テキスタイルデザインコース 名古屋帽子プロジェクト
(株)林八百吉 デザイナー松井氏から講評をいただきました

 テキスタイルデザインコースでは、例年、3年生が名古屋帽子協同組合とコラボレーションし、自らデザインした布を使い帽子を制作してきました。今年は、名古屋市にある帽子の製造卸として120年の歴史を持つ林八百吉株式会社とコラボレーション、帽子工場の見学、帽子の歴史、帽子のデザインと制作のための指示書の書き方などを学びました。学生が選んだテーマは、コロナ禍で制限された「おでかけ」です。12月15日は、帽子プロジェクト最後の講義となり、林八百吉株式会社 商品部部長 松井朱美氏、ディレクター 江本千歳氏をお招きし、制作された帽子について講評していただきました。

 講評の前に、林八百吉株式会社のSDGsの取り組みと展示会について説明いただきました。林八百吉株式会社では、2021AW(秋冬)展示会を、名古屋、大阪、東京で予定しており、学生が制作した帽子の中から優秀な作品を展示すると発表がありました。今回の講評会は、展示作品の選考会も兼ねたものとなりました。

 講評は、制作した帽子を手に学生がプレゼンテーションを行い、それに対して行われました。プレゼンでは帽子に加え、配色、イメージ、作品の背景などを記したコンセプトボードと、制作のためのデザインと生地や必要な付属品、縫い方を示した発注指示書も掲示します。学生が制作した生地が厚みなど帽子としては作りにくいものもあり、工場とのやりとりで縫い方や作りなどを修正した経緯や、プロダクトとしてこだわった部分など、それぞれが制作で経験したことも交え説明しました。指示書のデザインそのままに完成したもの、計画通りにはいかなかったもののプロダクトとしては魅力的になったもの、どれもがユニークな作品に仕上がりました。松井氏からは、プレゼンボードにそうした経緯や考え方の変遷、使われている染織技法をもっと明確に反映するように、とコメントがありました。ことにオートクチュールなど高額なプロダクトでは、生産背景のストーリーが大切で、そうした経緯や使われている技術の詳細も含めてのプロダクトであると説明します。また、帽子を縫製したパターンナーからのコメントを学生にフィードバックしていただき、制作側の考え方を知ることや、立場の違いから来る意見の対立の経験を、今後の糧にして欲しいとお話しいただきました。フィードバックからは、実際に縫製を行ったパターンナーのこだわった部分などもわかり、非常に有意義なものでした。また、当初のデザインの意図通りにはならなかったものでも、最終的に非常に魅力的に仕上がった作品も高く評価していただき、プロダクトに対する考え方や商品価値の捉え方はとても参考になるものでした。

 展示会の出品作品は、6点の作品が選ばれました。学生が自分で織ったり染めたりした布はそれぞれに味わいがあり、その点もコラボレーションの意義があったと評価していただきました。選ばれた作品は、プレゼンボードをさらに充実させ、一部手直しするなどさらにブラッシュアップして展示会に出展されることになります。

松井氏の講評の様子

展示会の出品作品