2022年前期「デザインプロデュース」「地域プロジェクト」
古川美術館・分館爲三郎記念館ミュージアムショップ事業 ミュージアムグッズの提案

 デザイン領域 テキスタイルデザインコース 扇千花 教授とメタル&ジュエリーデザインコース 米山和子 教授による「デザインプロデュース」「地域プロジェクト」は、デザイン・美術を工芸の観点から地域の産業と人をつなげ生活を豊かにするものを考え制作するという講義で、名古屋市千種区の古川美術館・分館爲三郎記念館のミュージアムショップで販売するグッズのデザインプロデュースを行います。
 2022年4月に、学生らは古川美術館を訪れ、美術館の成り立ちや古川爲三郎氏についての知識を深め、実際にミュージアムショップで販売されているグッズなどを見学しました。それらに基づいてアイデアをまとめサンプル品を制作、6月に古川美術館を運営する公益財団法人 古川知足会の皆様をお招きし中間発表会を行いました。学生たちのバラエティ豊かなアイデアやデザインを高く評価していただきましたが、実際に商品を販売しているプロの視点から、コスト面、安全性、流行の変遷、意匠の問題といった観点から継続可能か、という問いかけがあり、結果として制作費用の明確化と想定する販売価格と合わない場合はコストカットのアイデアが課題として残りました。また、販売期間においても、常設するものに加え期間限定で販売することも選択肢としてあり、それらのアイデア出しも課題となりました。
 これらを受けてアイデアをブラッシュアップ、2022年7月20日、いよいよ最終のプレゼンテーションが行われました。今回は、古川美術館・分館爲三記念館の学芸員の方々に加え館長代理兼事務局長 伊藤洋介氏にもお越しいただき、一層、熱の入ったものになりました。

 学生らは9つのチームに分かれ、制作したサンプルをお見せしながら、スライドやボードを使い自分たちの企画を説明しました。この授業は、領域に関係なく履修できるものであり、チームにはさまざまなコースの学生、大学院生、留学生と専門や立場が異なる学生が含まれており、それぞれが得意分野で貢献しているようで、成果物としてもグッズはもちろん、パンフレット、チケット、包装パッケージなど、いろいろなところで活用できるロゴマークやキャラクターのデザインといったような幅広いアイデアが提案されました。グッズに関しても、焼き物をベースにした工芸的なものから、キャラクターを活用したキーホルダーや缶バッジ、トートバッグ、さらに古川美術館の収蔵品をモチーフにしたネイルシールなど、幅広いサンプルが制作されました。学生らは、中間発表で指摘を受けた製造原価についても考慮し、中には複数の製造メーカーに相見積もりを依頼しその結果を資料に盛り込むチームもあり、そのまま企業の企画会議になりそうな非常に実践的なプレゼンテーションとなりました。製造原価や販売価格など、これまで携わったことのない分野への考慮も必要になり、苦心したことが伝わります。

 結果としては、パンフレットなど現在も使われているものに置き換えるものや、チケットなど使用に関して役割があるものなどは調整が必要で直ちに採用することは難しいものの、限定商品やこれまで扱っていなかった商品は前向きに検討したいとの評価がありました。ことに、美術作品をモチーフとしたネイルシールと数寄屋造りの建築からかたどられた陶磁器の作品は、価格の設定を含め高い評価をいただきました。
 伊藤氏からは「熱の入ったプレゼンテーションをしていただき、また、こうした機会をいただいたことに感謝申し上げます。学生の皆さんには、売り込むことの大切さを感じていただけたのではないかと思います。皆さん非常によくできていたと思います。難しい課題だったと思いますが、とてもよく頑張ってくれたチャレンジ精神を嬉しく思います」と評価いただきました。
 当初、採用作品を古川美術館に展示することが考えられていましたが、バラエティに富むアイデアがあり、このままでは惜しいとの声もあり、嬉しいことにすべてのチームのプロセスボード、試作品を、8月17日(水)~28日(日)に開催する為三郎記念館 特別展示 「新発見 数寄屋の魅力」に併せて展示していただけることになりました。

為三郎記念館 特別展示 「新発見 数寄屋の魅力」

特別展示については、古川美術館ホームページをご覧ください(画像をクリック)

 デザインプロデュースの成果を、古川美術館・分館爲三記念館にて、ぜひご覧下さい。また、実現可能なものをぜひ商品化したいとの要望もあり、古川知足会でさらに検討することになりました。商品化も含め、非常に楽しみな講義となりました。

中間発表会(2022年6月15日)

最終プレゼンテーション(2022年7月20日)