デザイン領域 産学連携企画 中部文具工業協同組合「2022 文具デザインプロジェクト」最終発表会 最優秀賞は2名に

 2022年7月27日(水)、デザイン領域と中部文具工業協同組合との産学連携企画「2022 文具デザインプロジェクト」の最終発表会を開催、優秀賞が決定しました。デザイン領域で例年行われているこのプロジェクト、最終プレゼンテーションは今年もシヤチハタ株式会社本社会議室をお借りして行い、審査の結果、最優秀賞とメーカー賞を決定、表彰式を行いました。
 今年度の課題は、森松産業株式会社「デスク周りを使いやすく! 持ち運べる収納グッズ」、シヤチハタ株式会社「暮らしを助ける、新しい用途のスタンプ」の2題。例年ならば学生は課題をひとつ選択して進めますが、今年は15名全員がどちらの課題にも取り組み、30案のプレゼンテーションとなりました。6月のテーマ発表から、2ヶ月弱の期間で2案制作と厳しい条件でしたが、ユニークなアイデアが数多く見られました。
 審査は、シヤチハタ株式会社 舟橋正剛 代表取締役社長、森松産業株式会社 森直樹 代表取締役社長の2名を中心に5名の審査員で行われ、①ターゲットは明確か ②シナリオは具体的か ③アイデアは魅力的か ④ユーザーが使いやすいデザインか ⑤発表は分かりやすかったか、の5つの項目で採点、合計点での評価となります。

 発表に先立ち、シヤチハタ株式会社 舟橋社長から「毎年、この発表では目から鱗が落ちるような提案をいただき感謝しています。我々が携わる文具の市場もコロナ禍の影響を受け、これまで以上に幅広く考えていかなければならない状況です。しかし、逆にいえばチャンスの時期ともいえます。学生さんの柔軟なアイデアは大いに刺激になり、どんな提案が出てくるのかワクワクしております」と挨拶がありました。
 プレゼンテーションは、1案につき4分、ひとり8分ずつの説明と質疑応答です。休憩をはさみながら3時間以上、壮大な発表会となりました。長丁場となりましたが、どのアイデアも興味深く、テンポ良く説明が進み飽きさせません。質疑の時間もプロダクトの背景を聞くものが多く、まるで学生世代の感覚を知ろうというリサーチのようになりました。印象的だったのは、学生らがアルバイト先での経験を基に発案しているものがいくつかあったこと。自身の経験に基づいて課題解決しようという考え方がデザイン領域の学生らしく、提案にも説得力を感じました。

 審査の結果、森松産業賞は、金田太典さんのひざの上でパソコンを使うのに便利な鞄「テレワークかばん」、シヤチハタ賞は、アイドルのコンサートでファンサービスをもらうためにアピールする“ファンサうちわ”を簡単に制作できるスタンプマシーンを提案した仲田亜利沙さん「推し活を便利に」が受賞しました。最優秀賞はなんと同点で2名が受賞、佐村拓音さんの「フットメジャースタンプ」と再び金田太典さんの「おままごとスタンプ」が受賞となりました。「フットメジャースタンプ」は、佐村さんが靴量販店でのアルバイト経験から考えられたもので小さな子どもの足のサイズをスタンプを利用して簡単に計る道具、「おままごとスタンプ」は、香りの付いたスタンプを重ねて押すことで料理や普段匂いを嗅いだことのないものの香りを楽しむことができるようにするもの。両名には、それぞれ賞品が贈られることとなりました。

 最後に講評として、森松産業株式会社 森社長から「今回もアイデアの幅の広さに驚かされました。プロダクトは、まずアイデアがありそれをどうやって実現するか、さらにどう量産化するか、できてからでも改善点を探るなど、幾重にも大変なステップがあり、その都度苦労があるものです。しかしながら、最初の起点はアイデアを出す人の思いであり、どう実現するかはひとまず置いておいて、発想を大事にして欲しい」との言葉がありました。シヤチハタ株式会社 佐藤旭 取締役からは「具体的に自分たちが困ったことを解決していく、この姿勢がよく現れていてZ世代の考え方なのかなと感じ入りました。さまざまな解決策もさることながら、皆さんのニーズそのものが非常に参考になりました。靴量販店だけでなくドラッグストアや飲食店でのアルバイト経験のお話を伺い、さまざまなところにニーズがあることを改めて思い起こさせていただきました」とお話しくださいました。
 担当する三枝樹成昭 非常勤講師からは、「狙ったとおりの今どきのアイデアを提案することができました。また、日々の経験から出てくるデザインを我々も体験できたのではないかと思います。デザインの価値は、使っている人の経験に響きそれに対応できるかというところにあると思いますが、受賞作品はいずれも使っているシーンをよく感じられるもので、そうした点が評価されたのだと思います」と述べました。表彰式には、現在、シヤチハタ 商品企画部所属で学生時代にこのプロジェクトにも参加したインダストリアルデザインコース出身のOB 安田駿太さんも飛び入り参加、和気あいあいとした雰囲気の中、最終発表会は終了となりました。