名古屋芸術大学

マスターtoアーティスト

竹内雅一(たけうち まさいち)

音楽学部教授

 名古屋芸術大学音楽学部器楽科卒業。クラリネットを小松孝文、山田喜代一、千葉国夫の各氏に師事。フランス・ニース夏期国際アカデミーにてジャック・ランスロ、ワルター・ボイケンスの両氏に師事。ベルギー・アントワープ王立音楽院に留学。スペリアルコースにてワルター・ボイケンス氏に師事すると同時に同氏のクラリネットクワイヤーのメンバーとしてコンサート、レコーディング等に参加。フリー・インプロヴィゼイションをフレッド・ファン・ホーベ氏に師事。
 セントラル愛知交響楽団、韓国マサンフィルハーモニーオーケストラ等との協奏曲の共演をはじめ、アジア、ヨーロッパなどで活発な演奏活動を行なう。2007年には、元ザ・スパイダースの井上堯之氏、ピアニストの松永祐未子氏と共に“Feelingly”をリリース。
 指揮活動においては、名古屋市消防音楽隊を始め、数多くのオーケストラや吹奏楽団で客演指揮や指導を精力的に行なっており、名古屋芸術大学ウィンドオーケストラの指揮者として国内はもとより、アメリカ、オーストラリア、韓国、ベルギー、アイルランド、オーストリア等海外での公演を行なっている。2002年には香港で行なわれた音楽祭に招かれ、審査やワークショップ等を行なった。また、オランダのDe Haske社より名古屋芸術大学ウィンドオーケストラを指揮したCDがこれまでに10枚以上リリースされている。
 この他、横浜国際音楽コンクール、大阪国際音楽コンクール等の審査員も務めている。
 現在、名古屋芸術大学大学院音楽研究科・音楽学部教授、クラリネット協会・名古屋理事長、岡崎音楽家協会会員、フランス音楽研究会会員、日本室内楽アカデミー会員。

マスターtoアーティスト

音楽に生きる人

 音楽の話にならない!でも、無類の面白さがある。「学生たちには、コワイ先生と思われてると、思うんだけどなぁ」と言いながらも、絶妙の口調で語られる生い立ち話は波瀾万丈、抱腹絶倒なのである。中学生時代のブラスバンドでクラリネットを選ぶいきさつや、音楽高校を受験するまでで何度も吹き出してしまった。女の子にモテたい気持ちと、4歳から始めていたピアノ、自分の才能への自負心がない交ぜになった中学生時代は、流行の言葉で言えば、中二病。バンドの指導にあたり進路指導でも非常な尽力をしてくれた先生も、名口調にかかればどこかとぼけているように聞こえ、竹内少年を振り回して翻弄する。さらにクラリネットで入学した高校は、音楽科を拡充したばかりの過渡期にあたり、クラスどころか校舎の中に男子学生たった一人という信じられない状況。“ラノベ”じゃないですよねと、問い直したくなるほどだ。「受験したとき、男子は、僕を含めて3人受けていたんです。僕以外のどっちかは来ると聞いていたんですけど、いざ入学式に行ったら男は僕一人! 当時、音楽科は女子部の校舎に所属していて、女子部の校舎に男一人の状態ですよ。最初は、女性恐怖症になって、つらかったです。朝、学校へ行ってもホームルームで先生が来るまで、教室に入れなくて廊下で待機です。大学に入って“男がいっぱいいる”と、俄然やる気が出ましたよ(笑)」

 「高校のとき指導してくれたのは、すごく怖い先生で、山本誘先生というんですが、当時、先生が指導されていたバンドはいつも全国大会で賞を取るような先生でした。『竹内ーッ』と怒鳴られて、太いばちで殴られることもありました。ソルフェージュをたたき込まれたのも山本先生でしたね。高校時代に、大学でもお世話になる山田喜代一先生や小松孝文先生のレッスンを受けていましたが、とにかく山本先生が怖くて、そのために一所懸命に練習していました。先生にはそういうつもりはなかったかもしれないけど、中学の先生もそうだし、山本先生も、そういう先生方に引っ張られてきたんですね」

 大学へは、千葉国夫氏に教えを受けたい一心で本学音楽学部に入学。引き続きクラリネットに打ち込んだかと言えば、そうではないらしい。高校時代から、地元、岡崎市の仲間とハードロックバンド、ディープパープルのコピーバンドを始め、キーボード奏者としてかなり鳴らしていたのだという。「大学を卒業してから2年間くらい活動し、解散したんですけど、それまでにCBSソニーからデビューの話が来たり、地元のアマチュアバンドコンテストの審査員に呼ばれたり、ラジオに出たりと、それでやっていこうと真剣に考えてましたから」 ヤマハのコンテンストでベストキーボーダーに選ばれたほどだというから驚きだ。「大学の頃は、二足のわらじで、両方やってましたね。一時期、学校が疎かになった頃もあったけど、クラリネットの後輩で、むっちゃくちゃ上手くなったのがいまして、これは抜かれると思って奮起したんですよ」

 バンド解散後、クラリネットで生きていくことを決め、大学に研究生ということで残った。ここで助けてくれたのはトランペットの和久田照彦先生だった。「24歳の時、フランスへ行きたいと思ったんですが、お金はないし、家にも言えない。それで和久田先生にお金を借りてフランスへ行ったんです」 2ヶ月間の短いレッスンだが大きな経験になった。師である千葉氏にも多大な支援を受けた。25歳のとき、千葉氏が教授会を説得、助手に昇格。セントラル愛知交響楽団にも支えられた。「普通なら、大学の専任をやりながらオーケストラは不可能なんだけど、寛大に皆が支えてくれた。大学側も若いうちしかできないからと、オーケストラ側も本当なら融通はむりだけど、両方から恵まれて、こんないい人生ないですよ!」 世界的な作曲家 ヤン・ヴァン・デル・ローストとの出会いも、友人であるクラリネット奏者 ヤン・ギュンスと居酒屋で飲んでいる時というから、らしいではないか。特別客員教授だった井上堯之氏の琴線に触れたのも、確固たる理由があったに違いない。

 音楽を愛し、音楽に生きることを選んだ人間を、音楽に生きる人々は捨て置けないのだろう。

1979年の卒業アルバムより。「どうです、いいオトコでしょ(笑)」

1979年の卒業アルバムより。この頃は、ロックバンドとクラリネットで多忙な日々。左から千葉国夫先生、山田喜代一先生、右端が竹内青年。

名古屋芸術大学ウインドオーケストラ 第32回定期演奏会
2013年9月24日 愛知県芸術劇場コンサートホール

竹内雅一 クラリネットリサイタル
2014年1月24日 ザ・コンサートホール

井上尭之(g.vo) 竹内雅一(cl) 松永祐未子(pf)
「井上尭之さんには、ものすごく大きな影響を受けました。65歳で新しいCDを発売したんですよ。学生たちに『俺も今からデビューするから、おまえら抜いていけ』なんて言って。井上さんに倣って、僕も出会いを大切にどんどん仕事を引き受けるようにしています」

Sparkling in the Space
名古屋芸術大学音楽学部 公開講座&コンサート
クラリネット:竹内雅一

ミュージカル公演「Sister's War」
演奏:竹内雅一(指揮・Cl)、名古屋芸術大学ウィンドオーケストラ
出演:名古屋芸術大学ミュージカルコース学生

吹奏楽;ウィークエンド・イン・ニューヨーク(スパーク)
名古屋芸術大学ウィンドオーケストラ・第30回定期演奏会
指揮:竹内雅一 演奏:名古屋芸術大学ウィンドオーケストラ