本学デザイン領域と中部文具工業組合加盟の文具メーカーとの連携プロジェクト「2025 文具デザインプロジェクト」の最終審査発表会が、2025年6月4日(水)にシヤチハタ株式会社にて開催されました。4月のキックオフから始まったプロジェクトは2ヶ月あまりと短い期間でしたが、学生それぞれが身近な事柄や社会から問題提起、ニーズ調査やターゲットの想定を繰り返し行い、デザイン案に落とし込んで提案を行いました。なかにはモックアップを作成した熱の入ったアイデアもあり、最終のプレゼンテーションは大いに盛り上がりました。
今年度の課題は、シヤチハタ株式会社「あってよかった!インクを使ったアイテム」、森松産業株式会社「もしもの時も、普段の時も快適に。フェーズフリー防災アイテム」の2つ。今年度は20名を超える学生の参加があり、すべての提案を発表する時間がないため事前に一次審査を行い、シヤチハタ株式会社の課題に対して12案、森松産業株式会社の課題に対して11案、合計23案のプレゼンテーションを行いました。
発表に先立ち、シヤチハタ株式会社 舟橋正剛 代表取締役社長から「このプロジェクトからヒット商品が出ていますので大変期待しています。課題テーマは難しくなってしまいましたが、それは、ヒット商品を生み出すのがとても難しいことを意味します。皆さんの自由なアイデアへの期待の表れだと理解してください。本日のプレゼンテーションを楽しみにしているのでよろしくお願いします。」とアイデアへの期待の言葉がありました。
プレゼンテーションは、発表4分+質疑応答3分で進行しますが、審査も真剣、ときにブレインストーミングのような質疑応答にもなり、時間をオーバーするのは例年のこと。今年も休憩をはさみ3時間を超える長丁場の審査会となりました。商品化を目指すプロジェクトなので具体的に提案を紹介することはできませんが、学生それぞれ自身の経験を基にした提案や社会課題の解決を目指すアイデアなど、いずれも非常に説得力のある提案となりました。プレゼンテーションも、よく検討されており白熱したものになりました。シヤチハタ、森松、どちらの課題も難しいものですが、学生らしいユーモアあふれる提案もあり、終始和やかな審査会となりました。
審査の結果、メーカー賞 シヤチハタ株式会社賞は土田光稀さん「水や手で擦っても落ちない、洗剤で洗うと落ちるインク」、メーカー賞 森松産業株式会社賞は村瀬史佳さん「お弁当の保冷剤が災害時にポータブルクッションになる」、そして、最優秀賞は花井雪乃さん「Inkind」に決定しました。最優秀賞の「Inkind」は、インクを使った簡易な検査キットを想定したもの。体温測定、マラリアの媒介となる蚊の虫除け、血液型検査、妊娠検査、紫外線測定などを行えるようにするもので、途上国や被災地、紛争地域などでの使用を想定したものです。審査員からも「崇高な考えに驚きました。ひとつひとつ、技術的に実現できるかは分かりませんが、考え方は本当に素晴らしいと思います」と感嘆の声が上がりました。
審査を終え講評では、森松産業株式会社 森直樹 代表取締役社長から「今回の審査では、本当にいろいろな意見が出ました。最優秀賞の『Inkind』では、たくさんクリアしなければならない技術がありますが、まずアイデアをデザインするということが大切であると考え、選ばせていただきました。日本は個々の部品の技術は高いものの、全体的なアイデアやビジョンを考える部分で欠けていると言われます。いろいろな技術を組み合わせた上で一つの大きなプロダクトを作る、そのようなデザイナーがたくさん出てきてくれるとすごく良いなと思います」と評価しました。シヤチハタ株式会社 佐藤旭 取締役からは「近年、稀に見る侃々諤々とした議論により、今回の結果となりました。実現性をどこまで重要視するか、またはコンセプトが大事か、そうした議論の末の選考結果です。点数は僅差でしたが、アイデア、プレゼンテーション、資料、さまざまな部分を評価し、この結果になりました。例年、審査に携わらせていただいていますが、非常にレベルが上がってきているように感じます。私たちでは思いつかないような発想にいつも感心します。ぜひ、来年もチャレンジしていただきたいと思います」と講評をまとめました。
最後に三枝樹成昭 講師から「今回は非常に難しい課題でした。いろいろ評価いただいて、とてもコンセプチュアルな作品が通ったということを、僕自身も非常に嬉しく思います。シヤチハタさんは、今年、創業100周年ということで、これを機になんとか面白いアイデアでサポートできればと思っておりましたが、それを果たせたのかなと思っております。また、森松さんには、PVC Award(PVC(塩ビ素材)の特長及び機能性を活かして、生活の利便性向上や環境配慮・リサイクル・安全・防災など社会のニーズに応える新しい製品を公募し魅力ある製品を表彰する隔年開催のアワード)に、今年の提出作品から選んでエントリーさせていただきたく考えております」と、連係でのPVC Awardへエントリーの発表がありました。
これまでの新しい文具を考えるという枠を越えさらなる進展を感じさせる最終審査発表会となりました。非常に充実した内容に盛会のうちに終了しました。