テキスタイルデザインコース、尾州フェス「一宮モーニング」プロジェクト、宮田毛織を訪問、工場見学、生産打ち合わせ

 テキスタイルデザインコースでは、一宮市から依頼を受け尾州産地の魅力をアピールするファッション・アートイベント「BISHU FES.」に参加、関連イベントである「まちなかアート展示」で、一宮モーニングをテーマにオリジナルテキスタイルを制作し本町通り商店街に展示します。2024年7月8日(月)学生は、一宮市のニット生地メーカー、宮田毛織工業株式会社様を訪れ、工場を見学させていただき、制作したい生地のデザインを見ていただきました。

 「まちなかアート展示」では、各自1.5m×5mのオリジナルテキスタイルを展示する予定。尾州というと織物ですが、今回、3名の学生は“編み”であるニット生地を使った作品制作にチャレンジしています。ご協力いただくのが、国内でも有数の規模を誇る宮田毛織工業株式会社様。ウール、綿、化学繊維などさまざまな素材を使いニットを生産、世界の多くのアパレルメーカー、メゾンでも採用されています。  テキスタイルデザインコース 3年生の荒木望那さん、川松紗彩さん、清水咲和さんの3名が宮田毛織を訪れ、デザイン画とその源になっているコンセプト、作品のイメージとなるムードボードを手にプレゼンテーションを行いました。対応していただいたのは、取締役専務 宮田貴史さん、企画室 デザイナー 山田恵子さん、森山茉弥さんの3名。森山さんは、本学テキスタイルコース卒業生で学生たちとって直系の先輩にあたります。
 プレゼンテーションに先立ち、宮田さんから宮田毛織の概要を説明していただき、工場を見せていただきました。宮田毛織は1954年創業、初期は毛織物も手がけていましたが早い段階でニット生地へと移行、現在は丸編み機を140台以上保有するニット生地専業メーカーとなっています。今回対応していただいたデザイナーの山田さん、森山さんを含め7名のインハウスデザイナーが在籍し、オリジナルの生地作りを行いアパレルメーカーへ提案できるところが強みであり、安価なアジア製品と競合しないウールなどを使った高級品を生産しています。国内外のアパレル、昨今では特にゴルフウェアのブランドへの提供が増えているとのことです。
 工場見学では、実際に丸編み機が動いているところを見せていただきました。本社工場だけで100機ほどの丸編み機があるといいます。シングル、ダブルとそれぞれ編み方によって編み機が分けられ、なかには世界で数台しかない珍しい編み機もあるのだそう。印象的なのは資料室。これまで生産された数多くのサンプルが保管されています。流行は10年以上の周期でリバイバルするので、創業当時からのサンプルが必ず役に立つと、大切に保管されていました。

 工場見学のあとは打ち合わせです。実際に業務での打ち合わせに使うさまざまサンプルが用意されている会議室で、まさに仕事さながらの打ち合わせとなりました。まずは学生が用意してきたデザイン画を説明、どんな色合いがいいのか、また質感やニット組織はどんなものを狙うか、など双方が出来上がりを具体的にイメージしながら素材や編み方を決めていきます。学生から、どんなイメージの作品にしたいかが丁寧に説明されました。荒木望那さんは、一宮の喫茶店でよく使われているウッディな内装とそこから受けるゆったりした温かみを表現し、ハワイ語で心地良いという意味の「Olu Olu」という作品。木目を感じさせる地に食べものを配置するデザインです。川松紗彩さんは喫茶店の温かみややすらぎを感じつつ、一宮モーニングのバラエティや楽しさをカラフルな色合いで表現した「Yippee」。清水咲和さんは、そのものズバリの小倉トーストとゆで玉子をモチーフとした「もぐっ」。ムードボードの写真も美味しそうです。
 宮田さん、山田さんから、はじめにシングルニットとダブルニットの説明を受け、どちらを選ぶのか、まずそれを決めるように指示がありました。シングルニットは1列の針で編まれるシンプルな編み方でデザインの自由度が高くなり、ダブルニットは裏表を別に編み込む方法でシングルよりもふっくらした厚みの生地を作ることができデザインに合わせて表面に凹凸を作ることもできます。ただし、デザインに制約があり、学生3名のイメージしていたカラフルな柄を再現するために、ダブルニットの中でも5色の糸を使い分けられるフラットなジャカード生地での対応となりました。
 次に糸ですがフラットな組織の中でも極力凹凸感を表現できるように川松さん、清水さんの作品はグランドに伸縮性のあるポリエステルを採用し、加工と糸の番手差で柄が浮き出るような手法を採用、荒木さんの作品は温かみを持たせたいという要望からウールを使用した冬っぽい糸素材を採用しました。
 最後に色見本を見ながら、糸の色を決め、打ち合わせは終わりました。今回は納期が9月中旬となるため時間的に既製品の糸から選びましたが、糸を染色して自由に作ることも可能とのことで、高級ニット生地の世界の一端を感じることができました。
 打ち合わせもまさに実際の仕事と同じような雰囲気で、学生にとって貴重な経験となりました。