【工芸から】グリーンシティプロジェクト 室内展示、講評会を開催

 「グリーンシティ」は、本学がゲストや教職員のために用意している宿泊施設。東キャンパスと西キャンパスの中間地点、徳重・名古屋芸大駅近くにあるマンションで、その一室となる4LDKの部屋です。建物は1974年に建築と、少々、年季の入ったもの。簡素で味気のない部屋にアートとデザインの視点を取り入れ快適に過ごすことのできる空間にしようというのがこのプロジェクトです。工芸分野(美術領域 工芸コース(陶芸・ガラス)、デザイン領域 テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーデザインコース)の学生が中心となり、部屋のあらゆる場所に作品を設置、展示します。今年の公開日は、2022年9月14日(水)~16日(金)の3日間。今回で3年目となるこのプロジェクトでは、これまでに作られたカーテンやクッション、アメニティボックスなどの作品が昨年の展示からそのまま部屋で活用され、それらとあわせて今年の作品が展示されることとなりました。
 プロジェクトには美術領域から9名、デザイン領域からは6名の学生が参加。食器やカーテンといった生活に欠かせないものから、見て楽しく心を和ませるような作品、一室全体を展示場所に見立てたインスタレーション作品などが展示されました。初めて陶芸に挑戦した学生もおり、初々しい作品も並びました。
 作品のほか、メタル&ジュエリーデザインコースは「美とは」というテーマで、何かを作って置くだけが美ではなく、取ったり片付けたりする事で場が美しくなる事を身体を通して理解するため、作品の搬入前に部屋を清掃し、金属技法の「研磨」という技術で玄関ドア、キッチン、ベランダ、リビングドアなどを磨き上げました。以前から綺麗だったように見え気がつく人はいませんが、空間が俄然変わったのは、掃除をした本人がわかります。外部展示の第一歩、場をまず美しく整えることは地味だが重要だと学びました。

 初日の14日には、メタル&ジュエリーデザインコース 米山和子 教授、工芸コース 中田ナオト 准教授、テキスタイルデザインコース 貝塚惇観 講師、工芸コース 田中哲也 非常勤講師により講評会が行われました。学生がそれぞれ作品について簡単にプレゼンテーションを行い、意見を交わしました。
 講評でテーマになったことの一つが展示の方法について。考え方としては、もともとの部屋の壁や部屋にあるものを利用して展示する方法、そうしたものと切り離して自分の作品の世界をしっかりと構築して見せる方法の2種類があります。実際の生活空間に作品を置くことの難しさについて考えさせられました。本来なら壁に掛けて飾ることを想定して作られていたものの壁に釘が打てず床に置いた作品や、作品空間の中に前回から置かれている他の作品が入り込んだり日常の家具が入り込むことで意味合いが変わってしまうものもあり、展示の難しさを感じます。壁への展示では釘が打てなくてもワイヤーで吊す方法があることや、家具が作品とそぐわない場合もテーブルクロスなどを用意することでより良く見せることができるなど講師陣からアドバイスがあり、実際に展示をすることで多くの学びがありました。美術館で展示する場合でも臨機応変に対応する必要があるなど、講師それぞれの経験に基づくアドバイスはなかなか聞く機会のないもので学生にとって意義のあるものになったと思われます。
 また、食器や花瓶、鉢などの展示では、作品と雑貨、作品と実用など、美術と実用の道具との狭間にある「工芸」について、改めて考える機会にもなり非常に興味深い講評会となりました。今年の作品の一部もそのまま部屋で使われることになり部屋を彩ることになりますが、来年度は他の作品とのバランスも考えて作品を作る必要も出てきそうに感じます。日常の場と作品との関係性、また自分の作品と他の作品をどう考えるか、さまざまな要素について考えさせられる展示となりました。
 中田准教授は、「もともとこのプロジェクトは、5年は続けたいと考えて始めました。何もなかった頃を思えば、芸大の宿泊施設らしくなってきたと思います」と語りました。今後、この部屋がどんなふうになっていくのか、楽しみになる展示となりました。

作品

講評会