山田念珠堂 × ライフスタイルデザインコース 「香と線香の新しい作法 -catalog of ideas 2023」 線香の新しい魅力を提案

 ライフスタイルデザインコースでは、大阪上本町の株式会社 山田念珠堂様からの依頼を受け受託事業として、新しい商材の企画、情報発信などのアイデアを提案するプロジェクトを進めています。昨年は、念珠(数珠、珠数、じゅず)に関連する商材の提案を行いましたが、今年度は山田念珠堂が運営する線香のお店「あさん堂」とコラボレーションし、香と線香に関連する商材に取り組みました。線香は、大阪府堺市の工芸品で「堺線香」として大阪府知事指定伝統工芸品にもなっています。学生たちは、2023年6月に堺伝匠館を訪れ線香の製造現場の見学と香の製作体験を行い、香や線香そのものを知ることからはじめました。さらに堺市という場所と線香とのかかわりにも知見を広め、香や線香の歴史を踏まえたうえで現代の生活にマッチした新しい商材を考えました。

 2023年11月15日(水)に、山田念珠堂 山田弘樹様、堺線香伝統工芸士 鈴木壯一様をお招きし最終のプレゼンテーションを行いました。参加した学生は、ライフスタイルデザインコース 3年 奥田 ひなたさん、波多野裕恵さん、2年 鴨下ゆうさん、長岡知里さん、松尾賢さんの5名、さらに助手の2名を加え、17の提案を行いました。
 香や線香の使われ方としては仏事や神社を連想しますが、香りを楽しむことや燃え尽きるまでの時間で時計として使うなど、昔からさまざまな行われ方をしてきました。そこから派生し、煙が消えることを消滅することや浄化することに見立てた提案、自由に好きな香りを作ることができるキット、線香を立てることの意味を広げ日常生活の中で使うための道具、煙を見て癒やされるインテリア、文芸ライティングコースと協力し香りに関連したショートストーリーと一緒に販売する案、擬人化してキャラクターにする案など、文字通りさまざまな17の提案が披露されました。いずれの提案にもサンプルが試作されており、実際に手にとって見ることができるようになっています。プレゼンではひとつひとつの作品に対し「これは考えたことなかった」や「これはすぐに採用できる」といった声や、さらにブラッシュアップする部分への言及もあり、まさに商品開発のブレインストーミングを行っているようになりました。

 山田さんからは「若い皆さんには難しいテーマだったと思いますが、それぞれにキーワードを見つけ提案していただき皆さんの努力がよく見えました。昨年の数珠の提案よりも、線香という機能を重視した提案だったように感じます。印象的だったのは、手紙に封をするための蝋のようにする“封香”、見た目は線香ではないように見えるもの、こうしたものはお客さんに先入観なく受け入れられ線香のイメージを変えられるのではないか可能性を感じました」と講評をいただきました。
 鈴木さんからは「本当に頭が下がるほどのアイデアをいただきました。これまで線香にかかわって来ましたが、煙の少ないお線香以外で新しい商品というものはありませんでした。自分でも新商品をいろいろ考えてみていますが、どこから手を付ければいいのかと思いあぐねていました。最近になって、お線香に物語を作ること、SDGsであるとか東北震災の復興祈念で売上の一部を寄付するであるとか、このお線香はこういう物語の上にできましたと、そんなふうになっていくのかなと思っています。そういう点でも新しいアイデアをいただいたように思います。すぐに商品化できるものではないかもしれませんが、これらのアイデアにひと味ふた味プラスすることで素晴らしい商品が出るのではないかと可能性を感じています。本当にありがとう!」と言葉をいただきました。
 萩原周教授からは、「できあがったカタログと試作品をお送りし、商品化はもちろん今後お役に立てることには協力いたします」と約束し、プロジェクトは終了となりました。
 学生からは「こうした順序立ててやっていくのは苦手でプロジェクトは良い経験になった」「大きなプロジェクトに参加するのは初めて、ほかの人の作品もすごく参考になった」「伝統的な線香というものをデザインし直す難しさを感じた、魅力を再認識することも多くあり良い経験になった」「家族と線香について話すことにもなった、知らないことを知ることができた」などの感想が聞かれ、プロジェクトを済ませた安堵感とともにさらに線香への興味が増したと話し、充実したプロジェクトなったことを感じさせました。