テキスタイルデザインコース、村瀬弘行氏、古川紗和子氏をお招きし、有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクトほか、特別講義を実施

 デザイン領域 テキスタイルデザインコースでは、2022年12月21日、SUZUSAN クリエイティブ・ディレクター 村瀬弘行氏、ミラノ在住のフリーランスデザイナーの古川紗和子氏をお招きし、「有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクト」で制作した商品とブランドの講評会を開催、加えて、バッグデザイナーとしてVERSACE、 BOTTEGA VENETAといったラグジャリーブランドで活躍してきた古川さんのお話を伺いました。
 「有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクト」は例年、テキスタイルデザインコース2年生が取り組んでいる課題で、有松絞りを使ったオリジナルデザインの手ぬぐいを制作し、毎年6月に行われる「有松絞りまつり」の会場で販売するというプロジェクト。商品のブランドを考案し、ブランドコンセプトに基づいて商品を企画、制作、パッケージやショッパーバッグも制作し実際に販売する店舗もプロデュースする実践的な演習です。例年、企画の最初の段階から村瀬さんに見ていただいていますが、今回は完成した商品を古川さんにも見ていただくことになります。

 学生らは2つのグループに分かれそれぞれにブランドを設定しており、今年は「永縁」(えにし)と「IRUMATS」の2つのブランドとなりました。それぞれにブランドのイメージを決めるために制作したムードボードと想定する顧客3名を具体的に記したバーチャルカスタマーのボードを掲げ、配色とデザインコンセプト、包装とショッパーを展示、プレゼンテーションを行いました。
 「永縁」は、伝統と人のかかわりを感じさせるレトロなイメージで、カラフルでありながらどこか懐かしいイメージです。想定する顧客も美術館巡りが趣味の若い女性や、手芸やパッチワークが趣味の60代の女性などを想定し、ブランドイメージに沿ったものになっています。クラフト紙を使ったショッパーには、レーザーカッターを使って精密にブランドロゴが切り抜かれており、凝った作りに村瀬さん、古川さんからも思わず感心する声が上がっていました。販売時に着用するTシャツとちょうどスマートフォンが入る大きさのポシェットには、古川さんからキットとして販売すると良いのでは、との評価をいただきました。
 「IRUMATS」は、有松(Arimatsu)と祭り(Matsuri)のアナグラムから作られた名前で、伝統的でありながらもどこか都会的な新しさがあることがコンセプトです。バーチャルカスタマーにアメリカ人が含まれていることはこれまでになく、時代性を感じます。学生らは板締め絞りの幾何学模様の連続性と不思議さに感動し、それをデザインに取り入れたとのこと。模様が不揃いだったり色の滲みや淡さが絞りの魅力といえますが、グラフィカルでクッキリしたデザインを取り入れており新鮮さを感じさせます。学生らは、Tシャツをサンプルで作っていましたが、B反(商品にできない外れ品)を使い、雑貨を生産販売したいと意欲的です。村瀬さんからは、「永縁」とはまた異なったコンセプトでファッションのテイストを感じユニーク、選ぶ楽しさがある、との言葉をいただきました。
 講評としてお二人から、「どちらのグループも非常にクオリティが高く、販売の場を想定し衣装や小物を作っていることも良い、どちらもとても良いブランドになっている」と評価をいただきました。加えて、「アパレルとしてやっていくには、商品力とブランド力、さらに販売力の3つが重要。ブランドを後押ししてくれるのは販売力であり、ここまでで商品の魅力は十分できているので、ここからは販売をどうするか考えていって欲しい」と締めくくりました。

 講義の後半は、古川紗和子さんのお話。長岡造形大学テキスタイルコースを卒業後、イタリア ミラノのドムスアカデミー マスターオブファッションコースで学び、DIOR HOMME、GIANFRANCO FERRE、VERSACE、BOTTEGA VENETAでバッグデザイナーとして働くことになった経緯、さらに8年間勤めたBOTTEGA VENETAでの勤務の様子や、通常では見ることのできない資料室の様子、デザインスケッチなど貴重な写真とともに説明していただきました。第一線で活躍するデザイナーの言葉に、学生らは興味津々、熱心に聞く様子が印象的でした。古川さんは「学生時代はツモリチサトやマルニなどのファッションが好きで、バッグのデザイナーになるとは考えていなかった。ドムスアカデミーで教わる先生が現役で働くバッグデザイナーでその道に入ることになり、運や縁がとても大事」といいます。二十歳の頃は海外のブランドで働くと考えたこともなく、今、学生が考えていること以上のことができるはす、夢を持っ てやっていって欲しい、とエールを送りました。
 最後に、村瀬さんと古川さんの対談でSUZUSANから発売される古川さんデザインのバッグの試作品をお披露目し、学生から質問に答え交流を楽しむなど、盛りだくさんの特別講義となりました。

永縁

IRUMATS