岐阜県池田町・㈱OKB総研・デザイン領域
「揖斐・池田サイクルトレイン 日本一への挑戦プロジェクト」検証事業 周遊マップ制作 最終報告会

 岐阜県池田町、㈱OKB総研、デザイン領域による地域創生プロジェクト、「レンタサイクル」を活用したモデルコースマップ制作の最終報告会が2022年3月17日に行われました。岐阜県池田町は、濃尾平野の北西部、西に標高924mの池田山、東には揖斐川が流れる自然豊かな小さな町。地域を走る養老鉄道と協力し車内への自転車の持ち込みや移動した先で自転車を返却することのできる「養鉄トレクル」というレンタサイクル事業を行っています。学生らがこのレンタサイクルの利用を促すコースマップの制作に取り組んできました。

 コロナ感染症に対応し、OKB総研のコーディネイトで池田町総務部企画課長 小川孝文氏、揖斐川町政策広報課 加納和貴氏、道の駅池田温泉駅長 寺田直樹氏、まちづくり工房「霞渓舎(かけいしゃ)」NPO法人校舎のない学校 馬淵規嘉氏と教室をオンラインでつなぎ、モニター越しの報告会となりました。

 はじめに、OKB総研から事業の経緯について説明がありました。2015年に「池田町版地方創生総合戦略」の施策としてサイクルトレインプロジェクトがスタート。「養鉄トレクル」が整備され、揖斐町、池田町で「岐阜のマチュピチュ 天空の茶畑へ行こう!」キャンペーンを実施、レンタサイクルの利用者が大幅に拡大。しかしながら、コロナ感染症拡大で観光産業へ打撃、レンタサイクル利用者数もピークの半分以下にまで減少。そこで、本学デザイン領域が加わり、池田町の魅力について、若い学生の新しい視点でもう一度考えてみる、というのがこの連携プロジェクトです。

 プロジェクトには、ライフスタイルデザインコース、インダストリアル&セラミックデザインコースの有志の学生が参加、最終案として、制作した周遊コース「みずぽたマップ」について説明しました。説明は、ライフスタイルデザインコース2年生 川部羽瑠香さん、榊原里紗さんが行いました。

 プレゼンテーションは、このプロジェクトに携わり学生らがやってきたことのプロセスと考えたことを順を追って説明しました。2021年8月の1回目の現地調査では4つのチームに分かれてスポットの確認を実施(掲載記事)、Aグループは「地元住民の行きつけのスポット巡り」、Bグループ「古墳群などの歴史スポット巡り」、Cグループ「観光客目線での調査」、Dグループ「川を中心とした街の調査」を行いました。その結果をもとに学生間で情報を共有、9月に中間プレゼンに向けてキーワードを選出するための話し合いを行いました。そこから、養鉄トレクルの利用者の特性を生かした案として池田町の地形を生かした「エクササイズマップ」、利用者同士が共有することで完成されていく「情報共有アプリ」、池田町の川に着目した川推しの「Ikeda Water Map」、豊かな自然に包まれ自分が物語の主人公になったような気分になることに着目しボイスドラマを交えた「池田町ドラマチックサイクリング」の4つの案を制作、10月に中間プレゼンを行いました。その結果、川推しの案「Ikeda Water Map」が採用となりました。そこからは、川推し案をブラッシュアップし、川辺のスポットを五感に訴える要素で分類し直し、2022年1月池田町を再調査、水と五感という観点でリサーチし、ミーティングを行いマップの記載するポイントやデザインについてすり合わせを繰り返しました。「ポタリング」(目的地を決めることなく気分や体調に合わせてサイクリングすること)というキーワードを提案し、「水の地図」と「ポタリング」から「みずぽた」というネーミングが決まりました。また、観光だけでなく、地元の人にとっても「池田町の水」の魅力を再発見できることを取り入れ、最適な形へと修正されていきました。最終的には、町の価値を見つめ直すことにつながるマップとなり完成に至りました。こうした経緯を、修正していった考えやポイントについて丁寧に説明しました。

 講評では、揖斐川町政策広報課 加納氏からは「新たな集客を行うのに、若い人の視点は貴重なものでとても良かった。これまで目につかなかった点をたくさん挙げてもらったことも成果。揖斐川町としても新たな試みができればと思う」とのコメント。
 道の駅池田温泉 寺田駅長からは「学生さんらしい、かわいらしいマップができた。これまで配布してきたものにくらべ、女性や若い人にも手にとってもらいやすいものになったと思う。水路の写真を見て、地元の目だけでは気が付かなかったと感じる」。
 まちづくり工房「霞渓舎」 馬淵氏からは「プロセスの話を聞き感動した。生活の中の水に着目したところが新鮮。山を中心に描かれた地図もとても良い。個人的には、エクササイズやボイスドラマの案も、どんなふうになるのか見てみたかった」。
 池田町総務部企画課 小川課長は「一所懸命取り組んでいいただき感謝している。このマップを手がかりに、今後どうやって活用していくか考えていきたい。池田町としてしっかり取り組んでいきたい」と抱負を語られました。
 担当したライフスタイルデザインコース 水内智英准教授は「アイデアを実際に形にしていくステップには難しさがあり学生にとって非常に良い経験となり感謝します。『みずぽた』という着眼点は非常に良いものであると思います。限られた予算や制限の中、地元の人の生活にアクセスできるマップという当初の精神を失わず完成できたことは素晴らしいこと。マップは地元にとって資源となると思われます、上手く活用していただければと思います」とお礼を述べました。
 インダストリアル&セラミックデザインコース 後藤規文教授は「進め方に迷いながらも、学生がたくさんのアイデアを出してくれました。プロセスに無駄が多いように思われたかもしれませんが、最終的にまとめられて良かったと思います。個人的には、現地を訪れ質の高い田舎暮らしの良さや池田町そのものに多くの観光資源があるのでないかと感じました。学生が提案した4つの案以外にもまだまだいろいろな切り口があるように思います。今後の活動、ワークショップで新たな魅力を見つけるなど、長い視点で活動できればと思います。ぜひ、協力させていただければと思います」とまとめ、報告会は終了となりました。