名古屋芸術大学

山田 純 教授

アートマネジメントコース

これほど徹底して総合コースを設置する大学はありません

音楽総合コースの魅力は、どんなことだと思われますか?

 中河先生と話しをすると出てきますが、音楽総合コースは考え方として、ホテルのバイキング料理、ビュッフェを食べるのに似ています。自分の好きなものが食べられることに加え、嫌いなものでもちょっとだけ食べてみる、これができる。少しかじってみて「ああ、やめた」これができる。この、やめたができることも、音楽総合コースの魅力ではないでしょうか。でも、この自由さを保つこと、料理を用意する側はものすごく大変です。  この学生はフランス料理が好きなようだとか、この学生は中華料理だとか、こうしたことを把握しながらトータルの量を加減しながらやっていきます。これだけ用意したのに、全然食べてくれなかった、これは実際に起こり得ることです。ですから微妙な差配が大変です。だから、他の大学でも名前は違うかと思いますが同じような内容のコースを持っています。しかしながら、名古屋芸術大学ほど徹底してやっているところは、たぶんないと思います。これが大きな特徴の一つです。音楽総合コースのルールとしては、まず2年間は何でも好きなものが食べられる、でも基本的には何でも食べられるのはそこまでにしておこう、3年生になったら何か専門を見つけてそれに専念する、こういう考えがありました。ただ実際には、あまりの居心地の良さに、4年間ずっとそれを通したい学生たちが増えてきました。バイキング料理だけで終わってレストランを出て行きますが、それもいいかと考えるようになりました。そのことに魅力を感じて来てくれている学生たちがいます。その魅力を味わうために来てくれる学生たちがいるのだからそういう形でもいいのか、と思うようになりました。そういう意味では、教員側の妥協もないわけではないのですが、できるだけ3年になったら何か専門を選択して欲しいと言いつつ、進んできています。お腹はいっぱいになったけど、何を食べたかよくわからない。これが総合コースの、危険なところですが、学生たちは満腹になっただけでいいと思っているようです。それならそれでもいいじゃないか、というのが現況です。

音楽文化創造学科に音楽総合コースがある意味については?

 音楽文化創造学科というのは、人あるいは自分たちの心を豊かにするためにあるコースだと思っています。しかしながら、教養を修めるということだけでは教養主義に陥り、大学が行うべきことではないと考えます。社会の中に還元していくこと、社会とのつながりを持つことです。私たちの教育としては、学生たちに絶えず自分の心を磨き、そしてそれを社会に還元しなさい。人と人との間に入って、人と人とをつなぐ役割を担いなさいと言っています。これが、音楽文化創造学科が考える、社会との結び付きを持ったうえで自らの心を耕してきなさいという教育方針です。社会とのつながりを考えた場合、音楽総合コースでいろいろな経験を積むことは、役割を担うという意味においても有益だと思います。ある意味放っておくというか、音楽総合コースのまま卒業していくことでもいいと思えるのは、社会に出たときに、何か一つの事柄にしがみつくのではなく、幅広く見られる方が良いということがあるからです。社会のニーズとしては、多いのではないでしょうか。社会に出た場合には、何かの専門ではなく幅広い領域で一通り何でもできる、徐々に、そういう音楽総合コースの有益さを社会の側が許容するようになってきていると感じています。

幅広く学ぶことと専門的に学ぶこと、音楽総合コースでは幅の広さばかりが強調されるように思いますがいかがでしょう?

 私としては、浅く広くもいいのですが、一つのことを専門的に掘り下げるというのも必要ではないかと感じています。どちらがいい悪いと言っているわけではないのですが、音楽総合コースでは本人が努力をしても、どうしても時間的に専門コースに及ばないところがあります。とことん突き詰めてはできません。広く浅く、深く狭く、両方ありなのですが、その判断をどこかで考えなければならないと思います。一芸に秀でる者は多芸に通ず、という言葉がありますが、一つのことを専門的に掘り下げてこそ、いろいろな分野を学んだことが活きてくるのではないかと思います。実際の講義では、自分のコースを取ってくれた学生に対して、専科であろうと総合コースであろうと、どの講義でも全く区別なしに同じように専門性の高い授業を行っています。専門コースと音楽総合コース、違いがあるのはカリキュラムだけです。バラエティーがありながらも同時に高い専門性を持つ授業に触れることができます。専門コースを選択する方が専門性を身につけるということでは効果的と言えますが、音楽総合コースでも学生の努力次第で十分な専門性が身につけられると思います。

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