2012.9.22 一升瓶ケースの椅子

きたなご関係者の方から教えていただいた酒屋「中村屋」さんから、
一升瓶ケースをいくつか譲り受けた。
丈夫なプラスティック製が主流の今でも
以前の木製のものを愛してやまない、というご主人の思い入れの詰まった「木製」ケースだ。
そのこだわりと簡単に持ち運べるデザイン性から、
ケースに手を加えて、晩餐会当日にお客様が座る椅子にすることになった。
「いつまでも使える」ような椅子を人数分用意するため、
解体して構造を理解し、何度も改良が繰り返され、作業は何日にも渡って続いた。
座面には、末広温泉の薪だった穴のあいた合板をそのまま使うことで、
単なるケースの模倣を超えたアイデンティティを持たせることができた。
こうして特製の椅子が完成。
逆さまにすると持ち手や間仕切りもあるので、
従来の一升瓶ケースとしても使うことができる。
晩餐会終了後には、
椅子とケース、2つの使い方ができる「新しい一升瓶ケース」として
中村屋のご主人にお返しした。



中村屋
地酒探しをしていて見つけた「中村屋」。西春で長く続く酒屋だ。
店主の山本将守さんはお酒に対するこだわりを強く持っていて、
店内には焼酎や日本酒が幅広く並べられている。
お客さんにも熱心にお酒について語る山本さんだからこそ
地域の人から長く慕われている。



中村屋さんから貰った一升瓶ケースはかなり古くなっていたが、
そこにこそ店主の愛着を感じた。
このケースを数人がかりで解体し、仕組みを学びながら
イメージを壊さないようデザインした。
人に快適に使ってもらうために最適な寸法や強度を求め、
今まで作ったことのない50脚という膨大な数にも頭を悩まされた。
作業効率や材料の有効活用などを考え、
材料の仕入れギリギリまで寸法や個数の計算をし直した。
座面には末広温泉で頂いた板を利用することとなったが、
もともと薪になる木材だったため
厚さが異なるものがあり1つ1つの計算が大変だった。
材料が揃い、学内の木工房での作業が始まる。
しかし、ここで問題発生。
木工房を使用するのにはライセンスが必要で、それをを持っているのは
椅子作り担当のメンバー内には私と滝野の2人しかいなかったのだ。
急遽、大学院生の大倉さんにも手伝ってもらうことに。
はっきり言って、3人で50脚をこの短期間で作るのは無理だと思った。
でも、やらなくてはならない。
まず、パネルソーでラワンベニヤをカット。
全部で7種類、一つのイスに17パーツ。ざっと計算しただけで850パーツ。
一つでも失くさないように管理しながら作業を進めていくと、
みるみるうちに木工房が木の板で溢れかえった。
次は組み立てだ。すべて同じものを作らなくてはいけないのでガイドを作成。
それでも打ち間違えるので釘抜きは必須だった。
組み立て方は外側の囲みを作ってから中に格子と持ち手を差し込む。
ぴったりの寸法なので差し込むのに一苦労。
木工房は時間厳守で17時までしか作業できない。
さらに授業が入っている日も使えない。絶望的な日程。
3人は外に材料を持ち出して、
外の照明をたよりに大学が閉まるギリギリの21時迄作業することにした。
寒さで手が冷たかった。
よく人にも注目され声をかけられた。
先輩がくれた温かいコーンスープがおいしかった。
そして、2週間後無事完成。
大倉さんのおかげで無知な2人でも間に合うことができた。
使用した釘は2000本以上。腕がムキムキになった。
できた瞬間ほっとした。
他のメンバーにも座ってもらい、「いいね!」と言われた時は素直に嬉しかった。
晩餐会当日に50脚全てを並べて招待客が座って談笑している様子は
忘れられない思い出である。

(インダストリアルデザインコース2年/宮下篤子)

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