名古屋芸術大学 ALPs × SLOW ART LAB「Edible Classroom 食の小さな循環 ~それぞれの農と小さな道具たち~」 開催

 デザイン領域では、2024年3月に名古屋市栄にオープンしたアートセンター「SLOW ART CENTER NEGOYA」と連携し、2024年10月20日(日)~27日(日)「Edible Classroom 食の小さな循環 ~それぞれの農と小さな道具たち~」と題し、名古屋近隣の農業にかかわる6組を取材、それぞれの農のありかたや食べる(料理する)人とのかかわりを調査、インタビューを冊子にまとめ、農をめぐる関係性を図示し使われている道具などを展示しました。
 展示にあわせ2024年10月26日(土)には、食育活動を推進するエディブルメディア代表の冨田栄里さんをお招きし、エディブルメディアの取り組みや「持続可能な生き方のための菜園教育—エディブル・エデュケーション」の創造と発展をミッションとするエディブル・スクールヤード・ジャパンの活動についてお話しいただきました。
 Edible Classroomでは取材・調査のほか、6月からSLOW ART CENTER NEGOYAの屋上で野菜作りも行っており、それらの報告も行われました。

 担当するデザイン領域 小粥千寿准教授は、学生が食の生産者へのインタビューを通じて食の循環やデザインの役割について考えるプロジェクトと説明し、フィールドワークで実際に現場に出て人々と触れ合い生の声を聞く経験をすること、食への理解として小規模な生産者との交流を通じて生産から消費までの過程を深く理解し食の循環の大切さを学ぶこと、さらにデザインの役割として食に関する問題を解決したり新たな価値を生み出したりできることを実感することの3点を目標にしたといいます。最終的な展示の型式や道具に着目することなどはインタビューを重ねる中で次第に見えてきたもので、リサーチをしながらアウトプットを少しずつイメージしていく過程を実体験を通して学べたのでは、とプロジェクトをまとめました。
 プロジェクトに参加、取材とリサーチを行った、ライフデザインコース3年 鴨下ゆうさん、長岡知里さん、メディアコミュニケーションデザインコース 3年 伊藤怜奈さんに取り組みと感想を伺いました。
 「初めに取材が中心となると聞き、取材やリサーチみたいなことがやってみたかったので、軽い気持ちで参加しました。私は、普段スマホやモニターを見てばかりの生活をしていますが、家の周りや身近な場所で畑をやっている人がいます。これまでそれほどかかわりを持っていませんでしたが、とても興味がわきました。自分のことは自分でやるみたい考えがありますが、突き詰めると自分の食べるものも自分で作る、自分の生活を考えることに食べることも大きくかかわっているんだなとあらためて思いました。土に触ることはこれまでありませんでしたが、そうしたこともいいなと思うようになりました」(鴨下ゆうさん)。
 「メディアコミュニケーションコースではなかなか取材するような機会は少ないと思い、私もフィールドリサーチをやりたいと参加しました。リサーチを始め、最初の頃は最終的にどんなアウトプットをすればいいか何も想像できないままでした。インタビューされる人も何が聞きたいんだろうというのもありますし、自分たちも何を聞き出せばいいのか手探りで、いろいろ考えながら進めて来ました。皆さん本当にいっぱいお話してくださって、まとめるときに広がりすぎたかなという反省があり、どの部分をクローズアップするかで苦労しました。プロジェクトを通して、野菜自体はすごく身近にあったんですけどその先の野菜育ててる人の考えに触れていなかったことに気が付きました。野菜や野菜作りを身近に感じるようになりました」(伊藤怜奈さん)。
 「私は1年生の頃からフードドライブのボランティアに参加していて、 食に関するデザインとそのリサーチだと聞き、興味もあるしやってみたいと参加しました。取材することは初めてでしたが、取材に協力的な方がすごく多くて本当に助かりました。道具の展示を考えたのは、江南市のharutona farmに伺ったとき、林さんがキュウホーという除草器具がすごく良くてもっと広めたい、とおっしゃっていたのがきっかけです。小学生の頃は、芋掘り体験や野菜を育てたりすることを楽しく感じていたのに、中学、高校と上がっていくと農業イコール汚れることや虫がイヤみたいなことになっていくのはなぜだろうと考えました。農業にかかわる人に会い、実際にやってみると楽しいんですよ。一度離れて、大人になったら一周まわって楽しくなった、そうした道のりも楽しかったなと思います。たぶん、農業大学や農学部みたいに農に近い立場じゃないから気が付けたのではと思います。自分のステップアップにもなったように思います」(長岡知里さん)。
 屋上菜園の野菜作りを行ったライフスタイルデザインコース 2年生の窪田晴さん、吉田優之介さんは、「うまく育っていくことのことに対して幸せを感じました。なんか嬉しいんですよね、ちゃんと育ってくれるのが。今、パプリカとかいっぱいなってますよ」(吉田優之介さん)、「野菜を作ったことなかったので、新鮮な感じです。普段スーパーで買ってたものがこうやって育つ、実際に食べることができることも面白いなって感じました」(窪田晴さん)と充実した表情。

 トークイベントでは、エディブルメディア代表の冨田栄里さんに小粥千寿准教授がお話を伺う型式で行われました。
 エディブル・スクールヤード・ジャパンの活動として米国カリフォルニア州バークレーにある「エディブルスクールヤード」の取り組みを基にして日本の学校で菜園作りや有機栽培の給食導入を支援していることを説明していただきました。また冨田さんは、ある参加者がバークレーで食育関連の活動に興味を持ち、映画『エディブル・シティ』を日本に紹介・翻訳する活動をしたいということで協力して始めたことなど、映画配給の経緯についてお話しいただきました。日本での上映は特にコロナ禍で再注目され、食の重要性や市民主体の持続可能な生活への関心を高める役割を果たしているといいます。映画やワークショップを通じ、地域のコミュニティガーデンでの野菜栽培や収穫を体験しながら、食の循環を学ぶ機会を提供し、学生への映画上映などで食育が次世代の教育にどう役立つかなどお話しいただきました。
 最後に、デザインの力を活用し食や環境に関する意識を向上させることにも言及され、どんなメッセージを伝えたいかデザインというスキルで何を発信できるか、社会にかかわることを大事に考えて欲しいとまとめました。

展示

屋上菜園

トークショー