舞台芸術領域・浅井信好准教授 総合ディレクション
「シシシ祭2025」 中川運河で地域とともに新たな祝祭を創出

 2025年11月2日(日)、中川運河沿いのPALET.NU(名古屋市中川区広川町)にて、舞台芸術領域・浅井信好准教授が総合ディレクションを務める「シシシ祭2025」が開催されました。名古屋芸術大学と地域、行政が連携し、芸術の力で地域文化を再生する取り組みとなり多くの来場者で賑わいました。

 「シシシ祭」は、かつて中川地域で盛んに行われていた獅子の練り歩きの文化に着想を得て企画された祭りです。時代の変化とともに使われなくなった各地の獅子頭を新たな地域資源として見直し、アートとまちづくりを結びつける試みとして誕生しました。会場には、中川区内3つの学区(愛知・露橋・広見)から集められた約100体の獅子頭が並びました。
 かつて地域で活躍した獅子たちが一堂に会する光景は壮観で、「懐かしい」「この地域にも昔はあった」といった声が多く聞かれました。失われつつあった風習を現代のアートフェスティバルとして蘇らせる、その象徴的な展示となりました。

 午後5時、メインプログラムの「獅子踊り」がスタート。この演目は、浅井准教授が構成・振り付けを担当し、9月から地元の子どもたちと共に練習を重ねてきたものです。
 舞台上では、まず子どもたちが元気いっぱいに走り回り、その躍動に呼応するように眠っていた獅子頭がゆっくりと動き出します。浅井准教授が操る大獅子が目を覚まし、舞い始めると周囲の獅子たちも覚醒。子どもたちと獅子が一体となって踊る幻想的な光景に、会場は歓声と拍手に包まれました。浅井准教授の舞う獅子は圧倒的な存在感を放ち、観客の目を釘付けにしました。「獅子の魂」が再びこの地に宿ったかのような祝祭的な時間が流れました。
 続いて行われた「菓子撒き」では、尾張地方でかつて結婚式などに行われていた風習を再現。安全に配慮しつつお菓子が撒かれると、子どもたちは歓声を上げながら笑顔で手を伸ばし、会場は和やかな雰囲気に包まれました。
 その後の「盆踊り」では、地域の女性会が中心となり貸し出し用の法被を身にまとった親子連れや来場者が舞台に集結、踊りの輪を広げました。世代や地域を超えて人々が一つになり、夜の中川運河に笑顔と音楽があふれました。

 会場では、飲食や手づくり体験ができる縁日ブースも多数出店し、親子で一日楽しめる空間となりました。見学に訪れた家族の中には、「獅子の練り歩きに参加しました」、「次の世代にもこの祭りを続けてほしい」と話す方もおられ、文化を未来につなぐ取り組みとして大きな意義を示しました。
 「シシシ祭」は地域の伝統をアートとして再構築し、人と人、人と地域をつなぐ新しい祭り、これからの「まちの祝祭文化」を示す試みとなりました。