工芸分野の美術領域・デザイン領域連携授業 「工芸制作」講評会

 デザイン領域 メタル&ジュエリーデザインコース、テキスタイルデザインコースと美術領域 工芸コースでは、工芸分野として領域横断連携を進めています。2021年度では初めてデザイン領域・美術領域の1年生向けの共通授業「工芸制作」を実施しました。工芸制作では、これまでメタル、テキスタイルに触れたことのない学生を対象に、それぞれの基礎を学び、その技法を使い創作を行う実習です。テキスタイルでは草木染めを中心に、メタルでは溶接など基本的な技法を学び鉄と真鍮を使った創作を行います。
 1月12日、この日は工芸制作の最後の講義。授業で制作した作品、手ぬぐいと実際に身につけることのできる王冠の講評会が開かれました。講評は、授業を担当したデザイン領域 共通科目等担当 秋保久美子 非常勤講師、メタル&ジュエリーデザインコース 飯田祐子 非常勤講師が行い、扇千花 教授、米山和子 教授も教室を訪れ、講評会の様子と学生らのフレッシュな作品を鑑賞しました。

 講評会は、制作した手ぬぐいと王冠を手にひとり5分程度のプレゼンテーションを行い、担当した講師が、テキスタイルとメタル、それぞれに講評を行いました。手ぬぐいは、草木染め(古くから行われている染色方法で、植物の花、葉、茎、根などを煮て染料を煮出し、生地を入れて着色し、媒染剤(鉄・アルミニウム・銅などから作る)に浸けて色を定着させる染色法)を中心に、絞りを加えたり、形地染め(たたき染め、植物の葉などを生地に載せ木槌などで叩いて色と形を染みこませ、媒染剤で定着させる草木染めの一種)を用いて、仕上げました。染色の材料は、身近な植物からもできるということを体験するため、学生らが持ち寄ったものから制作しますが、校内や家の周りの雑草から、家にある食材、コンビニで販売されている冷凍フルーツなど、学生らしいユニークな発想で持ちこまれたものがいっぱい。秋保講師からは「自分にはない発想、あらためて自分がとらわれていたかを思い起こしました」と言わせるほどのバリエーションでした。草木染めは、合成染料ほど鮮やかな色が出るわけではありませんが、その分学生らは、媒染剤を変えたり何度も染め直すなどして思い描く色を出そうといろいろと試したことがよくわかり、授業で想定していた以上に染めの魅力に没頭したことが伝わってきます。コーヒーや黒豆、カレー粉など素材の説明を聞くと、なるほどと思う色合いでした。
 メタルの王冠は、鉄をベースに針金を用いて立体感を作り出し、真鍮で金色を加えるなどさまざまな工夫が凝らされています。スポット溶接も行い、本格的な金属加工です。作品には、作者のイメージが明確に反映されており、これも興味深いものでした。王冠という言葉からロールプレイングゲームやファンタジーを連想するもの、立体造形の考え方が面白く複雑な形のもの、自分のイメージに近づけるため時間を労したことが伝わってくるものなど、力作が揃いました。飯田講師からは、立体制作のポイントとなる構造についてのコメントが多く聞かれました。中には、構造体を持たずバネ状になっていて頭に被って初めて成立するような作品もあり、やはり「自由な発想に刺激を受けました」との言葉がありました。
 どの作品からも何か工夫をしようと試したことが感じられ、また、充分に時間をかけて作られていることが伝わってきました。学生らの作品を見た扇教授、米山教授からは、しっかりと課題に取り組んだ学生はもちろん学生らに工芸の魅力を充分に伝えた両講師を賞賛。今後、どのコースを選択するにせよ工房は自由に使うことができ、工芸を作品に取り入れ幅広い作品を作っていって欲しいと激励しました。