第48回卒業制作展/第25回大学院 修了制作展を振り返って

芸術学部長 デザイン領域 教授 萩原周

芸術学部長 デザイン領域 教授 萩原周
 非常事態宣下で卒業制作展を実施できるのか? そもそも、こういう大きな問題がありました。おそらく、4月の状況であれば無理だっただろうと思います。しかしながら、時間が進むにつれ対応の方法も徐々に明らかになり、入り口を一本化し、非接触で受付を行い、万が一の際にも対応が取れるよう連絡先も明確にしていただく、こうしたことをスタッフみんなで考え体制を整えることで卒展を実現することができました。最悪、状況によっては途中で開催を打ち切ることまでを想定していましたが、無事に滞りなく開催できたこと、これが何よりの収穫といえます。もしも打ち切りになった場合にと360度カメラなどを用い、仮想で閲覧できる仕組みも構築しました。これらもすべて学内スタッフで制作され、無事に開催できたことに加え、こうしたバーチャルの活用といった知見を得られたことも大きな収穫といえます。こうした知見は、今回は卒展で活用しましたが、今後、音楽や舞台芸術といった領域でも生かすことができることだろうと思います。
 コロナ禍で、あふれる情報から少し距離を置き一人でじっくりと作品について考える、こうした時間が、作品のコンセプトを練り直すことになり、うまくプラスに働いたという側面もあるかと思います。とかくネガティブな状況がクローズアップされがちですが、それぞれが自分にできることを考えた結果、想像していた以上のものになったのではないかと思います。

コロナ禍の中での卒業制作展

アート&デザインセンター 磯部絢子

アート&デザインセンター 磯部絢子
 コロナ禍での開催ということで、感染対策をしっかりと考えて準備をしました。万が一感染者が出た場合を想定し入場者の連絡先がわかるよう受付を一本化、受付自体もできるだけ非接触で行うことができるように手渡す目録などをあらかじめ用意し、例年行ってきたスタンプラリーのやり方も変更するなど、運営方法を工夫しました。展示自体も換気に気を付け、人が密集しないよう会場の作り方にも注意を払いました。もしも感染者が発生した場合、途中で打ち切りになることも考えられ、Web対応を行うことが決定され「WEB卒展2020」と「Nua Art Fair 2020」の制作もありました。これまでは開催するまでの準備が主でしたが、今回は期間が始まってから3Dウォークスルーの撮影がありデータのアップロードやSNS対応、実際の運営についてもシャトルバスが中止になりクルマで来られる方へ駐車場の案内など、期間中も対応にも追われました。昨年までよりもやらなければならないことが増え、たくさんの方々に協力していただき、また、学生たちにも手伝ってもらいなんとか無事に開催することできました。本当によかったです。結果として、学内開催になって最大の数のお客さんにお越しいただき、アートフェアでの売上も過去最大になりました。厳しい状況の中での卒展でしたが、こうした活動を続けることの意味や大切さを一層感じています。

WEB卒展 3Dウォークスルー、VR対応について

デザイン領域 メディアデザインコース 講師 加藤良将

デザイン領域 メディアデザインコース 講師 加藤良将
 今回の卒業制作展では、360度カメラを使用した3Dウォークスルーを制作し、WEBで卒展を観ることができるよう対応しました。制作にあたっては、機材を学内で用意し、3年生の学生が撮影を担当しました。コロナ禍という状況で、実際に展覧会に訪れることができなくなる可能性もあり、こうした対応は必須のことでした。じつは卒展以前に、デザイン領域のレビュー展やナゴヤ展で3Dモデル制作のトライアルを行っており、そこで得られたノウハウを学生たちにフィードバックして制作を行いました。卒展全体という規模、室内に加え明暗差のある屋外の撮影、公開までのスケジュールの短さなど、いろいろと不備な点もありますが、初めてにしてはまずまずのものができたのではないかと思います。バーチャルで見られることで、来年度の卒展に向け3年生がスケール感をつかんだりオープンキャンパスに活用したりと指導や広報など、さまざまな活用が考えられます。画像にキャプションを加え、動画や外部のサイトに誘導することも可能でさらにコンテンツを充実させることもできます。コロナへの対応ということで始まりましたが、リアルとバーチャル、この両方を今後とも意識して対応して行くことがアートに求められるのではないかと思います。

名古屋芸術大学卒業制作展