工芸コース、メタル&ジュエリーデザインコース、テキスタイルデザインコースでは、2022年度より古川美術館・分館爲三郎記念館と連携し、作品展示「メイゲイのコウゲイ」を毎年開催しています。4回目となる2026年度は、2月17日(火)から3月1日(日)までの開催となりました。
このプロジェクトは本学と古川美術館が連携・協力し、芸術の力による地域振興と活性化を目指す取り組みです。同時に、学生たちが数寄屋建築の趣を今に伝える爲三郎記念館という伝統的建造物内で展示を行うことで、日本文化への理解を深め、制作の幅を広げる貴重な機会となっています。
4回目となる今回は、これまでの「爲三郎記念館から構想を練る」という方法に加え、季節に合わせた古川美術館所蔵の「桃」や「雛の節句」に関わる作品を展示し、学生作品と競演させるという新たな要素が加わりました。学生たちは、収蔵品との関係性を意識しながら、自身の作品を構想。伝統と現代表現が響き合う、贅沢な展示空間が生まれました。
古川美術館プロジェクトを4年にわたって担当してきた古川美術館学芸員早川祥子さんは、今回の展示、そして『メイゲイのコウゲイ』のこれまでの取り組みにについて、「爲三郎記念館で展示をするということの意味をより深く考えてもらうために、季節に合わせた雛や桃の節句といった古川美術館の所蔵品も展示しました。季節のテーマを設けたことは、ある意味、作品の構想について制限となったかもしれませんが、その一方で、日本の伝統的な建築空間の床の間の意味、茶室の機能についても今まで以上にしっかりと考えるきっかけとなったのかなと思います。同時に自分の取り組む技法や表現を駆使して、いかに桃の節句や雛の節句と、爲三郎記念館の魅力、そして自分の作品としての個性を融合させられるかを、工夫するきっかけにもなったのではないかと感じています。
過去にも参加してくれていた学生に関しては、1回目より2回目、2回目より3回目、と爲三郎記念館で自身の作品をどう展示するか、という展示方法、演出について、より具体的なイメージをもって展示に臨んでくれた学生もおり、古川美術館プロジェクトとして回を重ねるごとに参加学生の意識も変わってきていることが見て取れ、とても頼もしく感じています。
名古屋芸術大学のメイゲイのコウゲイの良さは、テキスタイルデザイン、陶芸・ガラス、メタル&ジュエリーと、異なる領域が一堂に集い、同じテーマに向って展示を作り上げていくことです。中間発表や最終プレゼンを通して、他の参加者がどんな視点で作品を作り上げていったのかを知ることは、自分では得られなかった記念館の捉え方や、桃や雛の節句の面白さを知る機会にもなるとともに、自分の取り組む素材や技法の面白さを、再認識する機会にもなったのではないかなと思います。
そして、この古川美術館プロジェクトを通して、『どんな作品を構想し、どんな技法や表現で完成させていくか』とともに、展示としての完成度を上げていくことの厳しさ、お客さんに見てもらうことの覚悟についても実践的に学ぶ機会となっていれば、何よりうれしいです。」と語りました。
古川美術館学芸員の小栁津綾子さんは、これまでの取り組みを振り返りながら、「今までの展示では、爲三郎記念館を見て感じ取ったものを作品にするという流れが強かったですが、今回は“雛”や“季節”といった親しみやすい題材に関連する作品が多く、見ていてしっくりくるものが多かったです。光や自然、建物の意匠やデザインからインスピレーションを得た作品も多く、来館者が自然に楽しめる展示になっていると感じました」と評価。テーマが明確に打ち出されたことで、かえって学生たちの表現は伸びやかになり、空間との対話がより自然なものになったといいます。さらに「置く場所や高さ、水を入れるかどうか、鏡をどう使うかなど、展示の工夫によって見え方が大きく変わりますが、そうしたことを展示する学生さんにも楽しんでもらえたかなと思います。この場所で展示する意義がよく表れていて良かったのではないかと思います」と作品そのものに加えて展示も楽しいで欲しいと話しました。
学生にとって、本展は単に作品を展示するだけではなく、美術館という場での展示経験、学芸員との協働、そして一般来館者への対応までを含めた総合的な学びの場となっています。実際の美術館空間で展示を構成し、収蔵作品との関係性を考えながら作品を提示する経験は、制作の視野を大きく広げるものです。
数寄屋建築の落ち着いた空間の中で、「雛」や「桃の節句」といった季節のモチーフと、学生たちの自由な発想が自然に溶け合った今回の「メイゲイのコウゲイ」。伝統に触れながらも、どこか軽やかで新しい空気を感じさせる展示となりました。