NUA-Student

48号(2019年7月発行)掲載

橘川宗明
きつかわ むねあき

芸術学部 芸術学科 音楽領域 ポップス・ロック&パフォーマンスコース 3年

自分で新しいことを

アコーディオンが専門なんだよね。始めたきっかけは?

祖父が趣味でアコーディオンをやっていて、弾いているところを見ていましたし、発表会なども見に行きました。ピアノよりもアコーディオンのほうが、ずっと身近な楽器でした。祖父はもう亡くなってしまいましたが、祖母に「アコーディオンをやりたいようならやらせてやって」と話していたそうで、その話を聞いて習い始めました。たまたま、祖父が通っていた教室が、アコーディオン奏者のcobaさんが若い頃に教わっていた先生の教室で、そういうご縁があって、そこに通うことになりました。

アコーディオンのイメージはどう? cobaさんのイメージがあると、けっこうイケてる感じ?

いろんなジャンル、オールジャンル弾けるというイメージですね。よく「小さなオーケストラ」といわれますが、右に鍵盤、左にボタンがあって、音色を両方変えられるんです。弾ける曲の幅が広いですし、ひとりで伴奏ができます。演歌から、ジャズ、ポップス、最近では、いろんなジャンルで使われるようになってきています。

大学に入るまでは、どんな音楽をやっていたの?

アコーディオンの作曲家が作ったアコーディオンのための楽曲、アコーディオンのトラディショナル的な楽曲ですね。

アコーディオンのための楽曲! 有名な曲ってあるの?

どうでしょう。みんなが知ってるようなのはないんじゃないですかね。ピアノはみんな、バッハやモーツァルトの曲を知っていますけど、アコーディオンの有名な作曲家は楽器の知名度的にもそんなに知られてないですよね。ポップスやジャズなどは大学に入るまでは全然やっていなかったです。

ピアノだと途中でみんな嫌になったりするんだけど、どうだった?

ありますよ、普通に。もうやめたいと思ったこともありましたし。JAA(日本アコーディオン協会)のコンクールに3回出ているんですけど、2回目に、アメリカ人の子に負けたときは、一撃を食らった感じがありましたね。自分としては万全の状態で臨んだつもりだったんですが、やはり「世界」となると、自分の実力のなさというか技量のなさ、聴いていてわかる差があってダメだと。普通に泣きました。自分のことをジュニアでは最強だと思っていましたから。

これから先、プロを目指すんだよね。どんな曲をやっていきたい?

ポップスの世界でもアコーディオンがだんだん使われるようになってきて、CMなんかにも使われていますし、そういうところも弾いていけたらいいなと思っています。ジャズも頑張りたいし。絞らずにオールラウンダーで、何でも弾ける人になりたいですし、何か新しいことにもチャレンジしなきゃなと思っています。楽曲だけでなく、自分で自分のアコーディオンを作りたいと考えているんです。型も音色もデザインして、自分用のアコーディオンを作って演奏する。これはまだ誰もやっていないんです。いろんなことをやっていけたらと思っています。

アコーディオンの布教活動は?(笑)

去年ですけど、名古屋市から、小学校で「アコーディオンとは何ぞや」といったレクチャーと演奏をして欲しいという依頼が来まして、やらせていただきました。小学生の子たちが、とても喜んでくれてよかったです。お客さんの前で演奏するときには、ときと場所に応じて選曲を変えるようにしていますが、小学校なので童謡を入れたりしました。「小学校にあるアコーディオンは、赤や緑できれいなやつだと思うけど、僕が使ってるのは左側にベースボタンが付いていて楽器の重さも違うんだよ」というところから始まって、「左手がある分、弾ける曲もたくさんある」ということを一から説明しました。

そんな依頼が来るんだ!

ほかの楽器でもそうなんですが、コンクールに優勝すると、学校でNEWSとして取り上げられたりするじゃないですか。それを見て仕事のオファーが来たりしますので、本当に感謝です。
演奏でいえば、先日、初めてワンマンライブをやったんですけど、そのときも、これまでにないようなことをやりたいと、いろいろなことをやりました。ホールではなく、もともとは写真スタジオだったところで、壁も天井も真っ白なんです。白いので、そこに映像を流して、映像に合わせて弾くような演出にしました。来てくれた人が、耳だけでなく、五感で感じられるような演出です。映像は、知り合いに頼んで撮影してもらいましたが、チケットを刷ったり、チラシを作ったり、衣装を選んで曲に合わせて着替えたり、全部自分でやったのでめちゃくちゃ大変でした。写真スタジオなので、照明や音響の設備もなく、照明はエンターテインメントディレクション&アートマネジメントコースの友達に手伝ってもらい、そのまた知り合いのところで借りて、搬入とかも一緒にやって、本当に大変でした。でも、裏方の仕事を知ることができて、とても勉強になりました。そういう面でも、自分でどんどん新しいことをやっていけたらなと思っています。

ライブ、継続していけるといいね。でも、お願いするところはお願いしないとね。大学で知り合いができてよかったね!

本当によかったですよ。視野が広がりました。特に、自分はアコーディオンの曲しかやってこなかったので、クラシックをやっている人もいれば、ポップスをやっている人もいるし、それこそ照明の勉強をしていたり、ステージのマネジメントを学んだりしている人がいて、いい刺激をもらって、自分もがんばらなきゃと思いますよ。

演奏活動も忙しそうだけど、学校の授業は? 3年生だと余裕が出てきたところかな?

それが、教職課程も取っていて、いままでで一番忙しいです。いま、先生になる気はないんですけど(笑)

えええ! 教職、いらないでしょ(笑)

いやいやいやいや、あったほうがカッコよくないですか。何に生かせるかわからないですけど(笑)
忙しい理由は、英語の聴講もやっているからなんですよ。春休みに海外へ行って、絶対に必要だと思いました。それまで、アコーディオンが弾ければ英語はいらないだろうと思っていましたが、行ってみてわかりました。絶対にいります! 英語はマジでやらないといけないなと思ったので、授業を受けています。

欲張りだねえ。ガンバッテ!

2018年5月18日、名古屋ボトムラインで開催されたcobaさん主催のライブイベント「Bellows Lovers Nigh」の名古屋公演後にcobaさんと。

2017年10月、第7回JAA国際アコーディオンコンクール第一位受賞。「3回目のチャレンジでやっと1位を取れたことに嬉しい反面ほっとした気持ちもありました。達成感もありましたし、何より親が喜んでいる姿を見て、少しは親孝行出来たかなと思いました。」

ライブ会場は元写真スタジオで、壁も天井も真っ白。そこに映像を流して、映像に合わせて弾くような演出に。

ワンマンライブの様子が2019年5月19日(日)の朝日新聞「令和の旗手たち 多彩な音色 魅力伝えたい」という記事として紹介されました。

「10km -L.Fancelli」2018年5月18日開催
coba氏主催 Bellows Lovers Night名古屋公演にて