ヴィジュアルデザインコース 名古屋の魅力を発信する「ナゴヤ展」、特別客員教授 原田祐馬氏による講評会、特別講義を開催

 2023年1月31日(火)~2月6日(月)名古屋城本丸御殿 孔雀之間にて、ヴィジュアルデザインコースによる展覧会「ナゴヤ展」を開催しました。ナゴヤ展は、例年ヴィジュアルデザインコース3年生が取り組んでいる展示で、名古屋城と長者町を中心とした名古屋の街でフィールドワークを行い、魅力を発見し発信するための作品を企画、制作します。フィールドワークと制作には、特別客員教授 原田祐馬氏、名古屋城、錦二丁目エリアマネジメント株式会社、錦二丁目まちづくり協議会など様々な方々にご協力いただき、たくさんの方々と学生が出会うこともこの展示の大きな特徴です。街の歴史と現在を学び、デザインがどんな役割を果たせるのかを考え作品に落とし込む非常に実践的な内容です(展示と作品はこちらからご覧いただけます)。
 展示に伴い、2023年2月2日(木)の午後、錦二丁目エリアマネジメント株式会社が運営するレンタルスペースのスペース七番にて、講評会と原田氏による特別講義が行われました。

 講評会は、一般の方にも公開する形で行われ、錦二丁目エリアマネジメント株式会社 代表 名畑恵さん、錦二丁目まちづくり協議会理事であり下長者町町内会長 滝一之さん、デザインプロダクション 株式会社クーグート 代表取締役 髙橋佳介さんらも参加。賑やかな講評会となりました。24名の学生がひとり3分程度スライドを使って作品をプレゼンテーションを行いました。人数が多いため質疑応答はできませんでしたが、しっかりとした案が多く学生それぞれに作品への思い入れがあるように感じられました。参加者とも話が弾みそうで、本当に残念です。スペース七番の階下には、同じ錦二丁目エリアマネジメント株式会社が運営する喫茶店があり、そこで実際に考えた作品のサービスを提供した学生もおり(新西涼さん 長者町文庫、丹後栞さん sukimatcha)、単に企画を考えるだけでなく実際にサービスを提供することで得られたものはとても大きいように感じました。原田さんからの講評でも「フィールドワークで街を掘ることを行い、そこから学びがたくさんあったことと思います。アウトプットを考えるだけで終わらせず、次に誰に使ってもらうか、実行に移していくことにチャレンジして欲しい。そこからデザインが変わる可能性もある。実動した学生には、フィードバックがあったと思いますが、それは非常に良いことだと思います」と評価をいただきました。名畑さんからは「どれも意欲的な作品でとても楽しかったです。いろいろな見方を提起してくれたように思います。普段、大切に思えないところから見方を変えることで魅力が見つかることを感じます。とくに古いビルから音楽を作った提案には驚きました(瀧下茉衣子さん 唱和ビル)。お店同士の交流の必要性を感じてますが、それが福生院なんだと気付かされたこともとても良かったです(鈴木晴子さん きんちゃく御守ぷろじぇくと)。テーマとして扱っているものは無くなってしまいそうなものが多く、何が大切なものなのかを提起してくれているように感じました」とコメントをいただきました。高橋さんからは「時間がないなか、よくできていると思います。隙間や会所、ちょっとしたことから、街の特徴をよく捉えていると思います。いろいろな気付きをいただきました」。ほかにも「リサーチして課題を見つけアクションにつなげている。発注する側としては誰がニーズを持って、誰が求めているかまで考えると将来へつながっていくと感じます」(名古屋城 吉田さん)、「若い人たちの意見が聞けて参考になった」「自分はこうしたいという意欲があっての提案、ぜひ継続して欲しい」「今すぐにでも実行できるアイデアがいくつもあった、やってみたい」など、講評会に見学に訪れた方からも活発な意見が聞かれました。

 後半は、原田さんの講演です。自身が、デザインの世界へ入ったきっかけからお話しいただきました。学生時代、インド料理店でアルバイトしていたところ、ある有名なデザイナーの行きつけのお店だったそうで、インド人オーナーに「建築を勉強しているなら、あの客さんにあいさつしてきなさい」と言われ、「その人のことを知らない、話せない」と返したところ、勉強不足を指摘されショックを受けて建築やデザインの勉強に打ち込むことなったといいます。その後、現代美術家の椿昇さんとヤノベケンジさんと出会いアシスタントとしてかかわるなか、プロジェクトそのものを一緒に作っていくという考えに至ります。その後、関係性を構築していくことや、そのプロジェクトの本質を言語化してデザインに落としていくような仕事を続け、現在につながっていきます。こうした背景に加え、これまでにやってきたプロジェクトと今も進行している案件について数多く説明していただきました。広島県の砂谷牛乳の「はるとなつ牛乳」「あきとふゆ牛乳」、大阪 服部天神宮の靴紐に通すお守り「足守」、東大 異才発掘プロジェクト「ロケット」の活動の記録を集めた「学校の枠をはずした」という書籍、URとの団地の外壁を塗装するプロジェクト、日本財団の子どもの立場から里子を支援するためのキット「TOKETA」、佐賀県庁、ルアー釣りなどなど、数多くの仕事が紹介されました。いずれの案件で共通するのが、人との関係性を作り本当に課題になっていることを見つけ出し、単にアウトプットするだけでなくフィードバックを受けてブラッシュアップしていくこと。講評でも、アウトプットしてから続けていくことが大切と何度も話されたことを実践していることがよく分かります。オーダーに応えるだけが仕事ではなく、それ以上により良くしようとする姿勢は見習うべきものであり、大いに刺激を受ける講演となりました。
 最後に、則武輝彦 准教授から「ナゴヤ展では、プロジェクトにたくさんの人がかかわっていることに気付いて欲しいと考えていました。制作した作品は人のためを考えて作ったものかもしれませんが、たくさんの人とのかかわりでできたものであり、また、そこにたくさんの人が入ってきてくれるものです。そうしたつながりがデザインの豊かな部分ではないかと思います。この経験を忘れずにそうしたことも考えて欲しいと締めくくり、講評会は終了となりました。

名古屋城本丸御殿「ナゴヤ展」

スペース七番「プレゼンテーション・講評会」

スペース七番「「原田氏 特別講義」