NEWS & TOPICS

テキスタイルデザインコース 尾州毛織物プロジェクト2016 宮浦晋哉 × 齋藤統 対談「パリから見た日本のテキスタイルのポテンシャル」

2016年12月8日(木)、西キャンパスX棟1階和室にて、特別客員教授である宮浦晋哉氏とAECCAsian European Consulting Company)代表取締役社長の齋藤統氏による対談「パリから見た日本のテキスタイルのポテンシャル」を開催しました。テキスタイルデザインコースでは、今年度、産学連携「尾州毛織物プロジェクト2016」として、学生がデザインした生地を尾州産地で制作、テキスタイル開発プロジェクトを行っています。今回の対談は、制作した生地を「NUA textile lab」の名称で12月16~21日に本学アート&デザインセンターにて展示しますが、そのプレイベントとして開催するものです。

 

齋藤統氏は、1980年に山本耀司氏のワイズ社パリ拠点としてYohji Europe社を設立し社長に就任して以来、Exil S.A.社、JOSEPH Japon社、Casabo社、2007年にはイッセイミヤケ社のフランス支社であるISSEY MIYAKE EUROPE社と、欧州の数々の企業から招聘を受け社長を歴任しています。

今回は対談を行う前に、宮浦晋哉氏と共に学生たちがお世話になった尾州産地の工場を見学し生地制作の背景を知った上で、学生たちが制作した生地を見ていただき講評を賜りました。X棟1階のXギャラリーには学生たちがデザインした生地が展示され、ひとりひとりコンセプトを齋藤氏に説明しました。齋藤氏はしっかりと学生の言葉に耳を傾け、生地を手に取って確認していました。緊張する学生をほぐすように話しかけ、感触を楽しむように生地を確認し、生地それぞれに想定される使い方や欧州のファッション界やテキスタイル事情などを解説していただきました。全体としては「15の作品には15の個性があり、それぞれの頑張りがよく現れています」と講評をいただきました。人柄を偲ばせる柔らかな語り口でしたが現在のテキスタイルを巡る厳しい指摘もあり、学生たちはメモを取るなどしながら真剣に聞き入っていました。

講評会の後はX棟の和室に移り、公開の対談となりました。和室には、収まりきらないほどの来場者があり、関心の高さを伺わせました。対談の始まりに、改めて企画者の扇千花教授から齋藤氏の紹介がありました。華麗な経歴に加え宮浦氏との共通点として「若くして海外に出ており日本を外から見た視点を持っていること、親子ほど年齢が違うものの日本のテキスタイルやファッションに対する強い思いは通じるものがある」と紹介されました。対談は、宮浦氏が質問し、それに齋藤氏が答える形式で進みました。

渡仏するきっかけは70年代にD'URBANCMで見たアランドロンのフランス語だったこと、実際に行ってみてすぐに語学で苦労したことなどユーモアを交えた話から始まり、山本耀司、三宅一生など、有名デザイナーを経営面で支えた経験などのお話がありました。山本耀司氏は素材や生地へのこだわりが強く販売する人にも覚えて欲しいという要望があり、一緒に産地の工場を回り、そのときから日本のテキスタイルをどうやって打ち出していくかの取り組みを始めたことなどが語られました。

日本のテキスタイルについての質問には「海外、特に欧州では、皆さんが思っている以上に高く評価されていて、デザイナーたちも生地を生かす方法を非常によく考えている」と説明がありました。また、日本では工場の職人とデザイナーの精神的な距離が近く連携しながら仕事をすることがあるが、欧州では分業が進み別々に仕事をしていること。ただし、欧州では職人の社会的な地位が高く、別々であるもののそれぞれが評価されて仕事をしていることなど、日本のアパレル産業との違いについて説明がありました。どちらがいいという話ではないと前置きしつつも「共同して仕事のできる日本のデザイナーは幸せであり、こういう世界を残したい」との言葉が印象的でした。

欧州の産地の事情については、イタリアの産地は高品質であるものの中国資本の参入でクオリティが下がりつつあること、フランスの産地はほぼ全滅してしまったことなど、厳しい現状の話があり「日本の産地は良いものを作れば売れると思っているが、これは迷信」と断言し、コスト意識の重要さが語られました。反面、価格面ばかりを追いかけたファストファッションから脱却しようとする動きも少しずつ現れ始め、ニッチであるものの期待しているとの言葉がありました。

日本の業界に求められることとして、産地ごとに海外の見本市に出展することはあるものの、オールジャパンで取り組むための組織がないため弱くないっていること、また、日本のデザイナーは素材に向かい過ぎてしまい、デザインへの思索が疎かになる傾向があるとの指摘がありました。

最後に学生からの質疑応答があり、「私にできることは、頑張っている若い人をサポートすること。オールジャパンの組織作りを宮浦氏と若い世代に託したい」と締めくくり、対談は終了しました。

 

今後、「尾州毛織物プロジェクト2016」では「NUA textile lab」の名称で、12月16日~21日アート&デザインセンターで展示会、2017年2月8日~10日に東京月島のセコリギャラリーにてファッションデザイナーを招いて受注展示会を行います。ぜひご覧下さい。

Xギャラリーに展示された学生たちがデザインした生地 Xギャラリーに展示された学生たちがデザインした生地
作品にはタイトルと使われている材料の混率が表示される 作品にはタイトルと使われている材料の混率が表示される
宮浦晋哉氏、齋藤統氏がXギャラリーを訪れ対談の前に講評会 宮浦晋哉氏、齋藤統氏がXギャラリーを訪れ対談の前に講評会
学生ひとりひとりがコンセプトを説明 学生ひとりひとりがコンセプトを説明
リラックスした雰囲気で講評会が行われました。「皆さんの頑張りがよく現れています」 リラックスした雰囲気で講評会が行われました。「皆さんの頑張りがよく現れています」
X棟和室にて対談。入りきらないほどの来場者が訪れました X棟和室にて対談。入りきらないほどの来場者が訪れました
宮浦氏が質問し、それに答える形式で対談は行われました 宮浦氏が質問し、それに答える形式で対談は行われました
日本のテキスタイルは高く評価されているものの、コストとオールジャパンで売り込む組織がないことが問題 日本のテキスタイルは高く評価されているものの、コストとオールジャパンで売り込む組織がないことが問題
学生からはフランスのテキスタイルが衰退した理由についての質問。フランスは人件費が高くコストの問題とのこと 学生からはフランスのテキスタイルが衰退した理由についての質問。フランスは人件費が高くコストの問題とのこと