今年度から本学では、デザイン領域のテキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーデザインコースと美術領域の工芸コース(陶芸・ガラス)の3コースで領域横断による連携を深め、幅広い素材と他領域の学生との交流を促し対話しながら思考を深める工芸分野領域横断を進めています。連携プロジェクトのひとつ「工芸リレー」として、7月は西キャンパスアート&デザインセンターWestにて3コースが連続して展覧会を開催。工芸コース「陶・ガラス教育機関講評交流展 CONNEXT 2021」、メタル&ジュエリーデザインコース「素材展」に引き続き、テキスタイルデザインコースの「素材展」が7月30日(金)~8月4日(水)、工芸リレーを締めくくる形で開催されました。テキスタイルデザインコースの2年生は初めて触れるテキスタイルの織り、染め、デザインを形にする課題、3年生は最終プロダクトをイメージした作品の制作、4年生は卒業制作プレ展示、さらに大学院生はこれまでの研究成果を発表と、盛りだくさんの展示で非常に見ごたえのある展覧会となりました。展覧会初日の7月30日には3年生、8月3日には2年生、8月4日には4年生の講評会が行われ、学生たちにとってはこれまでの自分の作品に向き合う貴重な経験の場となりました。

 8月3日、2年生の講評会では、テキスタイルデザインコースの扇千花教授、樫尾聡美講師、シミズダニヤスノブ客員教授、堀みど里講師が講評。それぞれが、染め、プリント、織りの作家として活動するエキスパートであり、意義深い内容となりました。2年生前期の課題は、織物組織の成り立ちを理解するための織物作品、モノクロ で図案を考える平面作品、浸染と絞りによるプロダクトを考える作品、フェルト メイキングの立体作品の4つ。初めて工芸の世界に触れた、初々しい作品が並びます。1年次のデザインファンデーションを経てテキスタイルコースを選択した学生らにとって、テキスタイルの制作は初めて経験することばかりで、みずみずしさが作品の随所に現れています。織りの作品では、作業効率の良さは織物の長さに、丁寧さは織り目に、デザイン性は配色や織り方の工夫に現れており、そうした眼で見ると学生ひとりひとりの個性が作品に見事に表されています。平面作品は苦手といいつつしっかりと考えて取り組んでいることが窺える作品や、誰もが楽しんで制作してことが伝わってくる羊毛フェルトの立体作品など、テキスタイルは平面と立体の両方の感覚が必要であることがよくわかります。年次が増すごとに、最終プロダクトと自身の作家性の折り合いを考えバランスを取りながら制作する難しさを感じるのと同時に、視野の広がりや複合的な感覚が磨かれていくことがよく理解できます。こうした課題が、有松や尾州とのプロジェクトにつながっていくことも合点がいくものです。

 工芸リレーで、美術領域の工芸コース(陶芸・ガラス)、メタル&ジュエリーデザインコース、テキスタイルデザインコースの展覧会と講評を見てきましたが、すべての領域で、自由にならない素材と相対すること、制作に根気の要る作業が必要、という共通点があります。考えを作品に落とし込むプロセスで、充分に時間が取れないことや技術的に至らず考えていることがそのまま実現できないこともままあります。自身の身体や精神の状態がそのまま作品に反映されてしまう。それらを難しいと考えるか、作品の面白さや深みとするか、こうした捉え方も工芸の面白さだと感じさせました。あらゆる領域でデジタル化が進む現代ですが、手を動かしながら考えることの意味をあらためて問い直す展覧会でした。

講評会風景

2年生作品

3年生作品

4年生作品

※作品は動画内でもご覧いただけます。