太陽の光を次のかたちへ、太陽光パネルガラスリサイクルプロジェクト「太陽の光」 成果報告会を開催

 加山興業株式会社と名古屋芸術大学工芸コースの協働による「太陽光パネルガラスリサイクルプロジェクト『太陽の光』」の最終プレゼンテーションが、2026年1月29日、東キャンパス Art & Design Center Eastにて行われました。本プロジェクトは、役目を終えた太陽光パネルから回収されるガラスを新たな素材として捉え、アートと工芸の視点からその可能性を探る試みです。

 プロジェクトの背景には、今後大量に廃棄されることが予想される太陽光パネルの存在があります。2025年8月には加山興業株式会社の工場を見学し、パネルがどのように解体・分別され、ガラスとして再生されていくのかを学生自身の目で確認しました。単なる「素材提供」にとどまらず、社会の仕組みや廃棄物処理の現場を知ることから制作が始まった点が、本プロジェクトの大きな特徴です。
 再生されたガラスは、不純物を含むためわずかに緑がかった色合いを持ち、一般的な吹きガラス用素材と比べると冷めるのが早く、手早い加工が求められます。ただし今回は、吹きガラス技法だけに頼るのではなく、独自の技法も考え制作したため、素材特有の扱いにくさが大きな障壁になることはありませんでした。むしろ、その不均一さや癖をどのように受け止めるかが、制作の出発点となりました。

 最終プレゼンテーションには、加山興業株式会社から加山順一郎社長をはじめ、工場見学でもお世話になった方々、また同社を紹介した石塚硝子株式会社の両角様をお招きし、作品を前に学生・大学院生10名がそれぞれの試行錯誤を発表しました。
 発表では、「もともと光を集めるために使われていた素材であることに魅力を感じた。廃棄されるガラスではなく、次の役割を持たせたいと思った」「溶かしてみると想像以上に濁りが出て透明にならなかったが、その表情を欠点ではなく、時間の痕跡として使えないかと考えた」などの声が聞かれ、素材が持つ“記憶”や成り立ちを意識した作品が数多く見られました。
 アクセサリーや生活道具を想定した学生は、「日常の中でふと触れたときに、環境のことを思い出すきっかけになるものにしたい」「特別な説明がなくても、『きれい』『気になる』と感じてもらえる存在を目指した」と語りました。一方、オブジェや実験的な提案を行った学生からは、「きれいなプロダクトをつくることよりも、このガラスが社会の中でどう使われたら意味を持つかを考えた」と、工芸と社会の関係に踏み込もうとする姿勢がうかがえました。
 質疑応答では、加山興業側から「大きく加工しなくても、素材のまま使える可能性はある」「コストや量を考えると、用途のスケールも重要になる」といった実務的な視点が示され、それに対して学生が「企業の現場での制約を初めて具体的に意識した」「美しさだけでなく、使われ方をもっと考えたい」と応答する場面もあり、活発な意見交換が行われました。

 講評では、工芸コースの新實広記先生が「完成された作品を並べる展示ではなく、これから何かが起こりそうな“研究所”のような空気を感じた」と語り、プロジェクト全体を通して生まれた対話や、未完成性の価値に言及しました。
 また、加山興業株式会社の加山順一郎社長からは、「廃棄物として扱ってきた太陽光パネルのガラスが、これほどきれいな作品に生まれ変わることに正直驚いた」と率直な感想が述べられました。さらに学生の発表について、「自分の意見をしっかり持ち、社会との関わりまで考えている点が印象的だった」と評価し、今後は自社の新たな拠点やカフェ空間で、作品や器を実際に使う可能性にも言及しました。廃棄物処理の現場と創作の場が、具体的な形で結びつく可能性を示すコメントとなりました。
 プレゼンテーションの最後には、個々の作品とは別に制作された多数のオブジェやグラスが並べられ、加山興業株式会社の皆さんと学生、教員がそれぞれ気に入ったグラスを選び、ソフトドリンクで乾杯するひとときが設けられました。和やかな交流の中で、成果報告会は締めくくられました。

 まとめとして、中田ナオト准教授は「このプロジェクトは完成形を提示するものではなく、企業と大学がそれぞれに新しい視点を持ち帰るための“きっかけ”」だと位置付けます。 「大量生産で生まれたものを大量生産で返さなければならない、という考え方は少し違和感を覚えます。効率だけでは測れない価値や、一点ものとして仕上がってくることのほうが、むしろ伝わりやすい可能性があります。廃棄物は確かに出てきますが、何かを生み出せる素材が既にあるというポジティブな発想を持てば、もっと能動的な取り組みができるのではないでしょうか」
 太陽光パネルガラスという素材を通して投げかけられた問いは、今後も形を変えながら、続いていくことになりそうです。