名古屋芸術大学

NUA OG

石倉悦加

いしくら えつか

アートクリエイター

http://etsukaishikura.com/
1974年
名古屋市生まれ
1996年
名古屋芸術大学美術学部絵画科版画卒業
1997年
名古屋芸術大学美術学部絵画科版画研究科修了
2003年
サンフランシスコcreative growth art centerにて滞在制作
2010年
Remisenデンマークにて滞在制作

Creative Growth Art Centerにて自立した芸術に触発され、絵のほか、アートグッズ、かばん、Web制作など、幅広く活動。
今回、肩書きは、アートクリエイターとしているが、本人曰く、画家、イラストレーター、デザイナー、石倉絵画造形教室のえっちゃん先生……とのこと。活動の幅が広く決められないのだそう。

2016年
個展(新宿伊勢丹ART&FRAME壁面/東京)予定
個展(LOFT名古屋グラフィックス/名古屋)
40cm角の花畑(レイモンド花畑保育園/東京)
2015年
個展(garage/豊橋)
私の一点(織部亭/愛知県一宮)`15.`13
2014年
グループ展(岡山ロフトグラフィックス/岡山)`14.`13
個展(広島SOGOグラフィックス/広島)
2013年
ネコネコいぬ展(art sea/茅ケ崎)
猫フェス(阪神梅田/大阪)
個展(ギャラリー芽楽/名古屋)
個展(名古屋ロフトグラフィックス/名古屋)
2012年
ART NAGOYA(ウェスティンナゴヤキャッスル/名古屋)`12`13
『ぽこぽこ展』(桜ヶ丘ミュージアム/豊川)`12`11`10
2011年
個展(阪神百貨店APJ/大阪)
個展(高島屋air works/名古屋)
個展(ぶなの木/愛知県東郷町)
2010年
個展(高島屋air works/名古屋)
After Remisen(gallery BE/名古屋芸術大学)
個展(岩田屋APJ/福岡)
Remisen(デンマーク)
2009年
個展『portrait』(ギャラリー芽楽/名古屋)
2008年
個展『banbino』(ぶなの木/愛知県東郷町)
2007年
個展『murmur』(ギャラリー芽楽/名古屋)
2006年
個展『Narrative』(ぶなの木/愛知県東郷町)
個展『原画とかばん』(ジェイアール京都伊勢丹APJ)
「Artist T-shirts Bag展」(東京大丸APJ、新宿高島屋エアーワークス)
2005年
「メッセージアート展」(LOFT渋谷・池袋・梅田・大宮・横浜・札幌APJ)
LOFT渋谷店ライブペイント
個展『白山羊家の原画とかばん』(伊勢丹新宿店APJ/東京)
ART LIFE(フォーラムアートショップ/Za Gallery文京)
個展『白山羊家』(ギャラリー芽楽/名古屋)
2004年
Dialogue Project(船橋市民ギャラリー)
2003年
HOT SAKE(Creative Growth Art Center/San Francisco)
INDEX(ギャラリー芽楽+名古屋三菱自動車栄ショールーム)
2002年
家(名古屋芸術大学BE ギャラリー)
2001年
cubic(豊田市美術館ギャラリー)
それぞれの物語(船橋市民ギャラリー)
EXPO FACON JAPON-I-2001(La galeri/リヨン/フランス)
2000年
ベトナムタイ日本現代美術交流展(船橋市民ギャラリー)
Ich ideal(七福邸/江南)
1999年
come across2人展(一宮/織部亭)
Japaness happiness or un happiness展(suandusit Gallery/バンコク)
1998年
30painters展(バングラデシュ)
1997年
交錯のもと(ガレリアフィナルテ)
個展(ギャラリーDECO)
1996年
街はいまアートで溢れる/`96`97(一宮)
1995年
全国大学版画展(町田国際版画美術館)
次代の版画(愛知芸術文化センターアートスペースX)
1994年
K109展/`94`95`96`97(名古屋市民ギャラリー)
PRINTS`94`95(名古屋市民ギャラリー)

動物の力を借りて

『こしょ』水彩2009

 実家の元子ども部屋、自分と姉の育った部屋を改装したというアトリエにお邪魔した。簡素ながらどこか暖かさを感じる心地良い空間だ。“おえかき教室”も同じ場所で開かれているようで、壁には生徒さんのものと思われる子どもらしい作品も飾られている。そして、フレンチブルドッグである。部屋のそこここに、顔が見える。絵の中の空間でひとり遊びに興じていたり、おもちゃのピアノをならしていたり、ぽつんと膝を抱えていたり……。家族が写した幼子のポートレートのように慈愛に満ちた視線で描かれ、なぜか懐かしいような感覚にとらわれる。そして、こちらを見つめる瞳の向こうに物語を感じさせる。

 「大学3年生のときに、版画コースを選択できたというのが運命の分かれ道でしたね」 本学には洋画コースで入学したものの、自分のやりたいことが思うようにできず制作に打ち込めずにいた。どうにかしてそんな自分から脱却したいという思いから選択したのが版画だった。「版画コースに入って版画の勉強をさせてもらって、絵が何枚もできる、そのことが面白くて、面白くて。それから、足跡も版画なんだよという話しから始まって、これも芸術、あれも芸術、それも芸術なんだよ、と教えてもらえたこと。『あっ、私、全然違っていたかも』と思いました」 それまでの、絵画はこうあるべき、芸術とはこうあるべきという芸術の概念にとらわれすぎていた自分に気が付いた。現代美術に触れ、自分が考えていた芸術がいかに偏狭なものだったかに気が付いた。目から鱗が落ちるように思った。

 現代美術の息吹を受け作品は変わっていった。しかし、迷い続けていた。「自分の作品についてもどれだけ語ることができるか、そんな勉強をしながら、すごく頭でっかちになってしまって、当時の作品を見るとコンセプトありきの作品で、目新しさはあったんですけど好きじゃなかったんです。迷って、迷って、何を作っているのか自分でもわからない作品ばかりなんです」 版画コースでの最初の講評会のことが忘れられないという。自分の作品について説明ができず、しどろもどろになり、頭の中は真っ白、半泣きで説明したが何を話したかは覚えていない。

 迷いながら制作を進める中で、ドローイングを体験した。たくさんの絵を描いた。単純な線で自分の気持ちを形にしていくうち、描くものすべてが幼い頃の記憶に結びついていることに気が付いた。記憶を形にとどめていくというテーマを見つけ、制作すること自体にも楽しみを見いだした。大学の4年を終えても研究生として大学に残り、作家として生きていこうと考え始めた。研究生修了後は作家として独り立ちした。作家といっても、ギャラリーでアルバイトし、デザインの仕事も受け、イラストも描くという、さまざまな仕事を受けてのスタートだった。作品の制作を続けていたものの、このまま作家としてやっていけるのか心配だった。そんな中、渡米、サンフランシスコにある 「Creative Growth Art Center」に赴く機会を得た。障害者たちによる、いわゆるアウトサイダーアートに触れ、衝撃を受けた。作品もさることながら、作家たちの制作に取り組む姿勢、一心に打ち込む純粋さに心を動かされた。帰りの飛行機の中で自分を振り返り猛省した。「たぶん、このまま帰っても前と同じようなだらけた生活を送ってしまうと思ったんです。それで、飛行機が日本に着くまでにこれからやりたいことをメモに書き留め、今後の活動を決めてしまおうと必死になって考えたんです」 その中から出てきたのが、もっと自分の思いを代弁してくれるような具体的なものを絵にしたい、という思いだった。そして、Creative Growth Art Centerの作家と作品たちを反芻するうちに“眼のある動物に頼ってみよう”というアイデアが浮かんでいた。帰国後、Creative Growth Art Centerとの交流展が開かれると、そこに登場したのが“白山羊”だった。すこし怖く、優しくもあり、力強い意志を感じさせ、物静かに語る山羊の眼。以降、吹っ切れたように動物の作品を発表していく。

 「フレンチブルドッグは、NYへ行ったときにおじいさんが連れて散歩しているのを見て一目惚れです。トゲトゲの鋲の付いた首輪をしておじいさんのSP気取りでいるのが可笑しくって、可愛くって。それで自分でも飼い始めたんです」 飼っているうちに、表情の豊かさに魅了された。「フレンチブルドッグの眼も妙に人間っぽくて、嬉しいときには嬉しい顔、退屈なときには退屈な顔、人間のような表情をするんです。人間っぽさに気付いて、それでフレンチブルドッグを描くようになっていきました」

 モチーフになっている動物たち、特にフレンチブルドッグは、3歳児くらいの子どもに見立てて描いているという。「自分の犬がモデルのときもあれば、子どもの頃の記憶のときもあるし、自分の子どもやおえかき教室の子どもたちを作品の芯にすることもあります。何をやっているのか、表情や性格を想像しながら描いています」 あらためて作品に目をやると、動物たちそれぞれに異なる表情が宿っていることがわかる。こちらを見つめる瞳に惹きつけられたのは、作者の想像力がたっぷりと注ぎ込まれていたからだとわかった。

影響を受けたCreative Growth Art Centerのアーティストたち

Remisenデンマーク滞在制作

デンマークで出逢った各国の作家、お世話になった方々を描いた作品。ここでしか出来ないものをつくりたいという思いから制作

自分の作品が自分のところだけでなくて別のところで生きていてくれる、ということが大前提としてあります。アートなんだけど雑貨でもあって、手に取りやすいとか目に入りやすい気楽なものであっていいんです。動物の力を借りて語っていく作品作りを始めたら、どっちもやりやすくなりました

『matsu』

Acrylic on Canvas

『coucou』

mixedmedia 2013

『洋なし』

Acrylic on Canvas 2013

『portrait』

Acrylic on Canvas 2009

『空色のくるま』

Acrylic on Canvas 2016

『2016 calendar』より

水彩2015

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