三和興産株式会社ワーキングスーツのデザイン開発プロジェクト
最終プレゼンテーションと審査結果発表・表彰を行いました

 本学芸術学部デザイン研究所及び、デザイン学部インダストリアルデザイン&セラミックデザインコース(以下、IDコース)、カーデザインコース(以下、CDコース)では、地元のリサイクル及び環境、インフラ企業である三和興産株式会社(以下、三和興産)の依頼により、2021年度に『三和興産ワーキングスーツのデザイン開発プロジェクト』を受託、デザインを実技授業内で開発することとなりました。

経緯

 三和興産は産業廃棄物のリサイクル活用を積極的に研究しており、今回のワーキングスーツの開発においても、モデル製作や製品化において同じくリサイクル業態で実績をもつ地元企業の有限会社未来縫製(以下、未来縫製)と連携し、環境に配慮した製品を目指しています。本学においても環境をテーマにしたデザイン開発は地球温暖化対策に貢献し、大変意義深いことと考え、プロジェクトを受託しました。

期待と緊張〜6月24日の最終プレゼンテーション

 プロジェクトには本学ID・CDコースの4年生・3年生、そして大学院生の計30名の学生が参加、2021年4月からの実技授業の枠でデザイン案を作成しました。計8回の授業でデザイン完成というタイトスケジュールでしたが、本学教員をはじめ、三和興産・未来縫製スタッフの皆さんからアドバイスをいただきながらデザインレベルを高めていき、本日無事「最終プレゼンテーション」を迎えました。
 本日の講評で評価の高いデザイン案は、担当教員のフォロー作業を経て三和興産のワーキングスーツとして専門メーカーである未来縫製により実際に製作されるだけに、会場には期待と緊張が入り交じった独特の雰囲気が漂います。
 そして、本学後藤規文教授の進行により最終プレゼンテーションがスタートしました。学生達は個人やチームに分かれて、スライドや実物の模型を使いながら作品をアピール、4〜5組発表したところで木村徹客員教授・片岡祐司教授による質疑応答の後、三和興産の田中一秀代表取締役と未来縫製の福田穣代表取締役に寸評をいただく、という流れで進みました。
 しっかりとしたリサーチを披露する学生や自らの実体験を基にした説得力のあるコンセプトメイクで審査陣を唸らせる学生、「いやぁ、かっこいいね!」と声をかけられる学生や模型を自ら着用しながらアピールする学生など、見応えある内容のプレゼンテーションが続きました。

有限会社未来縫製 福田穣代表取締役 コメント

 私達は長くファッションや作業着の仕事に携わっていますが、最近の作業着に求められるものについては従来の「安全性」「着やすさ」に加え、最近は「ファッショナブル・スタイリッシュ」であることや「環境・エコ」に配慮したものであることが重要視されるようになってきました。
 そういう意味で、皆さんが今日発表した作品は(これらを含んでいるので)すべて正解と言えて、後は作業着を必要とする個々の会社が重視するものはどれかによって選ばれる作品が変わってくると思います。今回賞に選ばれない作品の中にも、後の作業着に変革をもたらすヒントが隠れているかもしれません。
 一方、そのヒントがはっきりするように、もっとテーマを突き詰めて絞り込んでもよかったかと思います。(ニューヨークの「一風堂」が新たに取り入れたスタッフ用ユニフォームのデザインを紹介しながら)結果的に「突拍子もない」と受け取られるような作品があってもよかったと思います。

三和興産株式会社 田中一秀代表取締役 コメント

 まずもって先生方、これまでご指導をいただきましてありがとうございます。そして学生のみなさん、このような素晴らしい機会に立ち会わせていただきありがとうございます。二週間前に皆さんの最初デザイン案を見せていただいたとき「今までなかったものが現実にかたちになり自分の目で見ることができる」ようになって私はとても感動しました。そして、あれからたった二週間で(先生方のご助力があったとは思いますが)デザインが洗練され、コンセプトがはっきりとしました。みなさんの作品から三和興産に対する「愛情・愛着」を大いに感じ取り、さらに感動した次第です。
 思えば、私は親や周囲からの愛情を受け成長し、その私は愛情をもってこの会社を成長させてきました。人も企業も「愛情・愛着」なしでは存在しえないというのが私の考えです。

木村徹客員教授 コメント

 皆さんお疲れさまでした。今プロジェクトはスタートこそ若干の不安はありましたが、そこは先生方の指導と学生諸君の頑張りである程度の水準でプレゼンをまとめ上げることができたのは素晴らしいことだと思いました。この後審査選考の上、最優秀の作品は実際の制服のデザインとして検討するチャンスを与えられる訳ですが、当然ながら皆さんはまだプロではないので完成度にはギャップがあり、教員と未来縫製さんの手が入ることを前もってお知らせしておきます。

片岡祐司教授 コメント

 実はこのプロジェクトのお話があったときに、プロダクトデザインを中心に学ぶ本学学生なので、ファッションデザインの領域を多く含むこの案件をお受けするかどうか少し悩みましたが、杞憂だったようです。ファッションデザインのイラストもこなす学生に「別の才能」を発見したのは収穫でした。よいプロジェクトになったと思います。

審査結果発表

 プレゼンテーションは順調に進んだ印象だったのですが、新型コロナワクチンの大学拠点接種のスケジュールが授業時間と重なるという今年ならではの事情もあって、最終審査の時間が十分に確保できなかったので、審査結果発表・表彰は7月1日に持ち越され、受賞者3名が改めて招集され表彰されました。

最優秀賞
陳雪晴
大学院デザイン研究科1年
優秀賞
SOH YUN PING
インダストリアルデザイン4年
優秀賞
辻村大地
大学院デザイン研究科1年

三和興産株式会社 田中一秀代表取締役 寸評

 先日もお話ししました通りどれも優秀な作品で選考には本当に苦労し、改めて選考基準を決めるところから始めました。コンセプトやデザインが私共の想いに一番リンクする作品を選ばせていただきました。
 陳さんの作品は、実現可能なデザインで弊社の10年後に向けてのテーマを追求してくれました。社員の多くが「これだね」と気に入っていた様子です。
 SOHさんの作品は弊社の名に含まれる「和」の字からの着想や所在地である一宮市の地域活性化もコンセプトメイクに加えていただいたことが素晴らしかったです。「着てみたい」と思いました。
 辻村さんの作品は「ガンダム」「ドラゴンボール」世代の支持を受けました。これを着たら元気になること間違いなしですからね!(笑)。社員の気持ちが高揚することは意欲と安全意識の高まりにも繋がりとても有益です。

 満足そうに記念写真に収まる受賞者と田中一秀代表取締役に今回のプロジェクトの意義を強く感じました。スーツの完成が待ち遠しいです。

有限会社未来縫製 福田穣代表取締役

三和興産株式会社 田中一秀代表取締役

木村徹客員教授

片岡祐司教授

受賞作品

最優秀賞 陳雪晴 大学院デザイン研究科1年

優秀賞 SOH YUN PING インダストリアルデザイン4年

優秀賞 辻村大地 大学院デザイン研究科1年

左より、三和興産株式会社 田中一秀代表取締役・辻村大地さん・陳雪晴さん・SOH YUN PINGさん