特別客員教授 宮川彬良氏の公開講座「クインテットの舞台裏」を開催

 2023年6月22日(木)、特別客員教授 宮川彬良先生による特別公開講座「クインテットの舞台裏」を開催しました。「クインテット」はNHK教育テレビで放送された子供向けの音楽教養番組。2003年4月7日から2013年3月30日までの間、平日の午後5時50分から放送された10分間の番組で、多くの学生も子供の頃に親しんだ、学生の世代にとって思い出深い番組です。
 今回の特別講義では、そのクインテットの制作のいきさつをお話しいただきました。講義は、先生方と学生(Tub. 水野はるかさん)によるテーマ曲“ゆうがたクインテット”の華やかな演奏で始まりました。

 番組の構想は、放送が始まる1年前、2002年4月から始まったといいます。プロデューサー 近藤康弘氏(「おかあさんといっしょ」を担当、プロデューサーとして「ハッチポッチステーション」を制作、「クインテット」ではフリーのプロデューサーとしてかかわる)、脚本・構成を担当する放送作家 下山啓氏、そして宮川彬良氏の3人で8ヶ月もの間話し合いが行われ、どんな番組にするか、なにを伝える番組なのか、といった番組の骨子が決められたといいます。
 このとき、ポイントとなったのが“世界観”。演奏する音楽や番組の構成など具体的な部分はすぐに思いつきますが、それよりもなぜ登場するキャラクターたちが演奏するのか、なぜその楽曲なのか、必然性がしっかりしていないと、番組そのもののクオリティに大きく影響することになり、その要となる“世界観”が必要だと説明します。「楽器を練習することは義務や命令ですることではなく、それこそが遊びであり、音楽そのものが遊ぶことである」ということを伝えたい、そのために自身も含め登場するキャラクターはすべて“精霊”だという案が出てきたといいます。そして、番組の中では語られませんでしたが5名のキャラクターはすでに亡くなっている設定で、生まれた町や年齢もばらばら、しかし、かつては音楽家やその卵であり自分の歌いたかった歌を歌い演奏する、全員、もう一度音楽を楽しみたいという共通の思いを持った魂、という世界観を作り上げます。そう決まると、あとはすべて人形のデザインも、一人一人のキャラクターも、番組の構成も、なにもかもがすんなり決まったと説明します。
 重要なこととして、音楽に限らずすべての芸術は、人間の生命につながっているのでは、と宮川氏はいいます。「命は誰もが持っているもので、一番大事で、一番摩訶不思議で、そして一番エネルギッシュなもの。僕の持っている世界観はすべて命につながるものです」と述べ、今後、学生らもなにかを創作するときには参考にして欲しいと説明しました。

 話を終えたあと、クインテットの1回分、10分間を全員で視聴し、番組のクオリティの高さと宮川氏の想いを再確認しました。最後の質疑応答では、さまざまな質問が挙がりました。遠く、長野から見に来られた方もおり、クインテットの思い出を語り合ったり、収録での苦労や番組内で使われた音楽についてなど、番組ファンとの交流会のような和やかな時間となりました。
 音楽と、その裏側にある想いと、そしてユーモアにあふれる、素晴らしい講義となりました。

今回の講義で紹介された単行本「アキラさんは音楽を楽しむ天才」は、こちらでお求めいただけます〈Amazon販売ページ〉