佐久島での体験を作品へ。「佐久島SDGsプロジェクト」最終報告会を実施

 2026年9月15日(火)「佐久島SDGsプロジェクト」の最終報告会を行いました。このプロジェクトは、西尾市と連携して2023年度から継続している取り組みで、美術領域コミュニケーションアートコース、工芸コースの学生と大学院生が参加。6月には佐久島を訪れ、島内のアート作品や地域の現状について学ぶとともに、白浜海岸で海岸清掃を行いました。大量の漂着ごみを自分たちの手で拾い、島が抱える環境問題を実感した学生たちは、その経験を出発点に作品制作を進めてきました(関連記事)。

 今回の最終報告会には、西尾市役所 佐久島振興課の三矢さん、上代さん、2001年から佐久島の自然や伝統とアートを融合させた島おこしに携わってきたオフィス・マッチング・モウルの内藤さんをお迎えしました。学生たちは一人ずつ作品を披露し、制作のきっかけやコンセプト、作品に込めた思いを説明しました。
 発表された作品は、立体、映像、ジュエリー、ジオラマなどさまざまです。初めて参加する学生の作品には、佐久島で実際に目にした光景や、海岸で拾った漂着物から生まれた率直な驚きや発見が表れていました。

 1年生の櫻井志乃さんによる「海底は隠れて」は、満潮時に見た美しい海と、干潮時にその下から現れた大量のごみとの落差から生まれた作品です。海面のきらめきを思わせる球体を制作し、その美しい光の中に佐久島で拾った海ごみを取り入れました。櫻井さんは、環境問題について知識はあっても、実際に目の当たりにするまでは「あまり自分事として捉えられていなかった」と振り返り、作品を通して見えない問題にも目を向けてほしいと語りました。
 同じく1年生の正保咲空さんによる「うみのタネ」は、海岸に多く漂着していた発泡スチロールから発想した作品です。人間が海をきれいにしようと行動することで現れ、拾ったごみを未来へつながる「タネ」に変える精霊を立体と物語で表現。「ごみをなくさなければいけないものと強く啓発するのではなく、ごみを拾う小さな行動が未来につながることを感じてもらいたい」と説明しました。

 一方、継続してプロジェクトに参加する学生からは、これまでの経験を踏まえ、さらにテーマを掘り下げた作品も発表されました。
 伊藤蒼一郎さんは、「おひるねハウス」から眺めた海の光をモチーフにしたペンダントトップ「ひるねと光と貴方」、佐久島で拾ったシーグラスなどを用いたブレスレット「あの日、あの浜辺で。」を制作しました。佐久島で見つけたものや、そこで感じた風景や記憶を「身につけられるアート」として形にした作品です。伊藤さんは、海岸で何かを「拾う」という行為にも着目し、「漂着物の中から自分が気になったものを手に取ることでその場所の風景や経験が記憶に残り、同時に海にどれほど多くのごみがあるのかにも気づくことができます。思い出を作る行為とごみの現状を知る行為の延長線上に『拾う』ことがあるのではないか」と、自身の体験をもとに提案しました。
 昨年度、小学生を対象に海ごみ問題を学ぶすごろくを制作した村越和奏さんは、今年度、スナメリの体内を迷路にした作品を制作。実際に拾ったプラスチックごみが迷路の道を塞ぎ、何度挑戦してもゴールすることができないようになっています。「今回はあえて助けられない作品にしました」と、一度海へ流れ出たプラスチックごみを回収することの難しさを、体験として伝えようとしました。
 ほかにも、ガチャガチャで子供たちにごみ問題を体験してもらう作品、シーグラスをお金に見たてたり、未来から見た漂着ごみの価値など、ものの価値を問うようなユニークな作品も発表されました。

 松岡教授は、それぞれの作品について、作品のコンセプトと表現が結びついているか、初めて見る人にも意図が伝わるかという点を中心にアドバイス。内藤さんからは、実際の展示を想定し、作品を置く場所や高さ、強度などを確認しながら、コンセプトをより効果的に伝えるための展示方法について具体的な意見が寄せられました。学生たちは作品を「つくる」だけでなく、それを「どう見せ、どう伝えるか」まで考えながら、展示に向けた最後のブラッシュアップを進めます。
 最後に三矢さんから、今後の展示スケジュールについて説明がありました。完成した作品は10月1日から11月29日まで佐久島弁天サロンで展示されるほか、11月の三河湾大感謝祭、12月の佐久島ナビステーションでの展示など、さまざまな場所で紹介される予定です。また、12月6日に開催される環境をテーマとしたイベントでも作品が展示されることが伝えられました。上代さんからも作品への感想と、今後のブラッシュアップへの期待が寄せられました。

 2026年6月に佐久島を訪れ、自分の目で島の現状を見て、自分の手で漂着ごみを拾うところから始まった作品制作。そこで得た気づきや問いは、それぞれ異なる表現へと形を変えました。学生たちは今回の講評をもとにさらに作品を磨き、作品展示へとつなげていきます。

作品紹介

“拾った海”

“海底は隠れて”

“うみのタネ”

“深海からのSOS”

“Does a River run to its source”

“ギョワ〜! キラキラ発見!!/ゴミで終わりたくない傘”

“拾われたものたち”

“大あさり丼を食べる海神と佐久島の地域デザイン”

“海ゴミのガチャガチャ”

“汚れてしまった”

“あの日、あの浜辺で。/ひるねと光と貴方”

“採取種:廃棄物”

“釣れたもの”

“島通貨「SAKUPay」”

“海の中の見えないごみ”

“すなめりめいろ”