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ユネスコ・デザイン都市なごや×名古屋芸術大学連携事業 公開講座「共感のデザイン/未来社会と食をデザインする」が行われました

2017年11月9日(木)、名古屋市中区のナディアパーク・デザインサンタ-ビル4Fにあるクリエイティブビジネススペースコードで、ユネスコ・デザイン都市なごや×名古屋芸術大学連携事業として、公開講座「共感のデザイン/未来社会と食をデザインする」が開催されました。

最初に、ユネスコ・デザイン都市なごや推進事業実行委員会事務局長の上田 剛氏より挨拶があり、「名古屋市は、2008年よりユネスコ創造都市ネットワークへ加盟して以来、ネットワーク加盟都市との交流、創造的な人材の育成、デザイン啓発を3つの柱として、関係団体との連携のもと、様々な事業に取り組んでいる」とのお話がありました。

続いて、名古屋芸術大学を代表して芸術学部長の萩原 周が挨拶を行い、そのあと、司会者より本日の公開講座の進行と、講師のスンナ・ヘルマンドッティル氏の紹介がありました。

 

名古屋芸術大学デザイン領域特別客員教授で、フードデザイナー/フードストラテジストであるスンナ・ヘルマンドッティル氏は、アイスランドの出身で、フードデザイン、サービスデザイン、デザインリサーチを専門分野とし、小規模の食ビジネス支援に特化したデジタルサービスFoodmrktを運営する他、Food Studio のメンバーとして食に関するワークショップなどを開催しています。フードデザインや共創に関するリサーチや論考も積極的に行うなどその活動は多岐に渡ります。デンマーク・オールポー大学Center for Food Plus Design フェローを勤めています。

 

公開講座は前半がスンナ氏の講演で、20分の休憩(コーヒーブレイク)を挟んで後半は、会場の参加者からの質問に答える質疑応答が行われました。

講演では、最初に自己紹介として生まれ育ったアイスランドの冬や夏の様子などを映像に写しながら、自身は海や山など自然と深く関わりあって生きてきたこと、食材(野菜、肉、魚、パンなど)は自家栽培や近海で捕れたものをそのまま家庭で料理してもらい食べて育ったことを紹介しました。

大人になり、誰もが自分と同じ食の経験をしていたのではないということを知り、逆に「誰もが自分がしたのと同じような食の経験をできるようになるべきだ」と確信したといいます。そして、デザイン研究を重ねていくうちに、「自分は食の未来のために、未来の世界をデザインしてみたい」と考えるようになったとのことでした。「食の未来は、人間的な価値観と食への共感に基づいたものであるべきだ」と基本的な考えを語りました。

今日、世界の食システムは崩壊しており、WHOによると、2014年には世界で7億9500万人の人々が飢餓に陥る一方、成人の39%は体重過剰、23%は肥満と診断を受けています。また、国連によると、2050年には世界人口が97億人まで増加し、深刻な少量不足が懸念されています。一方で、実際には、毎年世界では人が消費するために生産された食品のうち約3分の1が廃棄されています。この廃棄を減らし効率化を進めることで、食料は十分に確保できるのです。そのためには、私たちは食のシステムを理解して、食との関係性をもう一度作り直す必要があります。デザイナーとして未来の食のために、共感をもってデザイン活動を行い、食との繋がりを作り直すのをサポートすることが必要です。「共感」とは、他の人の立場になって考えてみる、ということで、食についていえば、製品そのものだけでなく、生産の工程、土壌づくり、種まき、テーブルに上がってから廃棄物になるまで、全てのプロセスに関わってくる人々と自然の関係性について理解することが必要になります。食に対する共感を高めるというのは、実際に、食べ物がそこにあることへのリスペクトと理解を高めることなのです。また、他にも理解すべき知識として、食物が人間にどのような栄養を与え、生命を維持させているか、食物の育成にはどれくらいの時間、努力や資源が使われているか、そして、人間の健康と地球の健全性の両方をサステイナブルに維持していくためには、食料はどのように生産されるべきなのか、といった観点も欠かせません。」

その上で、「自然、食料、生産に関わる人々への共感が、デザインプロセスの中で大きな役割を果たしている食品の例」として3点を挙げました。一つ目は、ソルトバークという会社の製造しているフレーク状のシーソルト。二つ目は、ノルウェーのロロスという都市にある「ロロスフード」という会社が製造している食品で、クローベリー・ジャム、ポーター(ビールの一種)、ボトル入りの水。三つ目は、夫婦が経営するボーゲダという会社のビールでした。これらの3つの例に共通しているは、食物への共感と、原材料へのリスペクト、自然と、工程で費やされる人々の作業へのリスペクトです。そして、自然の肥料や天然のエネルギーを利用し、自然のサイクル以外のものは利用せず、サステイナブルであるということです。また、資源に対し、それを最大限に利用するという形でも、リスペクトしています。

 

次に、食に関わる活動を展開する「フードスタジオ」のリサーチャー・研究者として事例紹介がありました。

「フードスタジオでは、『ゲットアウェイ』というワークショップを年間を通じて実施しています。参加者は大自然の中から自ら食材を調達し食事を作ります。その過程で農家など実際に生産に関わり食材に対して知識のある人たちとの交流の機会が生まれます。そうした体験が参加者らの「食に関する共感」に影響を与えるのです。

この後、スンナ氏が運営する「ダーゲンズ」という食料を直接取引するためのデジタルサービス会社について解説していただきました。「ダーゲンズ」はスカンジナビア語で、「本日の」という意味があります。

「ダーゲンズ」は中小の自営農家・酪農家とレストランをつなぐためのデジタルサービスです。農作物や家畜、自然にも敬意が払われ、高品質を目指し生産されているといった、生産のプロセスに関わる情報を正しく伝えることで、生産者には正当な評価と対価が与えられ、レストランなどの事業者もそうした情報を元に食材にアクセスすることを可能にしています。「ダーゲンズ」の取り組みを通じて、現在の流通経路などサプライチェーンの仕組みそのものに起因している問題に取り組んでいます。

このダーゲンズのデジタルサービスをデザインするプロセスでは農家や漁業者、バイヤーの方にデザインプロセスに参画してもらい、多くのインスパイヤを得ることができました。「デザイナーは、共感、人間中心のデザイン、包括的なものの考え方を身につけ、未来の食のために未来の社会をデザインしていかねばならないと思います」という言葉で講演を締めくくりました。

 

会場の参加者からは、「共感の情報を発信することについて、デザイナーはより効果的に影響を与えるために工夫できることは何かありますか?」、「所得の低い人はオーガニックフードを選んで購入できない悪循環がありますが、この問題についてどういう解決方法があるのでしょうか?」など、様々な質問が出され、参加者の関心の高さが伺えました。

 

なお、この公開講座は、関連する内容で「料理とは何か/食の振る舞いをデザインする」と題して、11月14日(火)の午後、本学芸術学部デザイン領域ライフスタイルデザインコースの学生を主対象として、西キャンパスのB棟大講義室でも実施されました。

 

 

公開講座会場の様子(デザインサンタ―ビル4F)

公開講座会場の様子(デザインサンタ―ビル4F)

講師のスンナ・ヘルマンドッティル氏

講師のスンナ・ヘルマンドッティル氏

映像を映しながらの解説

映像を映しながらの解説

食物の生産から消費までのサイクル(使用された資源はどれだけか、時間・人間・自然)

食物の生産から消費までのサイクル(使用された資源はどれだけか、時間・人間・自然)

ジャガイモの収穫の様子

ジャガイモの収穫の様子

ジェスチャーを交えて講演するスンナ氏

ジェスチャーを交えて講演するスンナ氏

名古屋芸術大学での公開講座 講師を紹介する水内智英准教授

名古屋芸術大学での公開講座
講師を紹介する水内智英准教授

講演をするスンナ・ヘルマンドッティル氏

講演をするスンナ・ヘルマンドッティル氏

会場の様子(B棟大講義室)

会場の様子(B棟大講義室)