• 芸術学部 芸術学科 美術領域 日本画コース

山守 良佳

やまもり よしか

講師

2016年
名古屋芸術大学美術学部日本画コース 卒業
2018年
名古屋芸術大学大学院美術研究科絵画領域日本画 修了
2019年
安曇野涼風扇子公募展 大賞
2022年
第6回新日春展 奨励賞

寄り添う絵

表現することにチャレンジしたい

日本画コースから大学院へ、順当な経歴に見えますが、どのような学生時代でしたか?

高校を中退して10年近く、アルバイトをしたり、メンタルをやられて働くこともできなかったり、そんな時期を過ごしてから大学に入りました。高校は、美術系に進みたいと思っていましたが 、将来のことを考え普通科高校で学んだ方がいいとのアドバイスを受け選んだのですが、あまり自分とマッチせず1年で辞めてしまいました。そこから先は、就職も厳しい時期でしたし、いろいろなバイトを転々とやっていました。そうするうち2011年の東日本大震災があり、簡単に人は亡くなってしまうことを痛感し、自分にも期限があるならばやり残したことはなんだろうと考えました。そこで、なにか表現することにもう一度挑戦できたらと思いました。アルバイトは、アパレルや飲食もやりました。いずれにしても仕入れたものを売る仕事ですが、それは誰かが作ったものを販売するというもので、自分の表現とは限りなく遠いものです。販売の仕事をしながら、この商品はもっとこうだったらいいなと考えることもあり、作る側にならないと表現することはできないなと思っていたことも、もう一度創ることに取り組みたいと考えるようになったのが理由です。

災いが転機になったわけですね

仕事をしながら通信制の高校で単位を取り、高卒の資格を取りました。私でも進学していいのかなと心許ない気持ちでしたが、塾に行ってみて表現にもいろいろなジャンルがあることをあらためて考えました。自分としては、映像やイラストもいいなと思っていましたが、幼い頃は絵ばかり描いていて、絵が好きだったことを思い出しました。心が折れて描くことを忘れていましたが、またやってみたい、真剣に学んでみたいという気持ちになりました。塾の先生の勧めもあり、日本画に興味を持ち、作品を見て、岩絵具ってすごく心地がいいと感じました。彩りが豊かで光を吸い込むような感じで、これなら続けていけそうだという気になりました。先生の言葉や友人の言葉につい頼ってしまいがちですが、周りに答えを求めず自分が納得できる作品、自分が心地良いと感じる作品になるようにと思っています。

自分にもっと自信を持ってほしい

学生や悩んでいる人への言葉はありますか?

なんとかなるよというのは、あまり言いたくないなと思うんです。自分が昔、悩んでいる頃には、心に届きませんでした。話を聞いていると学生には、吐き出したいけれど吐き出す先がない子が多いように思います。なので、基本的には、話を聞いて寄り添うようにしています。作品にも自分自身に対しても自信のない子がすごく多いですね。ただ、絵を描くことは、なにもないところからものを創り上げて完成させることで、ものすごくパワーのいる作業です。普段何気なくやっていることが、社会では他の人にはできない自分の強みに既になっていると思います。自分で1から組み立てなければいけない、人から言われてやっていることではない、そのことにもっと自信を持ってほしいと思います。自分の目の前の課題にしっかり取り組むだけで、本当にそれだけで、自分でやってきたことに価値があり、自信を持っていいことだと思います。今を精一杯生きてほしいですね。今は無理だという人も、たまたま今じゃないだけで、今を真剣に悩んでいると思うんです。

時期が来るまで待てばいいのか、頑張って、なにか少しずつでも変えていった方がいいのか、どうですか?

個人的には倒れたままでもいいと思うんです。でも、周りの環境によって、そこは人それぞれなので難しいですね。可視化された表層の社会というか、入試でも順位をつけるみたいに分けられたりしますが、それは別に人間としての優劣というわけではないじゃないですか。過去の自分に言いたいことともつながるかもしれませんが、そのときの自分を受け入れ、そこからどうするのか、自分と向き合うことですよね。そして、進みたいときはどうやっていこうか一緒に考え、私の方も一緒に進んでいけたらと思います。