2021年4月10日(土)西キャンパス クローバー広場にて、テキスタイルデザインコース2年生、3年生が、羊の毛刈りと洗毛を体験しました。デザイン実技の授業では、例年、羊の毛から糸を紡ぎ織物を製作するまでを行い、地元尾州の毛織物産業についての理解を深めます。昨年はコロナの影響で開催できず、2学年あわせての授業となりました。
毛刈りに先立ち、羊飼いの丸岡圭一さんから羊や羊毛についての説明がありました。羊と人間との関係は長く、品種改良を重ねて今の羊になっているといいます。本来、換毛する(夏毛と冬毛のように定期的に毛が抜け替わること)太く粗い毛(ケンプ)ではなく、肌に近い部分の柔らかい毛(ウール)を発達させ、抜け替わらないように交配を繰り返し大量の毛が採れるように品種改良されたのが羊であり、年に1度伸び続ける毛を人間が処理する必要があり人間と羊は共生の関係にあることなど、自然と人間のあり方や衣服と人間など考えさせられる説明です。
本来、羊用の電動バリカンを使い毛刈りを行いますが、はじめに鋏を使い、全員が手で毛を刈ることにチャレンジしました。おっかなびっくりの手つきで鋏を入れますが、羊はおとなしく貴重な体験ができました。刈った毛を手にすると、動物の匂いや毛に付いた脂分の多さなど、実際にやってみないとわからないことが実感できました。羊毛の脂肪は精製されてラノリンとして化粧品などにも利用されているのだそうです。
羊毛は、部位によって毛の良し悪しがあり、とくにお尻の部分は毛が絡みフェルト化していたりゴミが多く汚れで黒ずんでいます。こうした毛から、ゴミを取り除いて綺麗にする作業を「スカーティング」、洗剤による洗浄を「ソーピング」といい、この作業を染色工房で行いました。学生らは染色工房へ移動し、テキスタイルデザインコース講師 貝塚惇観先生の指導のもと作業を行いました。
手順は、羊毛全体を10分ほどぬるま湯に漬けて洗浄、さらに羊毛の5~10%の洗剤(モノゲン)で作ったぬるま湯に40~60分漬けて洗浄。洗った羊毛をザルに取りだし、さらに洗浄液に浸しながら一握りずつ羊毛を取り、指で汚れやゴミを取りだしていくという作業になります。羊毛は、強く絞ったりもみ洗いすると繊維が絡まりフェルト化してしまうので、こすらないようにして優しく指で押し出すように洗うのがポイントです。また、洗浄液の濃さや温度、漬ける時間は、汚れや含まれている脂分の分量で決まり、あまり脂分を落としすぎても、糸として紡いだときにバサバサになり風合いが変わってしまうそうで、羊毛の具合を見ながらの判断になるといいます。
2学年分なので、先ほど刈ったものとは別にもう1頭分の羊毛が用意され、学年に分かれて作業しました。手順に従い、まずは羊毛の重さを軽量、必要な洗剤を計っておきます。寸胴鍋を用意して、状態を確認しながらぬるま湯に浸します。洗剤を使って洗ってから、洗剤水に着けて一握りずつ手作業で汚れを取っていくことになります。1.5kgほどの羊毛でも時間のかかる作業で、まだ毛糸をつくるためのはじめの段階ですが、これだけでも膨大な手間がかかっていることが実感できました。段階を経るごとに羊毛は白くなり、最終的には真っ白な羊毛ができあがりました。洗浄した羊毛を干して、この日の作業は終了です。
このあと、羊毛を使って、カーディング(繊維を揃える作業)を行い、スピニング(糸紡ぎ)、織り、仕上げ加工と体験し、原毛から糸を紡ぐことや布の構造について学ぶこととなります。