企業研修講話「オートモーティブデザイン デザインリテラシー」
株式会社キリックスグループを招き、カーデザインの視点から“車を見る力”を学ぶ

 2026年3月6日(金)午前10時30分より、西キャンパスX棟201教室にて、株式会社キリックスグループの社員の皆さまを招いた研修講話を開催しました。代表取締役会長 山口茂樹氏をはじめ、社員37名が参加。本学と企業が連携して行う初めての取り組みです。
 講師を務めたのは、デザイン領域カーデザインコースの小林正彦教授。講話は「オートモーティブデザイン デザインリテラシー」をテーマに、約1時間半にわたり行われ、カーデザインの基本的な考え方から世界の自動車デザインの潮流まで、実務経験に基づく幅広い内容が紹介されました。
 株式会社キリックスグループは、愛知県を拠点にトヨタ系ディーラー事業を中心に展開する自動車関連の総合企業グループです。トヨタモビリティ東名古屋株式会社ではトヨタ車・レクサス車の販売やメンテナンスを行い、新車・中古車販売を含むディーラー事業を展開しています。さらに、キリックスリース株式会社による法人向けカーリース事業では、車両の調達から管理、メンテナンスまでを一括して担う車両管理アウトソーシングを提供。加えて、損害保険・生命保険代理店としての保険サービスや、自社工場による車検・点検・修理などのメンテナンス業務など、幅広い自動車関連サービスを手がけています。

 冒頭、來住学長は挨拶の中で、小林教授が長年カーデザインの現場で培ってきた知見を学生に伝えていることに触れ、「その考え方を企業の皆さんにも共有できることをうれしく思います。今回が初めての試みですが、ここから新しい連携が生まれることを期待しています」と述べ、講話への期待を語りました。

 小林教授はまず、カーデザインを理解するための「デザインリテラシー」という考え方を紹介しました。金融リテラシーのように、デザインにも“理解する力”が重要であり、車を扱う仕事に携わる人がその視点を持つことで、商品を見る目が大きく変わるといいます。
 車のデザインを読み解く基本構造として、「Bone(骨格)、Basic Form(基本形)、Muscle(筋肉)、Graphics(グラフィック)」という四つの要素が示されました。まず骨格となるプラットフォームやプロポーションが決まり、その上に基本的なボリュームが形成され、さらに筋肉のように面の抑揚が与えられ、最後にグリルやランプなどのグラフィックが加わるという順序でデザインは成立します。この構造を理解することで、車の造形の質やブランドの特徴がより明確に見えてくると説明しました。
 また、小林教授はカーデザインを単なる工業製品の造形としてではなく、建築や家具などのデザインとも深く関係するものとして捉えています。例えば、建築の流行や空間の考え方が車のフォルムにも影響するなど、デザイン分野の相互関係について具体例を挙げながら紹介しました。

 講話後半では、キリックスグループから事前に寄せられた三つの質問に対し、小林教授が自身の視点から回答しました。その一つが「ドイツブランドの車はどう見えるのか」という問いです。小林教授は、ドイツ車について「パフォーマンス、ドライバビリティ、安全性を含むエンジニアリング、質感などが高次元でバランスしており、多くの人に憧れを抱かせる存在」と評価する一方で、技術的な複雑さや高品質を保つためのメンテナンスコストの高さなど、消費者を選ぶ側面もあると説明しました。
 さらに、日本のプレミアムブランドであるレクサスについては、「欧州プレミアムブランドとの比較において同等、或いはそれ以上のプレステージ性がありながら、なお圧倒的な品質と信頼性を持ち、故障が少ない“スマートな選択”として評価されている」としながらも、「今後はもう少し“センシュアル(sensual:単に露出が多いセクシーさとは異なり、上品で知的な色っぽさや、健康的でナチュラルな魅力)”が加わるとさらに良くなるのではないか」と独自の見解を示しました。
 このほか、欧州車と日本車のプロポーションの違い、ホイールやボディラインの見え方、ブランドごとのデザインシグネチャーなど、車を観察する際の具体的なポイントが数多く紹介されました。
 受講した社員の皆さんは、自動車販売やサービスに関わる業務に近い内容であったこともあり、真剣に聞き入る様子が印象的でした。講義中には熱心にメモを取る姿も多く見られ、デザインの視点から車を理解する新しい学びの機会となりました。
 小林教授は最後に、「これからはEV化や自動運転の進展によって、車は単なる移動機械ではなく“体験の空間”へと変わっていく」と述べ、デザインが担う役割はますます広がるとの展望を示しました。

 講話終了後には、西キャンパスのクレイ・プラスチック工房を見学。実際にカーデザイン教育で使用されるクレイモデル制作の環境を見学し、参加者はデザインの現場を体感しました。
 今回の研修講話は、企業の実務と大学の教育・研究を結びつける新しい試みとなりました。自動車販売の現場で働く参加者にとっても、車を「デザイン」という視点から読み解く貴重な機会となりました。産学連携の新たな可能性を感じさせる一日となりました。