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テキスタイルデザインコース特別客員教授 宮浦晋哉氏による産学連携プロジェクト基調講演「染織産地の歩き方」が行われました

2016年6月18日(金)、本学、西キャンパス B棟 大講義室にて、特別客員教授の宮浦晋哉氏による講義が行われました。今回の講義は、尾州毛織物産地との産学連携プロジェクト「尾州毛織物プロジェクト2016」最初の基調講演になります。

宮浦晋哉氏は、国内繊維産地の取材を通して、執筆、編集、出版、イベントの企画運営、商品開発、プロモーション、ディレクションなどに携わり、2012年、日本のものづくりの創出と発展を目指すキュレーション事業「Secori Gallery」を創業。各産地の魅力を集めたコミュニティスペース兼ショールーム「セコリ荘」の開設、ウェブメディア「セコリ百景」をリリースするなど、国内繊維産業に新しい価値をもたらす活動を続けています。

 

司会と進行はテキスタイルデザインコース教授の扇千花が担当、講義に先立ち挨拶と本日のテーマ、宮浦氏の紹介がありました。講義は2部構成で、前半は宮浦氏の今日に到るまでの経緯と活動を振り返り、後半は学生からの質問を受け宮浦氏が答えていく形でトークが行われました。

 

前半の講演では、ふんだんにスライドを使い学生時代の説明から始まりました。高校卒業後、芝浦工業大学の工学部に進学し建築家を目指すものの、ダブルスクールで服飾専門学校へ通い、最終的にはファッションの道に進むことを決めて杉野服飾大学へ編入します。在学中はテーラードを学びますが、この頃から工場や職人技に興味があり、テーラードのアトリエでアルバイトをしています。宮浦氏の活動で使われている「セコリ」という言葉は、学生時代に学んだイタリアンテーラーのセコリ式から取ったもので、当時から“あだ名”で使われていたものだそうです。

大学卒業が近づき、やりたいことを突き詰めると、自分でものを作るよりお客さんに伝えることや社会的な関係を作ることがより重要だと考えるようになり、偶然知った堀田財団の奨学金育英財団の奨学生に応募、渡英してロンドン・カレッジ・オブ・ファッション メディア・コミュニケーションコースに入学します。メディア、広告、ブランディングなどについて学び、在学中から雑誌を編集し展示会を企画、こうした活動の中で海外のハイブランドのデザイナーから日本の素材が高く評価されていることを知ります。

そんな折、日本のファッションブランドに大きな影響を与えてきた繊維メーカー「みやしん()」が廃業するニュースが伝えられます。帰国し「みやしん」代表 宮本英治氏を訪ね、そこで日本各地の繊維産地の窮状を知ります。同時に宮本氏から「日本の産地にはこれからのファッションの未来があるよ」という言葉と産地の資料を受け取り、産地を取材する活動が始まります。

夜行バスで日本全国を数珠つなぎするような強行軍で現場を訪ね歩き、日本独自のアイデンティティーが服作りに反映されていないことへの不満や、服を作っていくための仕組みの再編成を考えたとのこと。また、デザイナー、職人、消費者の関係を考え直し、繊維工場の技術や素材をデザイナーに紹介する活動を始め、その延長として「セコリ荘」が誕生、「セコリチャンネル」「セコリ百景」など、現在の活動までの経緯が紹介されました。

 

年齢ごとにまとめられた経緯について説明を受けると、非常にアクティブでスピード感を持って進んでいることがわかりました。また、「20代の若手×60代の職人が面白い」「展示会より、工場に眠る素材のほうがイケてる!」「1000の工場があれば1000の答えがあるはず」など、わかりやすくキャッチーな言葉で語られることに、コミュニケーションの巧さと重要さを感じさせました。

 

後半は、学生たちから寄せられた質問に答える形式で、扇氏とのトークが展開されました。「たくさんの学校へ行って良かったこと」や「語学の勉強法」といった軽い質問から、「良い服とは何?」や「どうすれば安価なものから、高価値へとシフトできる?」といった業界が抱える本質的な問題など、さまざまな質問について答え非常に興味深い内容になりました。これらの中で、これまで産地や工場の名前は伏せられていましたが、有名ブランドが日本の生地を使っていることを売りにし始め、産地の立場が徐々に変わってきていることが伝えられました。また、実際にものを作っている現場と人の格好良さを伝えていく仕事の今後についても語られました。

学生にとっても年齢が近く、現場のリアルを知っていること、インターネットに明るく仕事に積極的に活用していること、これらが直接的に学生たちにとって参考になると思われました。学生に向けて「その時にしかできないこと、夢中になることができたら飛び込んで欲しい」とエールが送られ、講義は終了となりました。

 

今後、「尾州毛織物プロジェクト」では工場見学、学生がデザインした生地の生産、ファッションメーカーを招いて東京で受注展示会を開催しますが、折々に宮浦氏にも参加していただく予定です。

講演をする宮浦晋哉氏 講演をする宮浦晋哉氏
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後半のトーク(左は進行役の扇千花教授) 後半のトーク(左は進行役の扇千花教授)