お知らせ

開学50周年記念 絞り手ぬぐいプロジェクト サンプル制作

2020.02.27

デザイン領域

開学50周年記念式典に、
記念品として式典出席者に贈呈される絞り手ぬぐい制作プロジェクト、
2020年2月4日、学生たちは有松絞り産地の「まり木綿ショップ」に集合、
サンプルの制作を行いました。

午前10時に学生たちは、有松に集合。
まり木綿ショップには、商品やこれまで制作されたサンプルが用意されており、
学生らは5つのグループにわかれ
それぞれのイメージに近い色合いやデザインの参考にできるものを探しました。

前回のミーティングで、グループごとに使用する色とネーミングを考えていますが、
実際に制作するに当たり、染色可能かどうかや、
実物になったときに違うイメージに見えてしまうことを防ぐため、
まり木綿の伊藤木綿(いとう ゆう)さんに意見を伺いました。

2まり木綿店内

サンプル制作では、1グループ3色を使い、
畳み方やデザインを変えて、3パターンのサンプルを制作します。

参考品を手に、学生たちは実際に染めの作業を行う久野染工場へ移動しました。
久野染工場では、まず設備を見学し、実際に作業するときの注意などを受けました。

4久野染工の久野社長
久野染工の久野剛資さん

説明が終わったあと、伊藤氏と色合いやデザインについて検討しました。
伊藤氏は、記念式典の贈答品といえども商品として成立していなければならないと考え、
学生らのコンセプトやネーミングについてチェックし、
ディスカッションが行われました。

5色とデザインの検討

ネーミングは、幅広い意味を想像させる英語よりも
訴求力の強い日本語のほうがしっかり伝わることや、
簡単に理解されるものではインパクトに欠けるためバランス感覚が必要、
また、全部の5グループで見たときのまとまりにも考慮すべきなど、
商品展開について非常に濃い内容となりました。

あらかじめイメージを考えておくことは重要ですが、
できあがったものを見てコンセプトやネーミングを考え直す柔軟さも大事なことだと説明しました。

3久野染工場の見学

色が決まったら、
伊藤氏がこれまでに使ってきたデータを参考に、染料の配合料を算出。

7染料を計る

学生らは、その間にサンプルにする手ぬぐいを畳み、板に挟む作業を行いました。
たたみ方は正三角形と二等辺三角形2種類。
どちらも制作できるよう、両方を作りました。

6布を畳んで板に挟む

板締め絞りでは、できるだけ畳んだ布をきつく板で締めたほうがきれいに模様が出るということで、
力一杯、緩まないように挟み込み、たこ糸で固定しました。

9染色2

布の準備ができたら、染料を準備します。
0.001グラムまで測ることのできる精密電子はかりを使い、
算出した染料を丁寧に計測します。
測った染料を規定量の水で溶き、助剤を入れてよくかき混ぜれば染液は完成。
畳んだ布に刷毛で染色します。

8染色1

三角の1辺を同じ色にする場合は、バットに入れた染料に浸しました。
染めた色パターンがわかるように学生らは、メモしたり写真に撮ったりするなどして記録しました。

10染め上がり

染色して8時間で色が定着し、洗い流せばサンプルの完成です。
グループごとに3パターンがあり、デザインと色を再度検討して本番の制作になります。

1学生と伊藤さん


<インタビュー>
まり木綿 伊藤木綿(いとう ゆう)さん
11伊藤木綿さんインタビュー

私は2011年テキスタイルデザインコース卒業、
3年生のときに、有松で手ぬぐいを染めて販売する授業に参加しました。

それまで有松という産地も絞りという技法も知らず、
大学の授業で有松へ初めて訪れました。
そのときに、今回学生が作ったのと同じ板締め絞りの技法を学びました。

十人十色の個性が表れることに非常に感銘を受け、
それ以来、絞りに夢中になり、初めて有松を訪れてから10年が過ぎ、
有松で起業して現在へとつながっています。

大学は50周年ですが、
その中の10年間自分が有松で活動してきたということが、
すこし誇らしい気持ちになります。

今回のプロジェクトに参加できたことは、
この10年やってきたことを学校から認めてもらえたようで、
とても感謝しています。

有松で商品作りを行っていますが、
産地というのは街であり、街があっての産地であり、
街の歴史があっての絞り染めであると考えるようになりました。

需要に応えて商品を作りその技法や商品の積み重ねが街の歴史となっています。
需要があるものを作り続ける、社会に応えられるものを作っていく、
このことがとても大切なことだと痛感します。

伝統を守ることは大事なことですが、
社会に応えて変わっていかなければ残っていけません。
長く培われてきた技法を守りながらも、
そこに自分の感性を活かして社会に応えられるものを作っていけるか、
そうしたことを今回のプロジェクトでは学生のみなさんにも考えて欲しいと思っています。