NUA-Student

45号(2018年10月発行)掲載

岩谷莉奈
いわたに りな

音楽学部演奏学科 弦管打コース 3年生

ファゴットの魅力を知って欲しいんです

楽器を始めたのはいつ?

母親が子供に音楽をやらせたいという気持ちがあったようです。小学校に入るタイミングでピアノを習い始めました。三重県の鈴鹿なんですけど小学校のときにショッピングモールなどで白子高校の吹奏楽部の演奏を見かけるんですよ。それを聞きに行ってかっこいいなって。それで楽器をやりたくなって、中学校に入って吹奏楽部に入りました。最初はサックスを吹いていたんです。

ファゴットはいつから? 白子高校の吹奏楽コースなんだよね?

中学校を卒業する頃、白子高校に進学することが決まっていて、白子高校の卒業演奏会というのがあるんですがそれを聞きに行っていたんです。そうしたら高校の顧問の先生に呼ばれて、「ファゴットやらない?」といわれて。それまでにも同じ年に入学する子たちと練習する機会があったんですけど、私がやっていたテナーサックスは4人ぐらいたんですよね。サックスはそんなに要らないので、誰かがほかの楽器に回されるだろうなと思っていたら、私が声をかけられた(笑)。それで変わりました。

サックスのほうがやりたいなんてなかったの?

最初は未練があったんですけど、メロディーをやるより支えをするほうが好きだったので、テナーサックスもどちらかというとオブリガートが多い楽器だったので、下に行くことは苦じゃなかったんです。姉がいるのですが、バスクラリネットを吹いていて同じ木管低音かぁ、そこでちょっと渋りました(笑)

楽器は自分の? 高いんでしょ??

そうですね。今年の春にやっと買ったんですけど、買うことにすごく迷ったんですよ。でも、先々、将来のことを考えたら買ったほうがいいと思い切りました。まずは楽器を選びに行って、分割で払うとしたら幾らくらいか、頭金がある場合とない場合と、いろんな支払いパターンを、楽器屋さんに相談してたくさん考えてもらって、そうやって資料を集めて全部資料がそろった状態で、両親に相談しました。その資料を集めてから話を切り出すまで、結構、時間がかかったんですよ(笑)

そんなにいろいろ考えたの!?

どうやって相談しようか、シナリオを考えましたよ。どうやって両親に説明したらいいのか、反対されないか、めっちゃ考えました。まず話を聞いてもらう雰囲気を作らなきゃいけないと思って、家に帰った時点で「話したいことがある」と宣言しご飯のあとに時間を作ってもらって、卒業しても楽器を続けたいと思っているという話をして、それを考えたら今のうち4年生からではなく3年生のうちから楽器があったほうがいいと。4年生にベストを持っていくなら今しかないという話をしました。そこから、自分に合うと思う楽器がいくらするのかと、楽器屋さんで考えていただいた頭金ありとなし、それから 5年と4年半と4年という期間の支払いパターンで月々の返済額がいくらになるのか利子はいくらになるのか、そういう話をしました。利子のことは、両親のほうがわかっていますし、そこは完全に相談状態ですけど、私のバイト代で返済して、足りない分の頭金や返済のことをお願いしました。

スゴイ! 戦略家!!

じつは、大学に入るときにリサーチ不足だったのでその反省なんです。姉は、音大に行きたいのを反対されてわりとすぐに断念したんですけど、それを知っていたのでずっといい出せなくて……。でも、師匠(依田先生)のレッスンを受けるたび揺らぎに揺らぎまくって、一度軽めに両親に音大に行きたいと話してみたら、父からものすごく反対されたんです。そのときが、リサーチ不足で、そのときの反省で今回の楽器の購入に生きてきました(笑)

じゃあ今もバイト代で返済してるんだ。卒業してからしっかりお金を稼げるようにならないと!

そうなんです。まだ3年生なのではっきりと決めてはないんですが、今のままバイトを掛け持ちしながらレッスンに行く時間を作りつつ働くか、講師登録をして音楽の先生をやりつつ指導に回るか、みたいな道を考えています。じつは両親にも少し相談したのですが、30歳からは就職が難しくなるので30歳までに確実な道を決めなさいと、そこまでは挑戦していいよといわれてるんです。

先生になりたい?

学校の先生になりたいわけじゃないんですよ。部活の顧問とかに就くのではなく、もっと幅広くやれないかなと思っています。最近三重県の高校に指導にいったりしているんですけど、ファゴットって本数が少なくて指導者があまりいなくてとてもかわいそうなんです。自分でリードを調整できる楽器なのにやり方がわからない。複雑な仕組みの楽器で、楽器に合わせて正規の指使いではなく、変えなきゃいけないところがあるんです。そうしないと音程が合わないこともすごく多いんですが、それを知らないから正規の指使いだとか、先輩からの伝統で間違って伝わってきているような指を使っていたりとか、そんな感じなんです。そうした中高生たちに教えていきたいなという気持ちがあります。吹奏楽もなんですが、ファゴットの指導していきたいですね。

演奏家よりも指導者?

プレーヤーではないですね。自分で演奏するよりは、後進の指導にあたりたいと思ってます。もともと教えるのが好きなこともありますし、自分がプロになってヒイヒイいいながら曲をさらってる姿を想像するよりは、三重県の子たちに教えている姿のほうが自分で想像しやすかったというのもありますね。今、教えに行っている子たちを見ていて、この子たち以外の子にももっとファゴットを続けて欲しいし、楽しいと思って欲しいんです。

卒業してからの給料が心配だなあ……

やりたいことをやるためには頑張るしかないなと。あがくしかないなと思ってます。高校の顧問の先生が、三重県全体を通してのいろいろな企画に携わっているので、教育実習に行くときに先生にお話をして活動していこうと思っています。まずは顔を売ってきますよ!

今悩んでることはリードですね。ダブルリードって自分で作るんですけど、試行錯誤中で安定しないんですよ。今週末に本番があって、来週再来週とオーディションがあって、その次の週は自分で受けたコンクールの本番があってみたいな。今、本番に追われる時期なのですごく心配です。

2018年3月28日に行われた6重奏の演奏会「フランスに憧れて〜ピアノと木管五重奏のたのしみ〜」の広告の1枚

室内楽の夕べ 2017でプーランクの6重奏曲を演奏

「フランスに憧れて」の演奏後に先輩方と撮影