NUA-Student

40号(2017年7月発行)掲載

棚瀨博之
たなせ ひろゆき

デザイン学部 デザイン学科 インダストリアルデザインコース 4年

CGにハマりました

4年生といえば就活。今年は売り手市場というけれど、どう?

じつは、日産テクノという会社に決まりました。日産自動車の子会社で、デザインの一部と設計、実験評価などを行うエンジニアリング会社です。たぶん、デザイナーと設計の間に入るような仕事になるのではないかと。デザイナーの要望と設計の要望がちゃんとマッチするようにすることが仕事なのかなと思います。

おめでとう! なんか余裕のオーラが出てる(笑)。でも、難しい仕事だね。デザインと設計の両方、それなりわからないといけないね。ホンダやスズキのセミナーなんかもあるけど、受けたの?

学校へいろいろな案内や情報が来るので、それを見ながら自分の出せるものには片っ端から出していこうというスタンスでやりました。春のインターンも、8個か9個くらい出して、そのうち半分くらいに通りました。上手い具合に日程が重ならなかったので、全部に出ることができました。

仕事は、自分の希望通りなの?

そうですね。大学を選ぶとき、もともとは工学部に行こうと思っていました。高校3年になって、デザイナーという職業を知りまして、それまでデザイナーというと選ばれた、特異な才能を持った人でなければできない仕事だとそんなイメージを持っていたんです。でも実際に、デザインのことや美術大学のことを調べてみて、ちゃんとデザインという職業の分野があって、訓練をすればなれるような職業であるとわかって、自分は工学よりもデザインの方がやりたいなと思うようになりました。

もともとは理系で勉強してたんだ。美術となると試験にデッサンが必要だけど、大丈夫だったの?

個人的に自分で絵を描いたりすることはなかったんです。学校の美術の時間に描くことくらいで、それでも、小学生や中学生のころ、絵で何回か賞を取ったことがあり、デザインをやりたいと親に話したときも「いいんじゃない」と推してくれました。デザインの方面に行きたいなと考え始めたのが高校3年生の10月とか11月ごろで、とても期間的に無理なので、とりあえず現役のときは工学部を目指して受験してそこで自分が思っていた大学に落ちたらデザインの道へ進もうと決めました。結局、1年間浪人しまして、予備校へいってデッサンや色彩構成とか練習して、そうして、今ここにいるという感じです。

デザインは、やっぱり最初からカーデザインがやりたかったの?

もともとカーデザインは、それほど興味がなくて(笑)。家電とかインテリア、文房具とか、そういったプロダクトの製品をメインでやりたかったんです。1年生はファンデーションの授業でいろんなことをやってみて、2年生になってからインダストリアルデザインコースに入って、片岡先生の話を聞いたりして、プロダクトも好きだけどカーデザインもやってみようかなと思うようになりました。やり始めたらクルマも面白くなって、2年生の後期の授業でRhinoceros(モデリングに特化した商用の製造業向け3次元CADソフト)など3D CADの授業を受けたんですけど、それをやってからのめり込みまして(笑)。今まで、ものを作るというのはリアルで作っていて、試行錯誤しながらたくさん試作品を作ったり、すごく手間と時間がかかりますよね。それが3D CADだったら、その中で自由に調整だとか変形させたりだとか、自分の考えているアイデアをすぐに形にできるし、プレゼンの時にも相手にわかりやすく伝えることができるんです。特に材料とかもいらないしパソコン一台あれば中で全部できてしまって、細かくやるとレンダリングで写真みたいになるのがすごく好きで、かなりツボにハマって(笑)。

3D CADにハマったんだ!

そうなんです。それから、授業をやりながら自分でもソフトをダウンロードして、家でもやり始めました。学校で教えてもらったソフトもよかったんですけど、あまり写真っぽくならないので、自分でCINEMA 4D(3Dモデリング、ペインティング、アニメーション、レンダリング機能が充実したソフト。学生は無償で利用できる)というソフトなんですけど、2年生の終わり、春休み中ずっと朝から晩まで、引きこもり状態で作品を作っていました。平日はずっと朝から晩まで、寝ると食べると風呂以外はパソコンに向かって、2ヶ月かけてできるようになりました。

新世代!(笑) デザインの先生たちは「手を動かせ」っていうでしょ?

はい! いわれますね。でも、こっちの方がいいです(笑)。そうはいっても、工房へ行って実際に木を削ってものを作ったりとかもしていますよ。CGで作るより、実物の方がすごく難しくて、削っているときに割れたりだとか、思っていないことが起きたりします。でも、工房の技術員さんも真摯になってなんとか作れるようにサポートしてくれて、ものすごくよかったです。

就活は終わったし、残るは卒業制作だけだね。

就活が終わるとやることなくなっちゃったなと思ってしまって(笑)。最近では産学協同デザイン企画に力を入れたり、「国際学生EVデザインコンテスト」というのがあるのですが、それに友人とチームを作って参加しています。卒制は、やっぱりCGを使ってなにかやろうと。

手を動かしてなにか作ろうよ(笑)!

●トヨタ車体の産学協同プロジェクト「未来の小型EV」
「都会にマッチしたモビリティ」を考え、最優秀賞をいただきました。都会の問題点を解決するということで、自動運転とカーシェアリングを使い、伸びたり縮んだりして小さいスペースでもたくさん置くことができ、都市内部で移動に使えるモビリティを提案しました

●軽スポーツ
「学校の課題なんですけども、軽自動車のスポーツカーを作るという課題。軽自動車は小さくてカッコ悪いイメージだったんですけど、軽自動車には見えないようなことを考えました。Alias(実際に多くの自動車メーカーのデザインで使われているソフト)を使っています」

●AUDI R8
2年生春休みの引きこもりの成果。Rhinoceros、CINEMA 4Dを使ったCG。クルマだけでなく背景もデザインし制作。「スマホのレーシングゲームに、360度クルマが表示できるのがあって、それを見ながら作りました。特に図面とかなくて、クルクルまわしながら作ったんです」

●Stepen
これは自主制作で、こういう鉛筆置きみたいなものを考えました。Rhinocerosで最初に作ってから、工房へいって実際に木を削って作りました。CGで作るより、実物の方がすごく難しくて大変でした。技術員さんに助けてもらいました

クレイジーアワーズのように文字盤の数字の位置が変わっている腕時計。「仕掛けは単純で、針が長くなっていて、半分は白、半分は黒に塗ってあります。文字盤と同じ色の部分では見えなくなって正しい時間を表示するんです。通常のムーブメントでできる低コストで面白い時計を考えてみました」