名古屋芸術大学開学50周年記念事業

学長ご挨拶Greeting president

  • HOME
  • 学長ご挨拶

開かれた大学を目指す

まもなく平成という時代が幕を閉じますが、私が名古屋芸術大学に専任教員として赴任したのがちょうど30年前の平成元年でした。本学開学当時、大学というものは全国500校程度で、現在の6割程度でした。そうした中、芸術に特化した大学を作ったこと、そのこと自体に勇気と素晴らしい先見性を感じます。私自信、大学卒業後、名古屋フィルハーモニー交響楽団に所属していました。ちょうど名フィルがプロ化する時期に当たります。東京のオーケストラよりも新しいことができるように思い名フィルに入団しましたが、オーケストラの運営に係わる中で、演奏するだけでなく運営していくことの重要性を痛感しました。そうした経験が、音楽文化創造学科やアートマネジメントコースへとつながっていきました。

これまでの芸術大学の教育は、100人の学生がいれば、100人ともプロフェッショナルの演奏家や作家になることを目指すような方向で考えられ組み立てられてきました。しかし実際には、プロになるのは一握りだけで、大部分の学生は大学で学んだそのものを職業とはせず、その経験を生かした職業に就き活躍しています。大学で専攻した分野でプロになれなかったとしても、違った形で才能を開花させることのほうが多いのが実情です。そうであるならば、学ぶことを幅広く捉え卒業後の進路に希望を持つことができるようしっかり学生を育成し、社会で活躍できるようにしたい、そんな思いが美術、デザイン、音楽を一つにしたボーダーレスという大学改革の根底にあります。さまざまな芸術の領域に境がなくなり、ジャンルが融合して新しい芸術が生まれてきています。旧来のクラシック音楽やファインアートを第一に置く価値観だけでは、時代や社会の変貌に追従できていないことは明らかです。芸術にとって技術を磨くことは大切なことですが、技術だけに走ることなく社会への関心や問題意識を持ち、社会とつながりを持つことがますます重要になってくると考えます。一昨年から芸術教養領域を新たに設けましたが、将来、大きな意味を持つようになると確信しています。

日本の大学は、これまで18歳人口に頼って運営されてきました。しかし、諸外国の大学では学生の20~30%が社会人や高齢者のリカレント学習(学び直し)です。そうしたことを考えれば、まだまだ大学が行うべきことはたくさんあります。教育と研究が大学の役割ですが、教育については、特定の年齢層に向けたものではなく学びたいという人に門戸を開き、もっと積極的に応えていく努力が必要であると考えます。名古屋芸術大学は、他の芸術大学がなしえなかった改革を行い、新たな方向性を目指し先頭を走っているという自負があります。改革がここまで推進できましたのも、理事の方々、本学に学んだ同窓生、在学生ご父母、教職員ならびに各界の皆様の深いご理解とご支援、ご協力の賜物と深く感謝しております。今後さらなる改革を実現し、全国に冠たる芸術系総合大学を目指していく所存です。

名古屋芸術大学 学長
竹本義明

名古屋芸術大学 学長竹本義明