NUA-OB/OG

43号(2018年4月発行)掲載

服部隼弥/那須裕樹
はっとり しゅんや/なす ひろき

デザインスタジオ Bouillon(ブイヨン)

2010年
デザイン学部スペースデザインコース卒業
卒業後
フリーランスデザイナー(服部)設計事務所勤務(那須)、本学、デザイン学部助手(共に)を経て、2016年 デザインスタジオBouillon設立

《受 賞》
Salone Satellite Award 2016 . 2nd Prize / 2016
IFFT Young designer award / 2016
《展 示》
IFFS / DESIGN STARS (Singapore 2016)
Salone del Mobile Milano / Salone Satellite (Italy 2016)
Interior Life Style TOKYO / TALENTS (Tokyo 2016)
IFFT Interior Lifestyle Living 2016 / TALENTS (Tokyo 2016)
ambiente 2017 / TALENTS (Germany 2017)
Salone del Mobile Milano / Salone Satellite (Italy 2017)
Salone del Mobile Milano / Salone Satellite is twenty years old (Italy 2017)
CUTTING COMPOSITION Exhibition / セコリ荘金沢 (Kanazawa 2017)
ShopDisplay / IDÉE SHOP Jiyugaoka (Tokyo 2017)
FES Watch U 7 Designers’ Salon / MoMA Design Store (Tokyo 2017)
ShopDisplay / IDÉE SHOP Jiyugaoka (Tokyo 2018)

素材とうま味

 名古屋駅西口、3階建ての建物に事務所があるという。名古屋駅西口はかつては「駅裏」と呼ばれ、東側のオフィス街とは異なり、古くは戦前の遊郭、戦後は闇市、80年代には予備校が建ち並び「親不孝通り」などと呼ばれた場所。その一角に事務所を構える。行ってみると3階建ての1階部分は喫茶店が近日オープンの予定で準備中。階段を上がって2階へ行けば、何もない広いスペースがあり、その奥の壁で仕切られた小さな部屋が事務所となっていた。「ビルのオーナーと知り合いで、改装からビルのコンセプトというとちょっと大袈裟ですが、運営についても考えました。この周辺は、現在大きな企業が買い取って再開発するという状況です。その中で、個人としてこの建物を使っていくということがひとつのチャレンジなんです。さしあたって20年を目標に、時代に沿う形で運営できるようにしようと考えています。どう進むか読めない世の中ですので、あまり固まらずフレキシブルに対応しながら変わっていける空間を作りました(服部)」 なるほど、事務所側から見れば、壁は石膏ボードを固定しただけの簡単なもの。その気になれば、いつでも自由に変えられる構造になっている。

 服部さん、那須さんのお二人は、本学デザイン学部の同級生。入学したときからの付き合いだという。「19歳から、10年以上ですよね。学生の頃も二人で、ああだ、こうだと色々なことをやってきました。デザイン事務所という明確な形はありませんでしたが、何かやっていきたいよね、と話はしていました(服部)」 「僕は、大学を卒業して設計事務所に就職したんですが、やはり、将来のために今のうちに勉強しようと。名古屋芸大には設計の学部がないので、住宅設計であれば法律のことや図面の書き方だとか一から勉強することになります。苦労しましたが、そのとき、修行したことが今に生かせていると思います(那須)」 卒業後、一旦は就職した那須さんに対し、服部さんはフリーランスとして独立した。「普通なら、そこで就職して一旦修業してというようなことを考えるのでしょうが、あまりそんなふうに思わなくて、自分でやってみようということが一番に来てしまいました。企画なり、ワークショップなり、卒業してから僕一人ですけど活動しはじめました。そういう意味では、彼には社会に出てからの師匠がいますが、僕にとっては平田先生(平田哲生教授)や駒井先生(駒井貞治准教授)が師匠なんですよ」
 卒業後、袂を分かった二人が、再び、道を同じくするのが助手の仕事だった。「就職せず自分一人でやっていたので、平田先生もたぶんご心配なさっていたのではないかと思います。年に一度は声をかけていただいて、何かしら関わらせていただきました。その後、3年間、デザイン学部の助手の仕事をやることができて、そこでしっかりと準備することができました(服部)」 時を同じくして、那須さんも助手となる。「僕も、大学の助手で一度戻ってきて、服部君と再会して学生のときみたいに何かやろうと始まりました。今にして思えば、学生の頃にやっていたことが今につながってるんです。僕らが普段やっている業務と大学とやっていたプロジェクトというのは、そんなに差がないですね(那須)」

 彼らの作品には、恩師である平田教授、駒井准教授らの教えや考えが息づいているように思われる。ことに平田教授による常滑でのプロジェクトは、大きな影響を与えたという。「大学2年のときから、二人とも常滑のプロジェクトに参加しています。家具というのは、思うより単純でなく、長く使ったり思い入れがあるものです。プロダクトとなると作り手の見えないものが多いですが、一点、一点、誰かが作っている、そういったプロセスが感じられるようなものが家具にあってもいいんじゃないかと考えるようになりました。結局、4年生になるまで常滑のプロジェクトに参加して、自分たちで展覧会をやったり、町の人に話を聞いたり、今やっていることそのものです(那須)」 

 「ミラノデザインウィーク」若手デザイナーの発表の場である「サローネ・サテリテ」に出品された「Warm stool」も、常滑と直接的なつながりを持つ。常滑で活動する陶芸作家と出会い、産業と深く関わっていた常滑焼の特性を生かしたものとなっている。「サローネに出すということで、素材に対して新しいアプローチが必要だと考えていました。常滑という地域と歴史を知るようになり、本来、常滑の焼き物は工業製品に近いところにあるにもかかわらず現在は工芸的になっていたりします。僕らなりに何か原点回帰できるようなことはないかと考えました(服部)」「焼き物に対して自分たちも深く関わって、素材に対するBouillonというデザイン事務所自体の在り方みたいなものを作り上げたスタートでした。指標になりましたね(那須)」

 公式サイトには、10点余りの作品が掲載されているが、進行中のプロジェクトが今夏あたりから一気に実を結ぶことになりそうだという。
 直情的に行動を起こす「動」の服部さんと、じっくり冷静に考える「静」の那須さんが補完し合う関係かのように見えていたが、話を聞いているうちに、お二人共に同じ熱さを持っているチームなのだと感じた。

Warm stool 2016.04

■焼き物の新たな可能性を探るための家具

常滑焼を使ったスツール。常滑焼の特徴ともいえる“朱泥”を用い、また、産業と関連性の深い常滑焼ならではの技術を活用している。陶器の硬く冷たい印象を、湯たんぽのようにお湯を入れることで、温かく柔らかなものへと変化させている。

Branch Box 2018.02

■東京都の檜原村で育ったヒノキ間伐材の”枝”を持ち手に使用

東京都檜原村のヒノキの間伐材を利用した箱。枝をそのまま持ち手に利用、温かみのある形に。一本、一本、表情が異なるところも魅力。

Baton Series 2016.09

■アップサイクルの視点でデザインした家具のシリーズ

良品計画のライフスタイルショップ「IDÉE」が取り組むアップサイクルをテーマにしたプロジェクトのシリーズ。廃棄される予定のパイプ椅子に籐の座面と背もたれを施し、新たな品質と付加価値を与える。工業製品と籐という日本の伝統工芸をマッチング。

Extra 2017.03

■丸太をまるごと使用した家具の提案

製材の際に切り捨てられた丸太の端材を利用した家具。丸太のサイズに合わせたスチールフレームを組み合わせたシンプルな構造。やはり、一つひとつが異なる表情を見せ、それぞれに個性があることが魅力となっている。