新設演奏家を養成
プロフェッショナルアーティストコース

 音楽領域の演奏系コースでは、国内のみならず世界を舞台に活躍できるプロの音楽表現者の養成を目的とする「プロフェッショナルアーティストコース」が新設されます。実際に世界の舞台で活躍する横山幸雄、上原彩子 両特別客員教授を迎えて、高いレベルでのレッスン・教育プログラムが設定されています。 新コースについてピアノコースの川田健太郎 講師、戸田恵 講師にお話を伺いました。

川田 健太郎 講師(写真左)

 東京藝術大学附属高卒業後、ロームミュージックファンデーション海外派遣奨学生として国立モスクワ音楽院卒業。第14回かながわ音楽コンクール第1位、第4回東京音楽コンクール第3位、第15回ラフマニノフ国際ピアノコンクールファイナリスト等受賞多数。これまでにソリストとして東京フィル、大阪フィル、九響、仙台フィル等、日本の主要なオーケストラと数多く共演。活動の場は幅広く、映画「のだめカンタービレ最終楽章」、日本テレビ系金曜ロードSHOW!「ルパン3世グッバイ・パートナー」など、映画、CM、ドラマ、アニメ、舞台等、様々な音楽シーンで活躍。

戸田 恵 講師(写真右)

 兵庫県立西宮高等学校音楽科卒業後、渡仏。パリ国立高等音楽院ピアノ科併せて室内楽科、及びパリ・エコールノルマル音楽院卒業。名古屋芸術大学大学院音楽研究科修士課程修了。ピティナピアノコンペティションE級全国大会ベスト賞、神戸芸術センターコンクールファイナリスト、イルドフランス国際ピアノコンクール(仏)第3位、シャトゥー国際ピアノコンクール(仏)第2位併せて日仏友好賞など国内外のコンクールにて多数入賞。フランス南部カステルノーダリピアノフェスティバルに招待されリサイタルを開催するなど、国内外で演奏活動を行っている。

コース設置の背景を教えてください。

川田:本学は、他の音大には見られない多彩なコースがあり、学内も非常に活気があるのが魅力だと感じています。そんな中でも、今回新設されるプロフェッショナルアーティストコース(以下、PAコース)は、世界で活躍する演奏家を目指したいという、最もシンプルでコアな目的を持った受験生に向けたコースです。演奏家を目指す上で、向上意欲のある方に是非、いらして頂きたいです。
PAコースの、ピアノの分野を例に取って話しますと、世界的なピアニストの横山幸雄先生、上原彩子先生のお二人が特別客員教授として、現在いらしてくださっています。年間で複数回、作曲家や時代スタイルを絞った特別講座や、個人の学生に向けた特別レッスンが用意されています。第一線のステージに立ち続けるお二方の熱のこもった特別レッスンや講座の内容は、世界に羽ばたく学生にとって、これ以上ない説得力と学びの場になるかと思います。
また、PAコースの普段の通常レッスンは、演奏系コースのレッスン時間の倍にあたる、90分/週 という充実した時間を本学の講師陣と学んでいきます。学外でのコンクールやリサイタル等、同時にたくさんのレパートリーを仕上げていく事に対して、充実したレッスン時間は必要不可欠に思います。

戸田:週90分のレッスン時間を45分ずつ二人の先生に習うことも可能なんです。私はフランスの大学に通っていましたが、向こうではアシスタント制と言って、どのクラスも教授のレッスンとアシスタントのレッスンをダブルで受けることが主流でした。二人の先生が全く同じ解釈をされているとは限らず、音楽の作り方やテクニック的な部分でさえ、それぞれ違うご意見を頂くこともありました。それを自分で、単純にどちらが好きか嫌いかとかそういった事ではなく、たとえ真逆のご意見だったとしても、その都度自分が納得できるよう考えていたように思います。そしてそれが少しずつ音楽的に自立していくことができた要因だったのではないかなと考えています。90分というレッスン時間をどのように使うかというのは、PAコースの学生がそれぞれ自分に合うスタイルで選択し、充実させて欲しいと思っています。
また、室内楽の授業も充実したプログラムをと考えています。この授業は、様々な楽器を専門とされる複数の教員が受け持ちますので、自分の専門とは違う楽器の先生方のレッスンはとても刺激になります。学生たちの中でも同じ志を持つ者どうしグループを組み、意見を交わしながら切磋琢磨していける環境をと考えています。

川田:また、PAコースの特徴として、海外でのコミュニケーションに不可欠な語学(英会話)にも力を入れたカリキュラムを予定しています。意思を伝える為の語学力も、外に目を向け活躍する上では、非常に大切だと考えています。
その他にも演奏解釈に直結するソルフェージュ内容を考え、授業を展開する予定です。机上のソルフェージュではなく、自身の演奏に反映されるソルフェージュを目指します。また、PAコースの演奏会も年間の行事として開催予定です。
多角的な視点で、ステージに立つ芸術家を育てる為のカリキュラムを用意しています。

テクニカルな部分以外の重要性は?

川田:改めて、楽器に向き合う以外の時間も大切だと感じます。言葉では表現出来ないものを、私達は音楽を通して表現している部分もあると思うんですね。言葉にしてしまった時点で断定されてしまう。そのもっと先の世界や精神の中で音を紡ぐとなると、やはり沢山の経験、感情の引き出しを増やす事が大切に思います。本学は芸術大学ですから、沢山のコース、そして美術の学生もいます。学生時代、沢山の分野の仲間と知り合って刺激し合って欲しいです。他のコースの学生と知り合うことで、自分の知らなかった領域を広げるチャンスが広がります。興味と探求心さえ持っていれば、これ以上の環境は他に無い様に思いますね。入学してからのそういった化学反応にも、非常に期待しています。

戸田:私はこの大学の卒業生ですが、学生時代にもっと積極的に美術の学生とコミュニケーションを取りたかったなと少し後悔しています(笑)音楽領域の学生でも美術領域での催しに参加することができるので、是非是非たくさん交流を持って欲しいと思います。美術と音楽は密接に関係していて、音楽の歴史をたどっていくとこの曲はこの絵画を見て作られたみたいなことが多々あります。アートに触れられる環境はこの大学ならではの特権だと思います。

学生に求めることは?

川田:私達も芸術の道でいうと、一生「学生」なんです。作品や自身の演奏に対して、対峙する毎日です。そういった意味でも、ずっと掘り下げていける探究心と好奇心が大事だと思います。そして今のこの時代、柔軟な考えも同時に持ち合わせて貰いたい。全く新たな表現の場や方法も、この分野はこの先も生まれると思います。私達教員も、学生と同じ目線、立場に立って社会に対してのプロフェッショナルなアートとは?活動の場とは?という問題を、一緒に寄り添い、考えていきたいと思っています。もっとも柔軟で多感な時期を是非PAコースで、才能を磨いて欲しいと思います。

戸田:私も同じく、大学1年生からの伸びしろは努力次第で2倍にも3倍にもなると信じています。PAコースに入り、在学中にどんどん実力をつけていってくれることを期待しています。またそのようなコースになるよう教員一同準備していますので、演奏家になりたいという強い意志を持って来て頂けたら嬉しく思います。

客員教授紹介

©アールアンフィニ

横山 幸雄(Pf.)

 1990年第12回ショパン国際コンクールにおいて、日本人として歴代最年少で入賞。文化庁芸術選奨文部大臣新人賞など受賞。2010年ポーランド政府より、ショパンの作品に対して特に顕著な芸術活動を行った世界で100名の芸術家に贈られる「ショパ ン・パスポート」が授与される 。2010年「ショパン・ピアノ・ソロ全 166 曲コンサート」及び 2011年「212 曲」を演奏し、「24時間でもっとも多い曲数を一人で弾いたアーティスト」としてギネス世界記録に認定。2011年デビュー20周年記念コンサートでは、チャイコフスキー、ラヴェル、ラフマニノフの協奏曲を一晩で演奏し、満場の喝采を博す。2013年からベートーヴェン生誕250周年に向けてのシリーズ「ベートーヴェン・プラス」をスタートさせるなど、自ら企画する数々の意欲的な取り組みにより、高い評価を確立している。

©武藤章

上原彩子(Pf.)

 2002年第12回チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門において、女性として、また日本人として史上初の第1位を獲得。第18回新日鉄音楽賞フレッシュアーティスト賞受賞。これまでに国内外での演奏活動も意欲的に行い、2004年12月にはデュトワ指揮NHK交響楽団と共演し、2004年度ベスト・ソリストに選ばれる。2006年1月10日には「日本におけるロシア文化フェスティバル2006」オープニング・ガラコンサートでゲルギエフ指揮マリンスキー管弦楽団と2007年1月に はベルリン・フィル八重奏団と共演、また、2008年9-10月にはクリスチャン・ヤルヴィ指揮ウィーントーンキュンストラー管弦楽団とのオーストリア及び日本ツアーを行い、2017年3月には、ベルリン及び日本国内4都市において、エリアフ・インバル指揮ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団と共演、高い評価を受けた。

コース代表教員紹介

松波 千津子

声楽コース

依田 嘉明

弦管打コース

日比 浩一

弦管打コース

鷹野 雅史

鍵盤楽器コース(電子オルガン)