今年度から、テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーデザインコース、工芸コース(陶芸・ガラス)は、領域を越えた連携を進めています。愛知県の伝統工芸とコラボレーションし「第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会」(KOUGEI EXPO IN AICHI)に出展する「工芸EXPOプロジェクト」では、テキスタイルデザインコースの学生が、例年手ぬぐい制作でお世話になっている有松・鳴海絞りの張正さんとコラボレーションし、伝統の「豆絞り」を使った作品を制作します。
 豆絞りは、江戸時代から続くドット模様の伝統的な絵柄ですが、戦争により制作方法が失われ、張正さんの先代、先々代が研究を重ね復活させたもの。今回、学生らは、生産の過程で出たB反(染めむらなどちょっとした難点のある二級品)を活用し、豆絞りの柄と重ねるように染めを加えて作品を作ります。これを機に、張正さんのご厚意で豆絞りの制作を見学させていただきました。

 張正さんは、豆絞りを板締め(布を2枚の板の間に挟み強く締め、染料の浸透を防いで模様を染め出す染色法)、浸染(布を染料溶液に浸して染める方法)で制作しており、その技術は、長年の研究と経験で得られたもの。門外不出の技術で、なかなか見せてもらえるものではありません。見学会は、とても貴重なものとなりました。

 工場に集まった学生らは、密にならないように、また作業の邪魔にならないように気を付けながら作業を見守りました。事前に屛風畳みに折られた布を、豆絞り用に溝を掘った専用の板に締めていきます。豆絞りの丸い模様は、染料がにじむことで丸くなるため、締めすぎると綺麗な丸になりません。もちろん締め方が緩いと模様がつながってしまい、やはり丸にならず、微妙な力加減が必要です。染料の温度や、その日の湿度も染みこみ具合に影響するため、しっかりと温度や浸す時間の管理が必要です。張りつめた雰囲気の中、締め上げた布をゆっくりと浸し、何度も時計を確認しながら布を返し、染めていきました。張正さんでは、通常ならば色味に深みを出すため染めた生地を1日置いてから洗うそうですが、今回は特別に一部を洗って見せていただきました。板から外した生地はストライプになっていますが、水の中で広げると鮮やかな豆絞りの模様が現れ、感嘆の声が漏れました。
 張正さんは「こうした技術をぜひ若い人に受け継いで欲しい」と話し、学生らは作品作りへ向け薫陶を受けたようでした。

 「第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会」(KOUGEI EXPO IN AICHI)は、2021年11月27日(土)~29日(月)、Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場・愛知県常滑市セントレア)にて開催されます。テキスタイルデザインコースの作品を含め、本学のブースでは愛知県の伝統工芸のコラボレーション作品が多数展示されます。お楽しみに。