本学OB、特別客員教授 映像作家OSRIN氏による特別講義を開催

 2022年10月5日、西キャンパス B棟大講義室にて、本学 デザインマネジメントコース(現・ライフスタイルデザインコース)のOBで、今年度後期からの特別客員教授に着任した河内雄倫(OSRIN)氏をお招きし、特別講義を行いました。
 OSRIN氏は、再生回数4億回を上回るKing Gnu「白日」のMVをはじめKing GnuのほとんどのMVを手がけ、King Gnuの常田大希さん率いるクリエイティブ集団「PERIMETRON(ペリメトロン)」の一員として活動。現在では映像作家、グラフィックデザイナーとして、millennium parade、Mr.Children、GLAY、櫻坂46など数々のアーティストのミュージックビデオやアートワーク作品を手がけています。学生からの注目度も高く、ライフスタイルデザインコース、映像制作に大きく携わる先端メディアコースの学生はもちろん、東キャンパスから音楽領域の学生も大講義室に詰めかけました。
 講義は「OSRINとギャランティー」ということで、映像制作にかかる制作費と作家のギャランティーはどうなっているのか、普段はなかなか知ることのできない現在の制作現場で取り交わされているお金についてのお話です。

 OSRIN氏は、卒業後は半年間フリーターで映像制作活動を行い、秋に上京して映像制作会社に就職。3年間勤め、2016年にクリエイティブレーベル PERIMETRONを立ち上げ活動を開始します。PERIMETRONは「GIVE US MONEY WE ARE COOL」というスローガンを掲げ、お金と作品クオリティに重きを置いていることを窺わせます。
 2016年から携わってきた仕事のリストを表示すると、学生にどれくらいの制作費とそのフィー(作業報酬)だったかを問いかけます。学生から、あれはいくらだったんですか? と手が上がると、その金額を赤裸々に明かします。もちろん、ここに記すことはできませんが、安い金額に学生からはどよめきが起こります。というのも、まだ実績のなかった2019年までは赤字になる仕事でも引き受け、実績を積み重ねることと自分たちの作りたいものを作っていたと説明します。
 制作予算の説明として、もちろんクライアントによって変動あるかと思いますが、TOTAL BUDGET(制作総額予算)のうち、ざっと半分が広告(PR)に使われ、半分がPRODUCTION(制作)に使われます。PRODUCTIONのうち、日本の広告会社の場合コミッション制(制作費のうちの10~15%がギャランティーとなります)を取る場合が通常ですが、PERIMETRONではコミッション制を採用せず作品クオリティを上げるために予算を使い切り、ときには持ち出しがおきてもいとわないスタンスで制作を行ってきたといいます。日本の制作現場では、こうした方法でクオリティを担保する制作会社が存在せず異色の存在となりますが、制作費以上の映像を制作できるクリエイターとして認知されていったといいます。そして、現在では、GIVE US MONEY の言葉通り、しっかりとお金を取って高いクオリティの映像を制作することができるようになったと、自分たちのやってきたことを説明しました。
 印象的なのは、OSRIN氏の人を魅了する語り口。シビアなお金の話を、現在の広告業家や制作の世界を学生にわかるように解説しつつ、ユーモアを交えながら聞かせます。学生からの質疑応答でも、年齢が近いこともあってか積極的に手が上がり、フランクな質問が飛び交いました。卒業後、東京へ行って1ヶ月間ニートだったことや学生時代に遊びの経験が今の映像に生きていることなど、ざっくばらんな語り口が学生らの気持ちをつかんだようでした。
 「夢もあるし、夢がないと感じるかもしれない。でもこの業界を変えていけるのは若い世代」と学生にエールを送りました。
 OSRIN氏を学生時代から知るライフスタイルデザインコース 萩原周教授からは「ライフスタイルデザインコースを作って本当に良かったと感じています。こんなに学生からのレスポンスがいい特別講義も珍しいほど。本当に良かった」とねぎらいの言葉があり、特別講義は終了となりました。
 この特別講義は、第2回として2022年12月を予定しています。映像制作の実践的な内容になるのか、非常に楽しみです。