ごみを処理する機械がありますが、それ以外は島内で処理することができず、月に一度船で運んで本土で処理されるといいます。腐敗して自然に返る流木や草などはごみに入れず、ペットボトルや缶、ビニールやプラスチック類などをごみとして回収します。ペットボトルは、紫外線で劣化しておりリサイクルできないため、可燃物として回収します。分別方法も島の事情に合わせ、説明を受けながらのごみ拾いとなりました。
ごみ拾いと同時に、学生らは自分の作品の素材となるものも集めます。貝殻や石、シーグラスや陶器の破片など、さまざまな素材があります。なかには、大きな魚の背骨や、翼だけが残ったウミウの死骸など、それぞれに関心のあるものを集めました。集めたごみは分別し、素材はお互いに集めているものを交換しました。1時間ほどの作業で、軽トラックの荷台がいっぱいになるほどのごみが集まりました。
作業後は、西尾市佐久島振興課 三矢さん、佐久島をアートの島として活性化させた有限会社オフィス・マッチング・モウル ディレクター/代表取締役 内藤美和さんに、佐久島の現状と課題についてお話しいただきました。
佐久島の人口は2025年4月時点で172人、1年前の190人から急激な減少が進行中。とりわけ西地区の過疎化が深刻です。産業については、以前は漁業が中心でしたが、数年前から観光業が漁業を上回るようになったとのこと。海水浴よりもアートによる地域振興がメインになっていているといいます。
インフラ面では、ごみ回収のときの説明でもありましたが、月に1度の回収で生活ごみが溜まりやすいことが課題。学校は、小学校と中学校があり、生徒は合わせて21名、小規模特認校制度で西尾市からの越境入学が認められており、島出身者は5名のみと過疎化が進んでいることが窺えます。地域活動とSDGsについては、島民有志による「島を美しくつくる会」が中心となり、藻場の再生活動、里山保全・竹林整備、漂着ごみの回収、家並み保存、特産品開発などが行われています。
これまで、漂着ごみが大きな問題でしたが、人口減少によるコミュニティ崩壊や耕作放棄地や空き家の増加など、過疎による問題が大きくなってきたような印象です。それを受けて、移住を促すことに加え島外の協力者、関係人口を増やすことが重要とし、アートや環境活動で外部との連携を強化しています。本学との連携もその一環で、これまでの漂流ごみを使ったアート作品制作は、「啓発+地域活性化」のモデル事業として、愛知県からも高く評価されていると嬉しい言葉もありました。
午後は、島の東側にある民宿まで歩きながら、点在するアート作品の鑑賞を行いました。西側の黒壁の集落を抜け、佐久島クラインガルデン、やぎのノンとビリー、すわるとこプロジェクト、カモメの駐車場、大島に渡りイーストハウス、佐久島のお庭、正念寺の海神さまなどなど、松岡教授の作品を中心に、制作にも携わった非常勤職員 伊藤みのりさんの説明を受けながら鑑賞しました。作品以外にも、島のネコや鳥、蟹、昆虫などなど、島の豊かな自然にも触れました。学生らはそのまま宿泊し、レンタルサイクルを使って、さらに島を散策、リサーチとフィールドワークを進めることになります。穏やかでゆったりとした時間が流れる佐久島独特の雰囲気を感じつつも、放置された田畑や倒壊しそうな空き家も見受けられ、多くの課題を実感させられました。
今年度プロジェクトでは、制作された作品を2025年10月3日、4日に行われる「SDGs AICHI EXPO SDGs子ども・ユースフェア」、2025年10月5日 三河湾大感謝祭、2025年10月28日~11月29日 佐久島弁天サロン、2025年12月4日~12月26日 佐久島ナビステーションで出展する予定です。