多治見市モザイクタイルミュージアム「モザミュータイルラボ・リレープロジェクト」 最終プレゼンテーション タイルで作る楽器を提案

 デザイン領域 スペースデザインコースでは、多治見市モザイクタイルミュージアム、名城大学理工学部建築学科と連携し「モザミュータイルラボ・リレープロジェクト」に参加、2024年4月16日(火)多治見市モザイクタイルミュージアムにて関係者を招き最終プレゼンテーションが行われ、作品を展示し新たなタイルの魅力を伝える提案を行いました。
 「モザミュータイルラボ・リレープロジェクト」とは、モザイクタイルミュージアム、タイル産業関係者、大学が連携し、多治見市モザイクタイルミュージアム2階の産業振興展示室を刷新し、新たなタイルの魅力を発信してていく取り組み。2023年度から5年間継続して行われる事業で、今回がその第一回となります。本学スペースデザインコースの4年生、小松千聖さん、中嶋凌さん、秦慶次郎さん、松井花歩さん、南川凜々香さん、村井琴音さんの6名がプロジェクトに参加。昨年春から工場見学、フィールドワークを行い、タイル製造の背景や地域性など関係者や地元の方と交流しながら学び、タイルの魅力について考えてきました。タイルの可能性を広げ親しみがわくような作品として、タイルを叩いたときの音に着目し、素材としての面白さを際立たせる楽器を考案しました。

 プレゼンテーションに先立ち、まずは作品の設営を行いました。楽器といっても単純な構造で、スチール製の支柱に糸でタイルを吊したもの。支柱1本がひとつの音となり、歩きながら順番に叩いていくと音階になっていてドイツ民謡の「山の演奏家」が奏でられます。
 支柱の加工は、学生たちがパイプを加工、溶接して作成したもの。音程で長さが変えられており、視覚的にも音階の違いがわかるように設計されています。支柱の間隔が曲のリズムになるため、慎重に測りながら設置します。完成した作品は楽譜のようにも見えます。。屋外に設置しても変質しないタイルの特長、また、そのまま吊すだけということが返って素材感を際立たせ、タイルの特質を上手く生かした作品となりました。

 夕刻からのプレゼンテーションには、多治見市モザイクタイルミュージアム代表理事 長江陶業株式会社 虎澤範宜さんをはじめ、工場見学でお世話になった株式会社カクジン 水野晶太代表、有限会社YMM 前田市朗常務、杉浦製陶株式会社 林航代表、有限会社丸万商会 古田由香里代表といった、多くのタイル産業関係者が集まりました。
 プレゼンテーションでは、工場見学、フィールドワークと自分たちが経験してきたこと、フィールドワークで集めたタイルを袋に入れたときの心地良い音が作品のきっかけになったと説明されました。
 2023年7月に行われた中間プレゼンテーションでは、タイル製造の特徴を生かした家具、タイルの製造工程を体験するワークショップ、タイルを使った楽器の3案を提案しました。3つの案から、楽器に絞り込み、たくさんのタイルを提供いただき音階のチェックを行い、最終的な作品に仕上げました。素焼き、せっ器(陶器と磁器の中間的な性質を持つ焼き物)、磁器、陶器の音の違いや、釉薬の有無などの違いなど、細かく調査したことなどが紹介されました。そして、タイルを飾りで終わらせず建材としてだけでないタイルの可能性を広げたい、とプレゼンをまとめました。
 説明を終えたところで全員で屋外に移動、楽器を実演しました。木のバチを持ち歩きながらタイルを叩いていくと、見学者から思わず声が上がります。丸万商会 古田さんも「こんなきれいな音がするとは思わなかった」と驚いた様子。音を聞いてもらいプレゼンテーションは終了の予定でしたが、試してみたいと声があり、見学者がかわるがわるバチを手に音色を体験、好評を博しました。虎澤代表理事からも「タイル感謝祭でも、ぜひお客さんに観て欲しい」との声があり、急遽、タイル感謝祭でも展示することに決まりました。
 質疑応答では「タイルの展示としても面白い、サンプルの見せ方の参考にしたい」「吊すことや音を出すこと、これまでまったく発想しなかった、とても良いと思う」「楽器という発想はなかった、モザイクミュージアムができて機会が増え、いろいろな使い方が考えられるようになった」「メーカーはどれだけたくさん作るかということばかり考えているので、楽器という使い方には大変驚いた。SDGsの考えやアイデアがあったらぜひ教えて欲しい」「タイルを叩くと音が違うということは誰でも知っていますが、よくここまで突き詰めて曲ができるまでやったと感動しました」「発想がすごく楽しいです。年齢関係なく子どもたちも体験できる、いろいろな方に知ってもらえることになれば産地の作り手としても嬉しい」とたくさんの感想をいただきました。ディスプレイに活用したいという声が多くあり、非常に意義深い提案になりました。
 プレゼンテーションが終わってからも展示を前に、和やかな交流会が続きました。