あま市七宝アートヴィレッジのデザインプロデュースを行いました

 今回のプロジェクトは2019年度の北名古屋市の翔龍念珠堂とのコラボに続く、扇千花教授と米山和子准教授による「デザインプロデュース」授業の2回目で、世界的に評価の高い“尾張七宝”の情報・文化の発信拠点である「あま市七宝アートヴィレッジ」のデザインプロデュースを行いました。
 プロジェクトの成果物は、2020年11月27〜29日に行われたあま市主催の「尾張七宝新作展」の期間にアートヴィレッジで発表・展示されました。

デザイン領域内でコースを横断して20名以上の学生が参加

 「デザインプロデュース」授業のテーマである「大学近郊のクラフト特産品をどうプロデュースしていくか」という命題に加え、今回は「来館者数を増やしたい」「七宝焼を若い世代に広めたい」という七宝アートヴィレッジさんからのオーダーに応えるべく、大学や院から、デザイン領域内でコースを横断して20名以上の学生が参加しスタートしました。

コロナ禍で学ぶ「SDGs」「尾張七宝の文化」

 対面授業自粛期間中も授業を工夫、「エシカル消費」についてフェアトレードで著名な原田さとみ氏による講義や、加藤芳朗氏(尾張七宝 伝統工芸士、加藤七宝製作所3代目代表)による「工房のバーチャル体験」等、有意義な講座をオンラインで提供。学生も各自プロデュースのため、リサーチの努力を怠りませんでした。
 6月に対面授業が再開してからは、アートヴィレッジさんにご協力をいただきながら実体験中心の授業となり、実際に創る作業を見たり、歴史も知った上で、現在どのようなものが売られているかを確認したりして、若い感性で「もっとこうしたらいいのでは」といった意見交換をチームで行い、プロデュース案を練り上げていきました。

最終プレゼンの結果、4名の学生からの2つの提案が採用

 授業の最終日にはアートビレッジの小林弘昌館長に本学までお越しいただき最終プレゼンを行い、あま市に持ち帰って検討して頂いた結果、4名の学生からの2つの提案が採用されました。

あま市七宝アートヴィレッジ 小林館長

小林館長に伺いました

 最終プレゼンには私も参加し講評もさせていただきました。
 若い学生さんならではの、私達では思いつかないというか、避けて通ってしまうような、柔軟で斬新な発想がよかったです。採用したぬりえや擬人化キャラクターのアイデアも、流行の知識や発想は私達に全くなかったわけではないのですが、それを「試しにやってみる」ためのスキルや「やってみよう」とするエネルギーが芸大生らしく、とてもすばらしいと思います。
 その他の企画もすぐに実行できるものばかりで、名古屋芸大さんとのコラボは正解だったな、と満足しています。

採用プレゼン紹介

七宝ぬりえはがき

 はがきの表面には作品の簡単な解説文がつき、自分で着彩することで作品への理解と愛着が自然と深まる。1点1点集めるためにアートヴィレッジへ足を運ぶのも大人の楽しみだ。11種類を提案して今回は6種類が採用された。

soh-yunping(ソーユンピン)さん
インダストリアルデザインコース3年

岩田智代(いわたともよ)さん
大学院デザイン研究科デザイン専攻クラフトデザイン研究1年

中川知穂さん(当日不在)

岩田さん:有線七宝の工程を見学した時に、薄い金属線で模様を描く様子と、その出来上がりを見て、『この柄を線で表現したら美しいのではないか』と思いつきました

ソーさん:まず、出来上がりの作品の写真から『見所』の図柄部分を選び、画像ソフトをつかって立体から平面に形状を修正し、第1段階のトレース。そこからさらに表現を整理・省略して、ぬりえ用の柄としました」「今日、来ていない中川知穂さんですが、日本語でのコミュニケーションにハンデのある僕をフォローして日本語の企画書の文章を直してくれたり、チーム内の意思疎通を図る努力をしてくれて本当に助かりました

七宝焼 擬人化キャラクター撮影用パネル映えスポット

 単に、現在の流行というだけでなく、高尚なイメージが先行しがちな芸術作品の声を聴く、作者に思いを巡らす「鑑賞眼」をもつきっかけを子供達に与えられそうなアイデア。
 撮影用パネル映えスポットは、岩田智代さんと山田未来さん、解説ボード(七宝展示ケース内)&パンフレットは山田未来さんと稲山朝香さんが担当。

山田未来(やまだみく)さん
イラストレーションコース4年

稲山朝香(いなやまあさか)さん
メディアデザイン(MMD)コース4年

稲山さん:パンフレットを作りたい私と尾張七宝のキャラクターを作りたい山田さんのアイデアをまとめて擬人化キャラクターのパンフレットをつくりました

山田さん:展示作品横にこのキャラクターを使った解説ボードを設置します。アートヴィレッジさんのご協力もいただき、作品解説文を簡略化。稲山さんが個性豊かなセリフにアレンジした『自己紹介』になっています。キャラクターの等身パネルを館内2箇所に設置。SNS『映え』るスポットを設けることで集客を狙います

 同新作展では、本学メタル&ジュエリーデザインコースが2019年度から取り入れた「尾張七宝」の授業で創った帯留めを中心とした七宝作品や、同じ「尾州」の伝統文化としてテキスタイルデザインコースによるウール織り作品など、学生の自由な発想と産地の確かな技術が融合したすばらしい作品が展示されました。