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本学卒業生の大西潤喜氏が「はじめての特別支援教育ガイド」を出版されました

本学美術学部の卒業生(昭和59年度)で、永年、愛媛県の小中学校に勤務されていました大西潤喜氏が、このたび、明治図書出版から『マンガでがってん!はじめての特別支援教育ガイド』を出版されました。本書では法令や発達障害をテーマとした基本的な内容がヴィジュアルにまとめられ、問題の解決策や支援がわかりやすく説明されています。人間発達学部を設置する本学の学生たちの一助になればということで、本書をご寄贈いただきましたので、ご紹介させていただきます。

 

特別支援教育サポートBOOKS

『マンガでがってん!初めての特別支援教育ガイド』

著者:大西潤喜

発行所:明治図書出版株式会社

定価:本体2000円+税

 

なお、ご本人から【発行目的】と【内容】に関して寄稿いただきましたので、掲載いたします。

【発行目的】

筆者は、30年前中学校の美術教師として教壇に立っていましたが、「絵や文字や図形がうまく書けない(学習)」「身辺の整理が苦手(生活)」「衝動的トラブルが多い(行動)」といった様々な発達課題や問題行動のある生徒がいました。当時の学校現場は校内暴力で荒れていた時代ですし、教師サイドに発達障害の認識はなく知識も皆無でしたから、集団生活や一斉指導の枠からはみ出す生徒に対しては、全て厳しい教科指導や生徒指導で対処していました。しかし、その中には発達障害に起因した課題をもつ生徒も少なくなかったはずです。

そして現在、30年を経て教育現場にもようやく発達障害「ASD(自閉症スペクトラム)」という概念が浸透し、発達課題や障害に対する理解と支援も広がりつつあります。

今回、筆者が特別支援教育の入門書を発行した目的は、中学校の義務教育終了時に教育成果が決まるのではなく、幼児期の保育や幼児教育、小学校段階での早期からの正しい理解と支援に期待しているからです。

時代は法令をはじめ、めまぐるしい変化の時を迎えています。30年前のような無関心や無知から、誤った教育とならないためにも、現場の教師には知識や技術が求められています。

<障害者の権利に関する条約>の批准にともない、障害の有無や軽重、さらには従来の障害種別の枠組みに囚われない特別支援教育の必要性は、インクルーシブ教育の理念への社会的支持からも明らかで、このニーズに応じたきめ細かな教育的支援は、現在どの学校現場でも重要になっています。

 そこで、本書では法令や発達障害をテーマとした基本的な内容をビジュアルにまとめることで、問題の解決策や支援の方法を分かりやすく説明しています。なお、各項目の事例については、先生方の日々の実践と照らし合わせて柔軟に解釈していただければ幸いです。また、特別支援教育の充実には欠かせない、通常の学級における障害の理解をねらいとした「道徳」の授業展開例の資料を数編加えています。本書が、これからの特別支援教育とそれを必要としている子どもたちを理解するための一助となればと願っています。

【拙著内容】

特別支援教育は、<障害者の権利に関する条約>の批准と<障害者差別解消法>の施行によって幾つかの新たな「重要ワード」が生まれました。

障害児者の権利を重視する法令の一部改正にともない、「就学システム」ではインクルーシブ教育(障害のある子どもと障害のない子どもが共に地域で学ぶ環境づくり)がより推進され、それに合わせて「早期からの教育相談」の重要性や関係機関が連携する「個別支援計画」の作成、さらには「合理的配慮」による支援方法の充実と改善が図られるようになりました。

このように教育施策は全て法律等に基づいて実施されていますから、今後の変化について、教員は特別支援教育の根拠となる法令や重要ワードを理解し、その支援の方向性を見誤らないように日々の研鑽が求められています。

 第一章は、はじめて特別支援教育を担当する先生方に、特別支援教育の法令や関連する事柄を理解していただくためのものです。また、推進者として校内研修を実施したり、保護者との対応を考えたりする時の参考資料としても活用していただければと思っています。   

5つの「重要ワード」は、どれも大きなテーマであり、数枚の紙面に収まるものではありませんが、現在の特別支援教育の方向性を理解するための内容を要点化し、最後に担任の「Q&A」として教育現場の課題と望ましい対応策をまとめています。  

また、平成28年5月に「改正発達障害者支援法」が成立しました。10年ぶりに改正された主旨のうち学校教育に関する要点は、<①発達障害のある子どもが他の子どもと一緒に教育を受けられるよう配慮すること>、<②学校が主体的に個別の計画を作成し障害特性の理解を促すこと>、<③いじめ防止策や福祉機関との連携を進めること>が示されました。そして、これらの支援を阻害する社会的障壁を取り除くためには、学校教育においても合理的配慮が定着し、特別支援教育が全校体制で推進されることが必要になります。

 しかし、いくら有意義な法改正や教育施策の変更が行われても、日々の教育活動で、その理念を理解し具現化する責任があるのは教職員一人一人です。そのため、本書の構成では現在の学校現場が抱えているさまざまな課題や教職員の悩みに近づくための内容を設定し、望ましい支援策に結びつく提案となるように心がけました。

本書で提案した項目は、筆者が小・中学校の通常の学級、通級指導教室、特別支援学級と、教育行政で発達支援事業に携わった経験の中から得たものになります。筆者が出会った子どもたちや保護者との交流から感動したり、学校現場で考えさせられたりした身近な例を用いて、特別支援教育の基本や支援に必要な熱意や当事者の願いを伝えることはできないだろうかとの思いから作成しました。そして試行錯誤の末、マンガやイラストをツールとすることで障害やASDの特性が生活と連続した内容として理解でき、支援方法も親しみや温かみが感じられるものになるのではないかと考えました。ただ残念ながら筆者の力量不足により内容に稚拙な表現やエビデンスの不足が多々ありますが、何とぞ筆者の思いを汲んでお許しいただければ幸いです。

 

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