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人間発達学部特別公開講座「世界とつながって教育のあり方を考える-韓国の教育の現状とミラル・トゥレ学校」が開催されました

特別公開講座の主旨について述べる鎌倉博准教授 特別公開講座の主旨について述べる鎌倉博准教授
講師のミラル・トゥレ学校チョン校長 講師のミラル・トゥレ学校チョン校長
ミラル・トゥレ学校における生徒たちの活動を映像で紹介 ミラル・トゥレ学校における生徒たちの活動を映像で紹介
同上(学校で流通しているお金) 同上(学校で流通しているお金)
同上 同上
ミラル・トゥレ学校に勤務している4人の先生方 ミラル・トゥレ学校に勤務している4人の先生方
午後の特別授業で、熱心に話を聞く学生たち 午後の特別授業で、熱心に話を聞く学生たち

2016年1月21日(木)、本学東キャンパス1号館で、人間発達学部主催の「世界とつながって教育のあり方を考える-韓国の教育の現状とミラル・トゥレ学校」が、午後には学生向け特別授業として、夜には一般参加者向けの特別公開講座として開催されました。

初めに、この公開講座を企画した人間発達学部准教授の鎌倉博より、開講の主旨や講師との関わりまた講師の紹介などがありました。「わが国以上受験競争が厳しいと云われる韓国にあって、1学級を少人数にしたアットホームな教室、愛を育む情操教育、自然豊かな立地環境を生かした教育、子どもの自治と自国・世界の文化を大切にする教育を進めている学校があります。それがソウル市近郊にあるミラル・トゥレ学校です。日本・中国・モンゴルと、次々と国境を越えた学校間交流も実現させ、子ども同士の交流・教育文化交流の架け橋となっています。その学校を立ち上げたチョン校長をお迎えして、韓国で行われている教育の姿、新たな学校を立ち上げた経緯、なぜ、今韓国で話題になっているかなどをお話しいただき、これからの教育のあり方を考える機会にしたいと考えています。私とチョン校長とは私の前職時代からの知り合いで、その関係で今回本学にお招きしました」。

続いて、人間発達学部長星野英五より挨拶があり、講座がスタートしました。

講座では、最初にチョン校長から自己紹介とミラル・トゥレ学校設立の理由についてお話がありました。「私はソウルの大学を卒業後、公立、私立の小学校に15年間勤めましたが、子どもたちがあまり幸せではないと感じていました。そこで、新しい学校を作ろうと決心して世界各国の学校を視て回り、2003年、東京の和光小学校を視て感動しました。そのときに鎌倉先生とお会いし、先生とはそのときからの友人です。私の作った学校は小1から高3まで260人の小さな学校ですが、今、韓国の教育は“危機”にあると思っています。誰かが、モデルとして学校教育の見本を作る必要があると考え、退職して、ミラル・トゥレ学校という小さな学校を作りました」と話されました。

この後、学校の様子を映像で映しながら説明されました。バス停から森を抜けて学校に入る周辺の豊かな自然環境、建物の様子や授業風景、そして、教育の目標と学校の仕組みや実情について詳しく説明していただきました。具体的には、「子どもたちが直接触れたり体験することをめざした教育をしています。学校を一つの町として位置づけて、町としての機能を持たせてあります。例えば、学校で流通しているお金があり、子どもたちはお金を稼ぐことも出来るし、そのお金で買い物や貯金、寄付なども出来ます。クラスの編成は、1年から12年までの生徒を縦割りにして14組に分けています。このクラスを「ミラル兄弟」と云い、年に1回クラスで旅行に行きます。旅行先・宿舎・食べ物など全て子どもたちが決めます。この旅行で子供同士が仲良くなって本当の兄弟のようになります。

2006年度からは毎年日中韓の3カ国に行ってホームステイしながら交流しています。2007年に初めて3カ国が沖縄に集まり、戦跡巡りをして戦争の悲惨さを学び平和の交流をしました。3カ国の子どもたちの交流は、大人たちの世界にも影響を与えたかもしれません。私は、各国の教育のあり方を変えるという目標で学校を運営しています」。

この後は、ご本人の夢と教育論についてのお話でした。

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「私は韓国の教育を変えたいと願っています。また、その運動に携わりたいと思っています。

ミラル・トゥレ学校の運営も大切ですが、このような学校が全国に出来るような運動をやりたいと思っています。生涯のうちに6つの学校を作りたい。現在、中国に1つ新しい学校が出来ていて、今年3月にはもう1つ増える予定です。また、2017年にはソウルから30分のところにも出来る予定なので、これで4つとなります。夢(目標)は一人で見ていては実現しませんが、同じ夢をたくさんの人が持てば現実となります。1995年に新しい学校作りの夢を見ましたが、一人の夢で遠い夢でした。しかし、同じ夢を持った人が5人集まったときに現実となりました。同じ夢を持つ人が集まることが大切です。今、韓国の教育全体を私たちの力で変えていくことを夢見ています。必ずかなうと確信しています。

教育の目標に対する考え方は、東洋では、正しい経験をさせてやさしい人を作ることであり、西洋では、神様から与えられた才能をどうやって使うかが中心となっています。

そこで、私のミラル・トゥレ学校では、小学校では人格教育に力を入れて、良い子どもをつくることに、中学・高校では、持っている才能を引き出すことに力を入れています。私は、教育とは人を変えること、変化させることだと思っています。それは外からの圧力で変える事は出来ません。人を変化させる力は内面にあります。心の内側から変わっていきたいという意思が必要なのです。強制的に何かをさせることは意味がありません。自分も出来るということを感じさせることが大切です。教育にとって大切なことは、自分はどんな人間か、この世でやる価値は何か、どんな価値観を目指すのか、これらを日常の生活を通して生徒たちに感じさせることで、これが教師の仕事です。生徒たちの胸を熱くさせることが教師の役割なのです。

教育の目標は4つあります。1つは、知的な成長。2つ目は、社会的な成長。3つ目は、身体的な成長。4つ目は、霊的な成長です。4つの要素は有機的に関連していますが、最も大切なのは、④の霊的な成長(註:日本では「人間の内なる成長」「夢・希望・意欲をもった生き方」に当たると考えられる)です。

④の霊的な成長すなわち、人生をどのように生きていくか、自分の夢や目標がどこにあるかを悟った人は、①の知的な成長と②の社会的な成長が同時に進行します。目標がはっきりしているから勉強もする、こういう人は自分ひとりでは無く、いっしょに生きて行くことも大切にします。丈夫な身体に健全な精神が宿ります。③は④の基盤であり、④は①と②の基盤となります」。

最後に、韓国の教育の危機に関して問題点を具体的に列挙しながら、これからどんな学校を作りたいかについてのお話がありました。

「韓国の教育が危機的な状況にあるのは、2つの理由があります。1つは、家庭の問題です。離婚率の上昇もあって、家族が忙しくて顔を合わせる時間も無く、夕飯も一緒に食べないなど家庭としての機能が崩壊していることです。子どもたちは愛と励ましを親から受けることが必要であり、これが無ければ心と身体のバランスが崩れます。2つ目は、学校らしくない学校が増えたことです。今の韓国の教育は大学入試に偏っていて、良い大学に入ることが良いことという価値観となっています。学校生活には2つの喜びが必要です。知的な好奇心が得られること、人との付き合いの楽しさが分かることです。

このように、韓国の教育は危機ではありますが、私はこれをチャンスとして捉えています。危機の原因を知ることでチャンスとなるのです。

私は、子どもたちが夏休みや冬休みを減らしてほしいというような学校を作りたい。学校に来ることが楽しい学校を作りたい。また、親たちに、幸せな家庭が教育の基本になることを教えたいと思っています」という言葉で講座を締めくくられました。

 

この後、ミラル・トゥレ学校で一緒に教鞭をとっている4人の先生方が紹介され、「ミラル・トゥレ学校で勤務している理由など」について、それぞれご自身の考えを発表しました。

また、会場の聴講者からのいくつか質問を受けて特別公開講座を終了しました。