第10回「二輪デザイン公開講座」を開催

 公益社団法人自動車技術会 デザイン部門委員会が主催する、デザインを学びはじめた大学1、2年生を対象にデザインの魅力を伝えるワークショップ「第10回 二輪デザイン公開講座」が、本学カーデザインコースの協力で西キャンパスにて開催されました。2022年9月1日(木)~2日(金)の2日間、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4メーカーで活躍するデザイナーが講師となり全国から32名の学生が参加(本学学生は5名)、講義ありワークショップありの充実した内容で、学生らはどっぷりとバイクデザインの世界を体験しました。

 プログラムは、ヤマハバイクのデザインを担当するGKダイナミックス元代表取締役社長の一条厚氏の基調講演から始まりました。「バイクデザインは面白い、バイクは素敵だ(基調漫談)」と題し、ユーモアたっぷりのお話です。一条氏の個人的なデザインとのかかわりから始まり、過去のバイクのデザインや自身が係わったバイクについて、造形論やデザインから海外でのバイクの使われ方やオートバイという乗り物の文化的な側面にまで話はおよび、二輪の世界を俯瞰して観るような幅広く奥深い講演でした。
 続いて、本田技術研究所 デザインセンター 澤田琢磨氏の講演「二輪開発プロセス ~なりたい自分を見つけよう~」。商品企画に始まりデザイン、開発、量産、販売に至るまでのプロセスと、そこにデザイナーやモデラーがどのように係わっているかをお話しいただきました。2つの講演に共通するのが、バイクへの深い愛情。一条氏、澤田氏ともにオートバイへ乗ることやその背景に対しても深い愛情を感じさせるお話でした。また、業界全体でバイクを盛り上げたいという気持ちが強く、日本の二輪業界をさらに発展させたいという気持ちが伝わってきました。
 昼食をはさみ午後からは、学生時代に二輪デザイン公開講座に参加し現在はメーカーに入社した4名が登壇する「公開講座出身OB座談会」を開催。学生時代のバイク経験(学生時代にはバイクの乗ったこともなかった人も)や普段の仕事内容や将来自分で欲しい乗り物、お勧めのツーリングコースなど、気軽な座談会で盛り上がりました。学生らにとって、自分に近い年齢でありながらも第一線で活躍する方々のお話は、大いに刺激となった様子です。「社販割引はあるのか」や「入社してすぐはどんな仕事をしたのか」など、学生から具体的な質問が飛びだし、真剣さも伝わってきました。

 1日目の残りの時間と2日目は「デザイナー/モデラーの卵 養成講座」としてワークショップが行われました。用意されたワークショップは、鉛筆やマーカーを使い実際に紙に描く「フィジカルスケッチ」、あらかじめ用意されたスケッチに液晶ペンタブレットを使い立体的に着色、表現する「デジタルスケッチ」、カラーリングを考え実際のバイクにカッティングプロッターで切り出したカッティングシートを貼る「CMF(Color Material Finish)」、実際に使用されているインダストリアルクレイを使い曲面を削り出す「クレイモデル」の4種類。実際に普段業務として行っているプロから直接指導を受けられる、非常に有意義なワークショップです。
 「フィジカルスケッチ」では、立体的に見せる描き方やポイントとなるコツなどを説明、学生からの質問に答えたりときには講師が実際に描くところを見せるなど、非常に実践的なものとなりました。
 「デジタルスケッチ」では、ひとつひとつ段階を追って下絵にフォトショップで彩色していきます。学生からは、レイヤーの使い方について、使う枚数や技術的な方法など具体的な質問もあり、こちらも非常に有意義な内容でした。また、講師からアイデアを具体化する方法として、下絵のスクーターをサンプルにその場でキャンプ仕様のデザインに変更して見せるなど実際のデザインの現場を垣間見るような場面もありました。
 「CMF」では、誰が、どこで、何をするか、という状況設定をくじ引きで行い、配色を考えます。学生らは「20年後の東京で通学したいヒーロー」や「南極でレースしたいちょい悪親父」などユーモラスなお題に悪戦苦闘しながらカラーリングを施しました。
 「クレイモデル」では、クレイ専用のヘラ(レイク)やプレートを使って実際に曲面を削りだしていきます。初めてクレイに触れる学生も多く、道具の使い方を聞きながら削ります。手本となる曲面を観察し一心に取り組む学生らの姿が印象的でした。

 講演とワークショップの2日間ですが、昼食と1日目の夕飯は食事が用意され、学生らには常に交流する機会が作られます。文字通り、同じ釜のメシを食う仲間となり、参加者同士の交流が生まれていました。OBにも公開講座で知り合い現在のメーカー勤務になった方も多数おり、学生時代から交友を深めデザインの世界に魅力を感じてもらうことが目的のひとつとなっています。

 すべての講座を終えると閉会式が開催され、自動車技術会 デザイン部門委員会 田口雄基 委員長から、学生ひとりひとりに修了証の授与が行われました。「昨日の朝、ここに来てからの2日間でバイクの見方が変わったと思います。デザインの世界に興味を持ってもらえた嬉しく思います」と言葉がありました。本学カーデザインコース 高次信也 教授は「公開講座に来てくれた学生の何人かが、今回、スタッフとして講座を支えてくれています。若い世代が育ち、10回続けてきた甲斐があったと感じています(高次教授は2013年に二輪デザイン公開講座を企画、立ち上げたメンバー)」とコメントしました。
 最後に、学生らにはお土産としてセミナールームに飾られていたデザイン画をプレゼント。学生らも友人となった学生、企業の方々とも談笑する中、充実した2日間の講座は終了となりました。

一条厚氏 基調講演

澤田琢磨氏 講演

公開講座出身OB座談会

【デザイナー/モデラーの卵 養成講座】フィジカルスケッチ

【デザイナー/モデラーの卵 養成講座】デジタルスケッチ

【デザイナー/モデラーの卵 養成講座】CMF

【デザイナー/モデラーの卵 養成講座】クレイモデル